景況調査

第106号-2020年5月
急降下する景気
~調査開始以来最大の下げ幅となった「業況判断」DI~

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:607KB)

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景況調査報告(2020年5月)第106号(PDF:1.48MB)


【概況】

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、「今月の状況」が前回の△2から△40へ38ポイントもの大幅な悪化を記録しました。これは「良い」と回答した企業が13%減少したことに加え、「悪い」と回答した企業が25%もの著しい増加を示したことによります。これで6期連続の悪化です。「前年同月比」も△20から△57へ37ポイントもの急激な落ち込みとなり、「次期見通し」も△5から△40へ35ポイントの大幅な悪化を見込みます。「前年同月比」は6期連続、「次期見通し」は7期連続の下落です。

今回の「業況判断」全指標の大幅な悪化は、いずれも調査開始以来最大の下げ幅です。新型コロナウイルス感染症の国内外での拡大による世界経済の著しい冷え込み、政府や自治体による自粛や休業の要請に伴う需要の「蒸発」は、かつてない規模で景気を急落させました。さらに次期見通しの大幅な悪化は、中小企業経営者の多くが「この状況の早期改善はない」と考えていることを示しています。

業種別の「業況判断DI」は、「今月の状況」が、建設業8→△30、製造業△28→△54、流通業△10→△48、サービス業17→△28。「前年同月比」は、建設業△21→△53、製造業△46→△68、流通業△28→△63、サービス業3→△47。「次期見通し」も、建設業2→△33、製造業△32→△62、流通業△12→△50、サービス業15→△21と、全業種とも20ポイントから30ポイントの著しい悪化となりました。

分析会議での発言ならびに文章回答からも、業況悪化を訴える声が聞き取れます。全業種のなかでもっとも大きく落ち込んでいる製造業から聞かれたのは、「自動車関係、航空機関係が総崩れ」、「取引先工場の稼働停止により4月の売上げ40%減、5月は70%減」といった極めて厳しい声です。半導体製造装置関係についても、「3~4月は韓国向けの部品が動いていたが、現在は在庫調整に入っている」と、厳しい現状が報告されました。

休業協力要請の対象となった個人消費関連からは「4月60%減、5月70%減」など、その影響の大きさを物語る状況が報告されました。これまで愛知県の景気をけん引してきた建設業からは、「賃貸マンションなどは動いているが、工場などの設備投資関係、飲食業の内装や介護施設関係の工事は厳しい」、「受注残があるので当面は大丈夫だが、新規案件の契約ペースが前年比からすでに2~3割落ち込んでいる」など、先行きへの強い懸念が聞かれました。

今回の調査では、「雇用動向DI」の「今月の状況」が△32→△1、「次期見通し」も△29→△2へ「不足」超過幅が大きく縮小しました。雇用状況の急激な変化が確認できます。「過剰」と「不足」の差がこれほどまでに接近したのは、東日本大震災直後の2011年5月調査で「過剰」超過に振れて以来9年ぶりです。雇用情勢の悪化は消費の低迷に直結しますから、今後の動向に要注意です。

新型コロナの感染拡大は落ち着いてきましたが、それに伴って景気がV字回復するかといえば、それは難しいと思われます。「向こう半年分の必要資金は融資で確保した」と安堵する経営者が少なくありませんが、それでも予断を許さない状況が続きます。また、「withコロナ」下の新たなビジネスへの対応も急がなければなりません。景気動向に注視しながら、賢明な経営のかじ取りが求められます。

[調査要項]

調査日 2020年5月18日~5月27日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1401社の回答を得た。業種内訳は以下
(建設業240社、製造業330社、流通業353社、サービス業478社)
平均従業員 27.8名(中央値8名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、安藤寿・安藤不動産代表)が実施した調査結果をもとに、景況分析委員の業界情報を集めてまとめたものです。

【業況判断】
リーマンに匹敵。過去最大の下落幅

今月の状況は前回の△2から38ポイント落ち込み△40と急激に業況判断を悪化させた。これはリーマンショックで大きく下落した2009年5月期以来のDI値の水準であり、4半期での下落幅は過去最大のものである。業種別でみると、建設業が8から△30と38ポイント、製造業が△28から△54と26ポイント、流通業が△10から△48と38ポイント、サービス業が17から△28と45ポイントといずれも急激に悪化した。

前年同月比は、前回の△20から△57と37ポイント悪化し、こちらも過去最大の下落幅を示し、2009年8月期以来のDI値の水準である。業種別でみると、建設業が△21から△53と32ポイント、製造業が△46から△68と22ポイント、流通業が△28から△63と35ポイント、サービス業が3から△47と50ポイントといずれも激しい落ち込みを示した。

3ヶ月後の次期見通しは、前回の△5から△40と35ポイント悪化し7期連続の後退傾向を示し、2008年11月期以来のDI値を示した。業種別でも、建設業が2から△33と35ポイント、製造業が△32から△62と30ポイント、流通業が△12から△50と38ポイント、サービス業は15から△21と36ポイントと、それぞれ二桁の悪化を示した。全業種に渡り、リーマンショックに匹敵する厳しい業況判断と過去最大級の下落幅を示している。

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】
急降下する売上高
経常利益も過去最大の下落

売上高DI(前年同月比)は、前回の△10から△53と43ポイント悪化し、6期連続落ち込んだ。これは2009年11月期以来のDI値の水準であり、過去最大の下げ幅である。業種別で見ると、建設業が△5から△49と44ポイント、製造業が△44から△64と20ポイント、流通業が△10から△58と48ポイント、サービス業が10から△43と53ポイント、それぞれ二桁の悪化を示し急激に後退した。特にサービス業は過去最大の下落幅である。3ヶ月後の次期見通しは、前回の△19から△53と34ポイント悪化した。これは7期連続の後退傾向であり、2009年2月期の最悪のDI値に次ぐ数値である。業種別でみると、建設業が△17から△56と39ポイント、製造業が△49から△75と26ポイント、流通業が△19から△59と40ポイント、サービス業が△1から△33と32ポイントそれぞれ大幅に落ち込みマイナス幅を拡大させた。特に製造業は売上高が「減少」したと回答した割合が83%で、過去最悪のDI値を示した。

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の11から△21と32ポイント悪化し、過去最悪タイの下落幅を示した。業種別でみると、建設業が12から30ポイント悪化して△18になり、製造業が△7から△41と34ポイント悪化した。いずれも過去2番目に大きい下落幅である。流通業では10から△21と31ポイント、こちらは過去最大の下落幅を示した。サービス業は23から△8と31ポイント悪化し水面下に落ち込んだ。

前年同月比は前回の△14から△52と過去最大の落ち込みを見せた。建設業が△13から△45と32ポイント、流通業が△17から△59と42ポイント大幅に悪化した。ともに下落幅は過去2番目の落ち込みである。流通業では経常利益が「悪化」と回答した割合が71%にのぼり、過去最悪タイのDI値だった。サービス業は3から△43と過去最大の落ち込みを見せた。製造業が△38から25ポイント悪化し△63と更に落ち込んだ。3ヶ月後の次期見通しは前回の7から△32と39ポイント悪化し、過去最大の下落幅を更新した。建設業が8から△33と41ポイント、製造業が△18から△55と37ポイント、流通業が4から△42、サービス業が24から△9と大幅に水面下に落ち込んだ。建設業・製造業・流通業が過去2番目、サービス業が過去最大の下落幅を示し、悪化傾向を顕著にさせた。

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 「過剰」超過幅が拡大

今月の状況は、前回調査の14から22と8ポイント「過剰」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(20→27)が「過剰」超過幅が拡大した。流通業(8→16)でも「過剰」超過幅が拡大した。前年同月比は前回の7から二桁拡大し18となった。業種別でみると、製造業(8→24)は二桁「過剰」超過幅が拡大した。流通業(5→11)でも「過剰」超過幅が拡大した。次期見通しは11から19と「過剰」超過幅が拡大した。業種別では、製造業(16→25)が「過剰」超過幅が拡大した。流通業(5→12)でも「過剰」超過幅が拡大した。

【取引条件】 大きく悪化する取引条件

前年同月比は△2から△18と二桁水面下に落ち込んだ。これは過去最大の下落幅であり、2011年5月期調査以来のDI値である。業種別でみると、建設業(2→△17)、流通業(△7→△22)、サービス業(6→△17)と水面下に二桁の悪化傾向を示した。特に建設業が過去2番目、サービス業が過去最大の下落幅だった。製造業(△10→△14)も更に悪化した。次期見通しも、過去最大の下落幅で前回の△4から△19と水面下に大きく落ち込んだ。業種別でみると建設業(△4→△23)が過去最大の下げ幅を示し、流通業(△10→△26)・サービス業(4→△15)が過去2番目に大きい下げ幅であった。製造業(△10→△14)も取引条件を悪化させ、全業種で悪化傾向が強まった。

【資金繰り】 「窮屈」超過幅が更に拡大

今月の状況は、前回の△24から△27と厳しい状況が続いている。業種別でみると、建設業(△24→△26)・製造業(△29→△34)・サービス業(△16→△24)が「窮屈」超過幅を拡大させた。一方、流通業(△32→△24)が水面下ながら「窮屈」超過幅を縮小させた。次期見通しは前回の△26から3ポイント悪化し△29となった。業種別では、建設業(△26→△35)・製造業(△33→△40)が「窮屈」超過幅を拡大させた。特に製造業は56%が資金繰りが「窮屈」と回答し、これまでで最も厳しい状況を表した。一方、流通業(△33→△29)は小幅ながら「窮屈」超過幅を縮小させた。サービス業(△17→△19)は大きな変化がなかった。

【設備過不足】・【施設稼働率】
製造業、設備の「過剰」超過
稼働率の低下が顕著に

設備過不足DI(今月の状況)は、△7から0と2011年5月期以来の水面上となった。業種別でみると、製造業(8→22)が二桁「不足」超過幅が緩和した。建設業(△16→△10)、流通業(△8→1)が「不足」超過幅を縮小させた。サービス業(△12→△11)がほぼ横ばいで推移した

次期見通しでも前回△7から1と「不足」超過幅が緩和し水面上になった。業種別では、製造業(9→25)が二桁の「過剰」超過となり、流通業(△5→1)も「過剰」超過となった。特に製造業は、過去2番目の大きな上昇幅である。建設業(△17→△11)、サービス業(△14→△9)が水面下ながら「不足」超過幅を緩和させた。

施設稼働率DI(前年同月比)は、前回調査の△23から△47と24ポイント「低下」超過幅が拡大した。この数値は2009年8月期以来のものであり、下落幅の大きさは過去2番目の水準である。業種別でみると、製造業(△33→△59)が高い水準で「低下」超過幅の拡大が見られた。流通業(△11→△33)でも大幅に「低下」超過幅の拡大が見られた。次期見通しは、前回調査の△23から△46と23ポイント「低下」超過幅が拡大した。業種別にみると、製造業(△34→△57)・流通業(△9→△32)ともに「低下」超過幅が二桁拡大した。

【雇用動向】 深刻な人手不足が緩和

今月の状況は、△32から△1と31ポイント「不足」超過幅が縮小し、深刻な人手不足感が緩和した。改善幅は過去最大を示している。業種別でみると、建設業(△50→△14)・製造業(△14→27)ではいずれも改善幅が過去最大となった。特に製造業は、2009年11月期以来の水面上の数値であり、回答者の43%が「過剰」と判断している。流通業(△29→△1)も「不足」超過幅を緩和させほぼ水面上の水準まで来ている。サービス業(△36→△13)も「不足」超過幅を緩和させた。

次期見通しは、△29から△2と「不足」超過幅を縮小させ、過去最大の改善幅を示した。業種別にみると、製造業(△9→28)が2009年11月期以来の水面上の数値であり、改善幅も過去最大となった。水面下ながらも建設業(△44→△18)、流通業(△29→△3)、サービス業(△35→△15)が「不足」超過幅が縮小し、改善傾向が見られた。

【価格変動】
大幅に仕入価格「上昇」幅が縮小
販売価格、総じて「低下」が上回る

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の31から4と「上昇」超過幅が27ポイント縮小した。「不変」と回答した割合は75%に及んだ。業種別でみると、建設業(41→8)・製造業(28→5)・サービス業(27→6)が「上昇」超過幅の縮小が大きくみられた。流通業(33→△4)でも「低下」超過幅の縮小がみられ、「低下」が「上昇」を上回った。流通業とサービス業は、過去2番目の下げ幅を記録した。

前年同月比では39から9と30ポイント過去2番目の下げ幅で推移した。業種別でみると、流通業(38→1)が過去最大の下げ幅で、「上昇」超過幅を縮小させた。その他、建設業(54→17)・製造業(37→12)・サービス業(32→9)がいずれも20ポイント以上、「上昇」超過幅を縮小させ、過去2番目の下げ幅を記録した。

次期見通しは、前回の27から3と「上昇」超過幅が24ポイント縮小し、過去2番目の落ち込みをみせた。業種別でみると、建設業(33→5)・流通業(32→△1)もそれぞれ過去2番目の下落幅で、流通業では「低下」が上回った。製造業(19→3)・サービス業(25→5)も大幅に「上昇」超過幅を縮小させた。

販売価格変動DI(今月の状況)は、前回の10から△10と20ポイント「上昇」超過幅が縮小し「低下」が上回った。業種別でみると、サービス業(16→△6)が過去最大、建設業(15→△6)が過去2番目の下げ幅をみせ「低下」が上回った。製造業(△1→△12)・流通業(10→△17)も「上昇」超過幅を縮小させ「低下」が上回った。

前年同月比は前回の15から23ポイント「上昇」超過幅が縮小し△8となり「低下」が上回った。業種別でみると、流通業(14→△16)が過去最大、建設業(21→△5)・サービス業(20→△4)が過去2番目の下落幅で、「上昇」超過幅が縮小した。製造業(5→△9)でも同じ傾向がみられた。次期見通しは、7から△14と21ポイント「上昇」超過幅を縮小させ、過去2番目の下落幅をみせた。業種別でみると、建設業(10→△15)・流通業(5→△19)・サービス業(14→△8)が過去2番目の落ち込み幅をみせ「上昇」超過幅を縮小させ「低下」を上回った。製造業(△6→△18)も「上昇」超過幅を縮小させた。販売価格は、時期や業種すべてにおいて「低下」が上回る結果となった。

【借入金利】
短期・長期金利、「低下」超過幅が拡大

短期借入金利DIは前回調査の△1から△4と水面下に更に落ち込んだ。業種別でみると、流通業(1→△7)・サービス業(0→△5)が「低下」超過幅を拡大させた。製造業(△6→△2)では4ポイント「低下」超過幅を縮小させた。建設業(0→△1)はほぼ横ばいで推移した。

長期借入金利DIは前回の△1から△5と「低下」超過幅を拡大させた。業種別でみると、建設業(2→△6)・サービス業(1→△3)が水面下になり「低下」超過幅を拡大させた。製造業(△3→△7)・流通業(△4→△7)も「低下」超過幅を拡大させた。

【経営上の力点など】
建設業・サービス業で「従業員の不足」
力点上位の「社員教育」が鍵

全業種でみた経営上の問題点は、「民間需要の停滞」(53%)・「取引先の減少」(28%)・「人件費の増加」(23%)の上位の順位が若干変動するものの、大きな変化はなかった。次に続くのは「従業員の不足」(19%)であった。今後の情勢変化を見据え戦略を立てていく必要があるといえる。

業種別でみて特徴があったのは、建設業で「熟練技術者の確保難」(27%)、製造業で「人件費の増加」(30%)、流通業で「取引先の減少」(35%)、サービス業で「従業員の不足」(24%)だった。雇用動向は人手不足感が緩和傾向にあるものの、建設業とサービス業で「従業員の不足」が課題の上位に位置付けられている。文書回答では「突然の下請け切りや、先行き不安で設備投資を控える動きがある(建設業)」「70%操業で黒字になるよう、社内改革と社員教育を行いホストコロナに備える(製造業)」「一段と荷動きが悪くなり運賃は軒並み下落し、6月は自動車産業の工場休止が追い打ちをかける(流通業)」「旅行会社からの仕事や会議、講演など、団体で集まることがないので、団体予約が0となってしまった(サービス業)」という情報が寄せられた。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(53%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(52%)、第3位に「社員教育」(27%)とこれまでと同じトレンドであった。コロナ危機をバネに人材育成と市場創造に徹底して取り組むことが今後の飛躍の基盤となるといえる。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●前回の2月期景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは8→△30と38ポイント急落し2011年5月調査以来9年ぶりにマイナス水準となりました。仕入価格変動DIは41→8と33ポイント減少(値下がり)、資金繰りDIは△24→△26と2ポイント下落(若干悪化)、と前回調査以上に景況が悪化しました。全業種で景況が悪化しており、次期見通しも厳しいと回答された方が増えています。人の移動が制限され新規案件の受注ができない影響が、今後さらに大きくなることが予想されます。(事務局 佐藤)

1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾

  • 半年ぐらい先までは、受注済みの現場があるため、今は売上にさほどの影響はないが、新規の受注案件、契約ペースが前年比から既に2~3割ほど落ち込んでいる。取引先の業況も徐々に悪化しており、企業の設備投資や、夏のボーナスに影響が及べば、業況は一気に悪くなると感じている。なんとか被害を最小限に、この波を乗り切りたい。
  • 新型コロナウイルスの影響で飲食店からの受注が9割減、新築やリノベーション案件も新規は中止になってしまい既存顧客からのリフォームのみで乗り切ったが年度末の繁忙期で助かった。しかし、6月以降に本格的な影響が出てきそうなので銀行と共に資金繰りを考え、より良い条件での借り入れや、借り換えを検討している。
  • 6月と7月はコロナ前の受注残で乗り切れそうだが、下期は悪化すると予想している。人が集まれないためショールームへの来場者が少なく、新規受注につながっていない。夏休みが短くなったことで学校の修繕工事がなくなってしまった。

2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体

  • 4月は元々仕事が薄くなる予想があった。5月以降は繁忙期に入ると予測している。弊社はコロナの影響はなく、順調に工事は進めている。ただし大手ゼネコンとの取引がある同業他社は、仕事が延期・工期延期を告げられて、職人が遊んでいると耳にした。鋼材単価は年明けから少しずつ下がっている。下げ止まりの時期や単価は未定だが、国内鋼材メーカーは今のところ順調に入荷している状況。公共の案件は予定通りに進む見込みで、大規模民間案件は大手ゼネコンとの取引ではない部分は順調に進んでいる。
  • 建設業は消費税増税後の全体的な仕事量の落ち込みに加え、新型コロナウイルスによる消費の低迷・先行き不安・建材などの輸入の遅れなどによる着工延期などで需要が低迷している。今年の前半は昨年末~2月・3月からの計画でなんとか工事を受注しているが、後半は仕事量の低迷によるダンピングなどでかなり厳しい状況になると予想される。

3.給排水管工事、電気工事、設備工事

  • 外構工事の受注では、ハウスメーカーが停滞しているが、先行案件が契約し始めている情報がある。工務店クラスに於いては、無理した契約や分譲上棟を停止している。自社としては、完了から着工にかかるのに社員が余る傾向が出始めている。
  • 自粛要請に伴う消費意欲の減少が懸念されること。人の動きが戻ったとしても受注状況は平年より減少することが予測される。家電や住宅設備品の販売は個人所得と直結しているので、自粛解除後の動向は悲観的にならざるを得ない。コロナ融資制度などの利用を検討しているが、延命措置、つなぎ対策でしかなく経営の改善を図る。雇用を守る方針だが、そもそもの利益率が低いために収益改善と経費の削減を限界まで実行するしかない。慢性的な人手不足だが、新規雇用の余裕はなく外注拡大などの変革を考えている。
  • 中国の経済が動き始めたとはいえ、原材料の調達が回復せず新規の受注がなかなか増えていない。製品の確保ができるようになったとしても国内の経済、雇用、設備投資などが早々に回復するとは思えず、2~3年の期間を要するのではないか。我々建設業は、ほとんどが現場での作業で現在でも人手不足のなか、新規事業を開拓することは難しい状況。とりあえずセーフティネットの借り入れは済ませ、運転資金は確保しているので、次の展開を考えている。

4.建築設計・不動産

  • 昨年末以降、顧客である製造業の本年9月頃までの景気後退が懸念されていた中でも、次の事業展開を見据えての設備投資需要(建築工事)が出てきていたものが、このコロナ自粛で全て白紙になってしまった。結局の所、今コロナは終息しつつある中で、本県の状況だけをみれば、この結果が「自粛」による効果なのか「季節的」な効果なのか甚だ疑わしい。
(2)製造業

●業況判断DIでは、今月の状況が△28→△54とマイナス26ポイント、前年同月比は△46→△68とマイナス22ポイントとなりました。とりわけ次期見通しは△32→△62とマイナス30ポイントと、2期連続で大幅に悪化する結果となりました。売上高でも前年同月比が△44→△64と5期連続、次期見通しが△49→△75と6期連続で「悪い」と回答する企業が大幅に増えています。また、経常利益の今月の状況は△7→△41とマイナス34、前年同月比が△38→△63とマイナス25、次期見通しが△18→△55とマイナス37ポイントの下落となり、今後もさらに厳しい状況が続くと見込まれます。更に雇用動向(今月の状況)では、△14→27と41ポイント「過剰」超過幅が拡大しました。これは2009年11月期以来の水準で、過去最大の上げ幅となっており、雇用の過剰感が急激に高まりました。規模別では、5人以下の企業で資金繰りが△62(全体では△34)と、とりわけ小規模の厳しさが浮き彫りになる結果となりました。自動車の減産による部品製造業やイベントの中止による印刷業、外出自粛により外食産業に関連する食品製造業の景況感が軒並み悪化する結果となりました。今後も状況を注視する必要があります。(事務局 松井)

1.金属加工・樹脂加工

  • 助成金、借入などで凌いでも、需要の回復には相当時間がかかり、しばらくは売上規模を縮小して対策。
  • 自動車販売台数の激減で減産となって売り上げの減少や海外生産品が輸入されないため、国内回帰の話も多々あり、今後少しずつ回復の見込みあり。コロナ禍の廃業で移管品の受注があるなど、新規顧客開拓も順調にできてきている。緊急事態宣言等で閉塞感があり、リーマンショックの時よりも悪く感じる。
  • 受注が大幅に減り対応に苦慮している。どこまで我慢しなければならないのか心配である。
  • 緊急事態宣言は解除になったが、輸出が戻る状況に至っていない。底がまだ見えず不安しかない。
  • 経営環境が悪化しているのは、以前からの自動車業界の構造変化によるものが多い。たまたまコロナ融資で借り入れもしやすいが、根本的な問題解決に取り組まないといけない。

2.機械部品・機械製造

  • 1年はコロナ禍の影響を受けると思うが、結局は日頃の行いの成果を試されている時だと考えている。
  • 売上前年同月比50%が1年続いた時のキャッシュフローを計算して、不足分を借入した。これにより70%操業で黒字になるよう、社内改革を行う。それと同時に、売上減の今だからこそできる社員教育・訓練を行い、机上と実践の技能・技術の習得を図り、コロナ禍が収束した時には他社との差別化が図れて、スタートダッシュができるように時間を有効活用する。
  • 受注残をこなしながら少しずつ後退。来年から本格的に落ち込むのではという予想が多い。

3.木材・木製品製造業(家具を除く)

  • 住宅産業は、4~5月の住宅展示場が閉鎖だった関係で、新規の注文住宅の契約がほとんどない。これが、実際に新設住宅着工として現れるのは3ヶ月~半年先のため、今年の秋ごろに需要の底が訪れると予想。建設業は関連業者のすそ野が広いため、需要の急減により資金繰りに支障をきたし大型倒産が発生した場合、連鎖倒産が社会問題化する危険性がある。

4.印刷・包装関連

  • 営業に行きたくても、客先から急用以外は来社してほしくない、との声もあり営業活動もままならない。
  • コロナ禍の「自粛」によりチラシが中止になったり、イベントの中止で印刷物がキャンセルになったりするケースが増えている。先行きの不透明感が増している。
  • 今期はやりきれないほどの仕事量をかかえていたが、コロナ禍により一転して停滞、減少に転じてしまった。早めの回復を祈る。

5.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • コロナの影響により内食が増え、スーパー、生協等が好調で一般小売向けの食品製造業は忙しいところが多い。ただし、業務用食品は学校給食や外食産業が相手のため、苦戦。不景気の産業が多くなると食費にも影響があり、今後は少し落ち着くと思う。
  • 駄菓子の小物は新型コロナの影響が大きい。持続化給付金を最大限受けても、到底間に合わない。
  • コロナの影響でインバウンド向け国産商品の動きが悪い。
  • 5月は昨年の秋から冬に決まった仕事をする時期だが、営業自粛等で8月以降の仕事のめどが立たない。

6.その他製造業

  • いかに従業員が安心して通勤し働ける環境を作るかが重要。経済活動の自粛でどの業界もいくらかは影響を受けるはず。経済を支えている人達が、命の危険にさらされることなく働ける環境にすることに重点を置かないと、経済は好転しない。
  • 打ち上げ花火製造販売は、売上が95%以上減。3月からの売上はほとんど無く、この先の7~9月の売上も見込めない状況。
(3)流通業

●前回の2月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは△10→△48と38ポイント大幅減少(悪い)、仕入価格変動DIは33→△4と37ポイント大幅減少(低下)、経常利益DIは10→△21と31ポイント過去最大の下げ幅(悪化)で、すべての指標で大幅減少しました。「前年同月比」を見ても、業況判断DIが△28→△63と35ポイントも大幅減少(悪化)し、経済状況がいかに悪化傾向に陥っているかが分かります。全業種でリーマン・ショック以上の大幅下降を続けており、予断を許さない状況が確実に続きます。全業種の動向に細心の注意を払ってください。(事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 自動車関係はT社において5月、6月は当初計画の40%減の8,000台/日。7月は多少持ち直し約20%減の10,000台/日。ただし、7月の計画は不確定。従ってその後の生産も不透明。一方、ロボット関係は中国の経済活動の回復に合わせて戻りつつある。これは従来のような自動車工場向けの大型ロボットではなく、組立工場向けの小型ロボットが中心。コロナなど感染症があっても稼働を確保できるよう、省人化を図っていることが読み取れる。
  • 店舗、工場の設備投資が延期、中止が出てきて停滞。建物の新規着工件数も少なくなってきている。

2.建築資材

  • 海外仕入れ先のロックダウンが長期にわたっており、一部商品の確保が難しくなっている。また、海外渡航リスクがあり、商品開発ができていない点も問題。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 取引先である小売店は、マスクや消毒液等コロナ関連の商品の販売が好調で、来客数も増えているが、衣料品については暖かくなってきて、上向きではあるが苦戦している。

4.飲食料品

  • 直に影響を受けている飲食店が取引先の為、相手先が休業、時短、テイクアウト向けの食材のみの発注などの為、受注がかなり少なく、納品先も少なく仕事量が半分以下。取引先の倒産も数件あり、月末締め、翌月末払いの取引先が多いため資金面で不安。休業の延長からの閉店撤退が起こりうる可能性大。

5.運輸、情報通信

  • 運輸関係は、4月までは微減で持ちこたえていたが、5月に入り一段と荷動きが悪くなっている。その影響で運賃は軒並み下落しており、三年前にようやく値上げできたものが、一瞬で崩れ去った感がある。6月に入るとさらに自動車産業の工場休止が追い打ちをかけるため、体力のない中小零細企業が倒産することを危惧。
  • 観光業界は、新型コロナウイルス感染症による旅行中止、旅行控えによる売上喪失が社業に大きな影響を及ぼしている。経済が落ち込んでしまう今期については、旅行需要が戻らないと予想される。またこの先、手配先および航空会社の破綻も予想され、取消により返金されるべき未回収債権を危惧。

6.保険、不動産

  • 損害保険に関しては、モノの補償が主な対象となるため、景気に対して半年から1年ほど遅れて影響を受ける(企業分野では、設備投資減、社有車減など。家庭分野では新築の減少、マイカーの減少等)。単純に売り上げ減の影響のみならず、取引保険会社が売り上げを5%以上伸ばさないと、翌年からペナルティとして手数料の支払い割合を3~5%程度下げてくる。今回のコロナの影響について、保険会社は通常の売り上げノルマ5%以上にしなければペナルティで支払いを減らされる。
  • 不動産業においては、業態(賃貸仲介・売買仲介・管理・開発分譲・買取再販等)によって明暗が分かれているように思う。特に賃貸に関しては壊滅的で本来の繁忙期の50%~60%減をよく聞く。また、開発分譲においても、プロジェクト融資(1年融資)が焦げ付き、返済延長に延長を重ねている業者も少なくない。一方、管理会社は賃料交渉の対応があるくらいで、売上には変化なし。買取再販業者においては、事業用(収益用)物件を扱う業者はインカムで耐え抜いている様子。売買仲介業者は、一般物件については賃貸同様に壊滅的。
(4)サービス業

●今月の業況判断DIは17→△28、経常利益DIは23→△8、と業況判断はリーマン・ショック以上、経常利益はリーマンに匹敵する落ち込みを見せました。元々景気が後退していたところへ、この度の新型コロナウィルスの猛威が原因であることは明白ですが、世界的大不況であるリーマン・ショックを超える不況であることが、残念ながら数字からも示されてしまいました。

3業種毎に見ると、状況はより深刻です。業況判断DIが、専門サービス業38→△2、対個人サービス業△1→△49、対事業所サービス業6→△40。経常利益DIが、専門38→22、対個人8→△37、対事業所20→△12。どの業種も不況を感じてはいるものの、助成金の相談や申請代行が盛んなためか、専門サービス業が利益をまだ確保出来ているのに対し、対事業所、それ以上に対個人はこれ以上にない落ち込みです。この3業種毎の違いは、同友会景況調査報告(DOR)でも示されており、全国的にも全く同じ様相です。

経営課題は、「民間需要の停滞」が前回の2倍超の41%と大きく上昇。次に「取引先の減少」が約1.5倍の29%。反対に、「人件費の増加」は22%と約半減しました。経営上の力点は、「新規受注の確保」「新規事業の展開」がそれぞれ54%、27%と高止まりしましたが、「情報力強化」が23%と大きく上昇したのが印象的です。なお、これら回答には業種の偏りは見られず、どの業種もコロナの影響による既存の仕事減に苦しみ、発信力を磨き新たな顧客を得ようとされていると思われます。

対個人サービス業は、資金繰りDIも△41と、ここしばらく低空飛行を続けていたとはいえ、過去最低の数字であり、今後を見据えた余裕ある手元資金の確保が、喫緊の課題でしょう。しかし、それだけにとどまらず、「自社は何屋か」というドメインの見直しや自社ならではのビジョン・指針の作成が、こうした経営危機時に生き、またアフターコロナの差別化・成長へ繋がります。(事務局 橋田)

1.飲食

  • 旅行会社からの仕事や会議、講演など、団体で集まることがないので、団体予約が0となってしまった。これまで顧客はほとんどが団体客で、個人客は30%以下だったため、当分元には戻らないと思う。

2.福祉(介護)

  • 福祉業界はサービスの種類によっては、新型コロナの影響が顕著に出る出ないどころか、却って好調になる会社もある。自社は通所サービスを主としているので、影響が顕著に表れた。また、名古屋市が独自で「緊急事態宣言」を発信し、その後国が発信したことで、段階的な不安を煽る結果となり、サービス利用が激減した点も否めない。
  • 新卒採用は出来ているのだが、コロナの影響を受け新人の現場への導入が進まず、人材はいても仕事を増やせない状況。
  • 在宅での生活を希望する方が多い傾向なので、結果その環境整備として住宅改修の依頼が増えている。現状を捉えた、今後の方向性を考えている。

3.産廃・環境

  • 飲食店や学校、個人医療施設の顧客減少に伴い、人の動きが縮小されている反面、スーパーなどの小売店では、需要拡大で売上が上がっている。目先の売上に惑わされず、全体的にバランスを取った舵取りの必要性を感じている。

4.広告・印刷

  • 40年経営しているが、これだけの落ち込みは経験したことがない。オイルショック、リーマン・ショック、東日本大震災時より酷い。新規案件を提案しても、相手先が前向きでなく、契約に至らない。

5.請負

  • 顧客の健康関連施設が3~5月の休業を余儀なくされ、業務請負のキャンセルが続く。4月からの新規顧客も見込めず、売上は対前年比約80%減少。

6.専門サービス

  • 自粛ムードが続くと営業が出来ず、新規の面談数が激減。
  • コロナによる、融資、雇用調整助成金、各種給付金などの対応で、業務量は通常の1.5倍くらいになっている。また、休校に伴い子供のいるパートの大部分が休みとなっており、社員に疲れが出ている。
  • 雇用調整助成金の申請代行業務が駆け込み需要となっているが、バブル気味であることは否めない。
  • 建築関係の不況は少し遅れてくるため、8月以降の動向が非常に気になる。また過去の経緯からも、その後の影響が2年は続きそうで心配。