景況調査

第109号-2021年2月
景気足踏むも、製造業に改善の兆し
~ワクチン接種の広がりに期待~

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:618KB)

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景況調査報告(2021年2月)第109号(PDF:1.51MB)


【概況】

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、「今月の状況」が前回の8から5へ3ポイント下落しました。要因は前回調査から「良い」と回答した企業が3.7%、「悪い」と回答した企業が0.7%それぞれ減少したのに対し、「さほど」と回答した企業が4.4%増加したことによります。一方「前年同月比」(△25→△16)、「次期見通し」(△7→11)は、双方とも2020年5月調査以後3期続けて改善しました。「次期見通し」は、2019年11月調査以来1年ぶりのプラス値回帰です。

業種別でも概ね同様の傾向が確認できました。「業況判断DI」の「今月の状況」は、建設業(21→16)、流通業(5→△3)、サービス業(15→6)と総じて下落。ただし、製造業に限っては前回△10から6へ16ポイントの大幅な改善が見られました。「前年同月比」は、建設業(△21→△14)、製造業(△42→△24)、流通業(△29→△18)、サービス業(△15→△11)と全業種で「悪化」超過幅が縮小。「次期見通し」は、建設業(△5→8)、製造業(△21→5)、流通業(△7→1)、サービス業(1→22)と全業種がプラス値に回帰しました。

二度目の緊急事態宣言の影響を受けて景気は足踏み状態にありますが、製造業に改善の兆しが見えるなど先行き好転を予感させる結果となりました。変異ウイルスの感染拡大が確認されており予断は許されませんが、今後ワクチン接種の広がりとともに景気回復の足取りが強まることが期待されます。

文章回答ならびに分析会議からは、いずれの業種からも今回の結果を裏付ける内容が報告されました。他方で共通して出されたのは「二極化」の指摘と、コロナ危機による社会変化をうかがわせる声です。

「今月の状況」で前回調査から唯一改善した製造業では、自動車関連は「生産計画は底堅く推移しているが、特定カーメーカーの一強状態」など取引先によって大きく状況が分岐しています。ただし好調なカーメーカーであっても「新車需要もコロナの状況に左右されるため、今年中盤以降の生産計画が読めない」と先行きへの懸念は拭えない状況です。さらに「ガソリン車関連の回復は90%程度で、EV、FCVなどの次世代自動車向けの仕事が以前よりも増えている」、「年度末の予算消化で、自動運転や衝突回避システムなどの先進技術の研究開発向けの仕事が動いている」など今後の社会変化への対応が加速している様子がうかがえました。そのほか工作機械やロボット関連、半導体製造装置関連は、いずれも「中国向け需要が牽引している」とする外需依存による回復が指摘されました。航空機関連については依然極めて厳しい状況が続いています。

建設業からは「賃貸マンション系は積極的に動いているものの、店舗や設備系は厳しい」とする声や、「ゼネコンから20%程度の値引き要請」が見られるなど、「売上は立っても利益が出ない1年になりそう」といった先行き懸念の声が聞かれました。さらに「名古屋駅周辺のオフィスビルに空室が目立ち始め、近隣の賃貸価格の安いオフィスビルの入室率が上昇している」と、変化の表れを指摘する報告が聞かれました。

流通業、サービス業からは「デパート関係は昨年対比10~20%のマイナス、食品スーパーは昨年対比10~20%のプラス」と明暗が分かれていること、また「商談や見本市が緊急事態宣言のため開催されず、例年と違い先の売上げ見通しが立たない」など、コロナ禍による事業環境の変化を指摘する声が聞かれました。総じていえば、ワクチン接種の広がりに期待しつつも、「もうひと踏ん張り」が求められる局面だといえそうです。

[調査要項]

調査日 2021年2月18日~2月25日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1117社の回答を得た。業種内訳は以下
(建設業191社、製造業242社、流通業289社、サービス業395社)
平均従業員 32.7名(中央値8名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、安藤寿・安藤不動産代表)が実施した調査結果をもとに、景況分析委員の業界情報を集めてまとめたものです。

【業況判断】 今月の状況は後退

今月の状況は、前回の8から3ポイント落ち込み5と業況判断の後退傾向を示した。業種別でみると、建設業が21から16と5ポイント後退させた。流通業も5から△3と8ポイント、サービス業も15から6と9ポイントと、いずれも後退傾向を示した。製造業では△10から16ポイントと二桁改善し6となった。製造業が水面上になるのは2019年2月期調査以来のことである。

前年同月比は、前回の△25から△16と9ポイント「悪化」超過幅を縮小させた。業種別でみると、建設業は△21から△14と7ポイント、サービス業も△15から△11と4ポイント持ち直した。製造業が△42から△24と18ポイント、流通業も△29から△18と11ポイント、いずれも二桁「悪化」超過幅を縮小させた。

3カ月後の次期見通しは、前回の△7から11と18ポイント改善傾向を示した。水面上は、2019年11月期調査以来のことである。業種別でも、建設業が△5から8と13ポイント、製造業が△21から5と26ポイント、流通業が△7から1と8ポイントと、それぞれ改善傾向を示し水面上に浮上した。サービス業は1から22と21ポイントと、二桁の改善傾向を示した。全業種がプラス値に回帰し、回復力の弱さが際立っていた製造業の大きな改善が特徴的である。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】
やや持ち直す売上高、経常利益は改善傾向

売上高DI(前年同月比)は、前回の△19から△16と3ポイントと3期連続でマイナス幅を縮小させた。業種別で見ると、製造業が△40から13ポイント反転し△27となり、流通業が△21から△18と3ポイント持ち直した。サービス業では△7から△9と大きな変化がないものの後退した。建設業が△17から△16とほぼ横ばいで推移した。3カ月後の次期見通しは、前回の△24から△7と17ポイントマイナス幅を縮小させた。業種別でみると、建設業が△29から△17と12ポイント、流通業が△20から△11と9ポイントとそれぞれ持ち直した。製造業でも△40から32ポイント大幅に持ち直し△8となった。サービス業が△13から1と14ポイント改善し水面上に浮上した。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の9から11と2ポイントやや改善した。業種別でみると、建設業が15から2ポイント改善して17になり、製造業が△11から3と14ポイント、マイナス幅を縮小させ2019年11月期以来水面上に浮上した。流通業では3から0と3ポイントマイナス幅を拡大させた。サービス業は21から21と変化がなかった。

前年同月比は前回の△22から△13と9ポイント改善傾向を示した。建設業が△20から△15と5ポイント、流通業も△19から△14と5ポイント、サービス業が△12から△8と4ポイント、いずれも改善傾向を示した。製造業では△42から△20と22ポイント、二桁改善した。3カ月後の次期見通しは前回の△3から7と10ポイント改善し水面上に浮上した。建設業が△4から5と9ポイント、製造業が△22から△1と21ポイント、マイナス幅を縮小させた。サービス業は7から22と15ポイント改善した。流通業では、△1から△6と5ポイント、業種別で唯一マイナス幅を拡大させた。

経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 「過剰」超過幅が縮小

今月の状況は、前回調査の15から8と7ポイント「過剰」超過幅が縮小した。これは3期連続の傾向である。業種別でみると、製造業(21→11)が「過剰」超過幅を縮小させた。流通業(10→6)も「過剰」超過幅を縮小させた。前年同月比は前回の9から7とほぼ横ばいながらも超過幅を縮小させた。製造業(12→11)・流通業(6→4)でもほぼ横ばいながらも同じ傾向を示した。次期見通しは13から5と8ポイント「過剰」超過幅が縮小した。業種別では、製造業(19→10)・流通業(6→0)のいずれも「過剰」超過幅を縮小させた。

【取引条件】 緩やかな改善傾向

前年同月比は△6から△4とやや改善した数値を示した。これは3期連続の傾向である。業種別でみると、製造業(△7→△3)・サービス業(△6→0)が改善傾向を示した。流通業(△8→△9)は大きな変化がなかった。建設業(△2→△7)のみ悪化傾向を示した。次期見通しも、前回の△7から△4と改善傾向を示した。業種別でみると製造業(△8→△4)・サービス業(△6→△1)がいずれも持ち直した。建設業(△5→△6)が大きな変化が見られず、流通業(△8→△8)が変化がなかった。

【資金繰り】 「余裕」超過の水準を更新

今月の状況は、前回の0から1と変化は大きくないいものの、1994年より調査を始めて以来の「余裕」のある水準を維持した。業種別でみると、建設業(3→1)・サービス業(1→△1)がやや「窮屈」超過幅を拡大させた。流通業(△1→△1)は横ばいで推移した。製造業(△5→5)では、「窮屈」超過幅を大幅に縮小させ水面上まで回復した。これも調査始まって以来の数値である。前回調査と同様に全業種に渡り調査始まって以来の「余裕」がある水準である。次期見通しは前回の△7から5ポイント改善し△2となった。この数値も1994年より調査を始めて以来の水準である。業種別でも、建設業(△9→△5)・製造業(△10→3)・サービス業(△5→△1)が過去最高を示した。流通業(△6→△4)が過去二番目の「窮屈」超過幅を縮小させた数値である。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備は再び「不足」傾向、稼働率「低下」持ち直す

設備過不足DI(今月の状況)は△5から△8と3ポイント「不足」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(△10→△13)・流通業(△5→△9)が「不足」超過幅を拡大させた。製造業(6→△3)は再び水面下に落ち込んだ。サービス業(△9→△10)では大きな変化がなかった。

次期見通しでも前回△4から△8と4ポイント「不足」超過幅が拡大した。業種別では、建設業(△8→△11)・流通業(△5→△8)が「不足」超過幅を拡大させた。製造業(12→△2)も二桁「過剰」超過幅を縮小させた。サービス業(△10→△10)では変化がなかった。

施設稼働率DI(前年同月比)は、前回調査の△18から△11と7ポイント「低下」超過幅が縮小した。この傾向は3期連続である。業種別でみると、製造業(△24→△8)で二桁「低下」超過幅の縮小が見られた。流通業(△11→△14)は逆に「低下」超過幅の拡大が見られた。次期見通しは、前回調査の△19から△6と13ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別にみると、製造業(△26→△2)が大幅に「低下」超過幅が縮小した。流通業(△11→△11)は変化がなかった。

【雇用動向】 業種による相違

今月の状況は、△20から△20と変化がなかった。業種別でみると、建設業(△38→△33)・サービス業(△24→△21)が「不足」超過幅を縮小させた。反面、製造業(△1→△10)は「不足」超過幅を拡大させた。流通業(△17→△18)は大きな変化がなかった。

次期見通しは、△18から△20とやや「不足」超過幅を拡大させた。業種別にみると、建設業(△33→△29)が「不足」超過幅を縮小させた。逆に製造業(1→△11)・サービス業(△21→△25)が「不足」超過幅を拡大させた。流通業(△18→△17)がほぼ横ばいで推移するものの、人手不足感を継続させた。

【価格変動】
仕入価格は「上昇」、販売価格は横ばい

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の16から22と「上昇」超過幅が6ポイント拡大するも、「不変」と回答した割合は69%に及んだ。業種別でみると、製造業(18→36)が二桁「上昇」超過幅を拡大させた。その他、建設業(18→25)・流通業(15→24)も「上昇」超過幅を拡大させた。サービス業(14→9)は業種別で唯一「上昇」超過幅を縮小させた。

前年同月比では17から22と5ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(21→28)・流通業(13→20)が「上昇」超過幅を拡大させた。特に製造業(19→37)が二桁「上昇」超過幅を拡大させた。一方、サービス業(15→10)では「上昇」超過幅を縮小させた。

次期見通しは、前回の13から22と「上昇」超過幅を9ポイント拡大させた。業種別でみると、建設業(13→25)・製造業(15→41)が二桁「上昇」超過幅を拡大させた。流通業(13→18)も同じ傾向を示した。サービス業(12→11)は大きな変化がなかった。

販売価格変動DI(今月の状況)は、前回の△3から0と3ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(△13→△3)が二桁「低下」超過幅を縮小させた。建設業(△7→△5)も「低下」超過幅を縮小させた。流通業(△2→1)でも、「低下」超過幅を縮小させ水面上に浮上した。サービス業(4→3)は水面上のまま大きな変化が見られなかった。

前年同月比は前回の△2から2ポイント「低下」超過幅が縮小し0となった。業種別でみると、建設業(△8→1)・製造業(△12→△6)では、「低下」超過幅が縮小した。流通業(△3→△1)でもやや「低下」超過幅が縮小した。逆にサービス業(6→3)は水面上で「上昇」超過幅が縮小した。次期見通しは、△5から△1と4ポイント「低下」超過幅を縮小させた。業種別でみると、建設業(△12→△6)が「低下」超過幅を縮小させた。製造業(△14→△2)が「上昇」超過幅を拡大させたが、「低下」を下回る状況で推移した。流通業(△4→△3)が大きな変化がなかった。サービス業(2→4)のみ「上昇」超過幅を拡大させた。

【借入金利】
流通業の短期金利「低下」、長期金利は全体でやや「上昇」

短期借入金利DIは前回調査の1から△1と水面下になった。業種別でみると、建設業(1→2)がやや「上昇」超過幅を拡大させるものの、流通業(2→△2)が「上昇」超過幅を縮小させた。製造業(2→1)・サービス業(△1→△2)はほぼ横ばいで推移したが金利の「低下」傾向を示した。

長期借入金利DIは前回の2から3と横ばいながら「上昇」超過幅を拡大させた。業種別でみると、建設業(4→5)・製造業(4→5)・サービス業(0→1)が横ばいながらも金利上昇の傾向を示した。流通業(3→3)は変化がなかったものの、金利上昇の水準で推移した。

【経営上の力点など】
問題点は「従業員の不足」、力点上位の「社員教育」が鍵

全業種でみた経営上の問題点は、「民間需要の停滞」(42%)・「従業員の不足」(26%)・「取引先の減少」(24%)と続き、前回調査と同じ傾向を示した。2020年5月期調査で、人手不足感が最も緩和したものの、再び「不足」超過幅が拡大してきたといえる。

業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(27%)、製造業で「熟練技術者の確保難」(25%)、流通業で「取引先の減少」(30%)、サービス業で「従業員の不足」(27%)だった。このように、建設業やサービス業での回復基調が見て取れる結果となった。

文書回答では「自動車ファーストから5G、ITファーストに切り替っており、この自動車産業地区である愛知の在り方が問われている(建設業)」「急激に進むであろうデジタル化を注視している。製造業のプラットホ-ム化が大きく進むと思う。(製造業)」「自動車、半導体製造装置、ロボットに関しては、今後も堅調に推移する見通し。(流通業)」「コロナ融資や雇用調整助成金の使い道や実態をもっと早くし、適切なところに適切な融資や助成をしてもらいたい。(サービス業)」という情報が寄せられた。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(59%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(54%)、第3位に「社員教育」(31%)とこれまでと同じトレンドであった。ポスト・コロナを見据えて、経営指針を再構築し、人材育成と市場創造に徹底して取り組むことが今後の飛躍の基盤になるといえる。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●前回の2020年11月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは21→16と5ポイント下落しました。仕入価格変動DIは18→25と7ポイント上昇(値上がり)し、次期(3カ月先)見通しも13→25と12ポイント上昇(値上がり予測)している状況です。資金繰りDIは3→1と2ポイント下落(やや悪化)しています。雇用動向DIは△38→△33ポイントという結果で人手不足は未だ解消されていません。販売価格変動DIの前年同月比は△8→1と9ポイント上昇(改善)で業種別では最大の上昇となっていますが、業況判断DIの前年同月比は△14と依然としてマイナス水準であり、コロナ前の水準には戻り切っていない状況です。(事務局 佐藤)

1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾

  • 今まで大手飲食チェーン店の顧客を増強してきたが、飲食業界が時短営業を余儀なくされたことで低迷し、案件が激減している。昨年春より服飾関係等にも営業をかけ、昨年末ごろからやっと実ってきてはいるが、まだ取り戻せているわけではない。今後、ZOOM等の普及により人の動きが減りリフォーム、リノベーションが都市では注目されるかもしれないが、全体としては減少し案件の取り合いによる価格競争になると予想。革新的な新しい取り組みをしていかなければならない。

2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体

  • コロナの影響なのか、例年の閑散期なのかわからないが、昨年末に比べ落ち着き感がある。スクラップ価格上昇に伴い、鋼材費が急激に高騰しているため、手間の部分で顧客からの値下げ要請があり深刻な状況。直近の仕事量が少なく、低価格(適正価格とは言えないレベル)で受注する同業者がいるため、つくづく学習能力のない業界だと感じる。
  • 個人消費が抑えられてきたのか、個人邸(木造基礎)の見積が少なくなっている。箱物の需要は、倉庫系・マンション系が主で動いている。鉄筋業界では、仕事がある会社とそうでない会社の差が激しい。弊社は今年の受注は順調だが、常に応援に来て頂いている会社が数社ある状況(受注案件が春以降決まっていない様子)。

3.給排水管工事、電気工事、設備工事

  • 元請(建築)の顧客確保が難しく、物件数が目減りしている。ハウスメーカーとの関係は多忙傾向(偏りあり)だが、不動産は地域差があるため、今後の着工数も減少傾向と思われる。外構工事(ネット紹介)紹介サイトでは、例年全国的に12月から2月までは減少傾向。春先より問い合わせが増加していく。
  • 公共工事においては、入札したいと思える予告も増えている。コロナに関わらず、国や自治体から予算がある程度出ているので、受注の心配はあまりない。しかし、仕入れの部分において、下請けの単価上昇をはじめ、過剰な供給や購買の納入遅延も散見されているので、実行予算の立て方に注意を払う必要がある。
  • コロナ禍関係なく、名古屋地区は新規建設大型案件が減少しており、これからの1年は建設業全体で苦戦する。しかし、業種問わず資金力のある顧客は、コロナ禍回復を見据えて設備投資、改修工事を積極的に進めており二極化しているように見える。宮崎の半導体工場の昨年の火事の影響と世界的な半導体不足が、自動車業界のライン休業の原因となっているが、その中でも、半導体需要が5G関連・IT関連に優先的に流れている。自動車ファーストから5G、ITファーストに切替っており、この自動車産業地区である愛知の在り方を問われている。
  • 中国の需要で銅の値段が上昇しており、仕事はあるが利益の確保に苦戦している。携帯電話会社が既存設備の5Gへの入れ替えや新規設備を設置しているので通信関係の工事量は非常に多い。ただし自動車関係は設備投資を控えている影響で仕事が少なくなっている。

4.建築設計・不動産

  • 価格の安い伏見などへの移動が増えたことで、名駅オフィスビルの空きが増えている。価格の高い場所から低い場所への移動なので、入居者は戻らないのではないか。また入居用の賃貸物件に関しても入居率が下がっている。
  • 郊外の住宅はまだ動いているが、分譲マンションは需要が減っている。建築単価は大きく落ち込んでおらず、土地の値段はピークより落ちている状況。コロナで土地の売却を検討している方からの依頼が増えており、不景気で土地売却が増えるのではないか。金余りによる投資先となっているので、物件は売れていないにも関わらず物件を建てていることが不安材料。
  • ある程度大きい規模の会社は契約を取れているが、規模の小さい会社は契約が取れておらず来客数も減っている様子。問い合わせではHPにも載っていない物件を紹介して欲しいという内容が増えた。またコロナで事業が厳しくなったことが原因なのか、仲介先の資材置き場に解体したものや処分に困ったものを不法投棄されることが増えている。
(2)製造業

●業況判断DIでは、今月の状況が△10→6と8期ぶり、次期見通しは△21→5と7期ぶりに「良い」が上回る結果となり、前年同月比は△42→△24と「悪化」超過幅を2期連続で縮小させています。売上高は前年同月比が△40→△27、次期見通しは△40→△8、経常利益DIの今月の状況は△11→3、前年同月比が△42→△20、次期見通しが△22→△1という結果になり、どちらも「悪化」超過幅を大幅に縮小させています。一方で、設備過不足DIは今月の状況と次期見通しともに6期ぶりに「不足」が「過剰」を上回りました。また雇用動向DIの今月の状況は△1→△10と2期連続で「不足」が「過剰」を上回り、次期見通しも1→△11と4期ぶりに「不足」が超過となりました。半導体の堅調な需要と新しい生活様式に伴う家庭用食品が好調な一方で、相次ぐイベント自粛による関連業種への影響はとても大きいものとなっています。(事務局 松井)

1.金属加工

  • 金属プレス加工の自社では、材料(特に非鉄材料)の入荷が悪く、計画的な生産ができずムダが多い。自動車関係は急激な戻りにより材料の供給が追い付いていない。非常に困っている。
  • 廃業案件の依頼が増えてきている。
  • 今後急激に進むであろうデジタル化を注視している。製造業のプラットフォーム化が大きく進むと思う。今までの系列とか、協力会という囲い込みが時代遅れとなりうる。プラットフォームに巻き込まれても生き残る、また巻き込まれない事業内容などの二方向で取り組む必要があると感じている。
  • 福島沖の震災が発生し、トヨタ自動車への部品供給が止まり、ラインが停止している。
  • 昨年から建築・建設関係が顕著だが、いつまでかは不透明。自動車は一進一退で、回復の兆しがあるかと思えば、生産減の要因が散見。三菱の坂祝工場閉鎖の影響は夏ごろから出るので、対応に追われている。
  • 製鋼所の高炉休止、半導体工場の火災等、需給面でバランスが崩れて受注の数量が安定しない。
  • トヨタ系の取引先各社が通常よりも多めの在庫を持とうとし、例年よりも忙しい。自社でクラスターが発生することに備えて、いつでも会社を止めてもいいように余剰在庫を持っているよう。

2.樹脂加工

  • 半導体製造装置の市場は需要が旺盛になっており、夏頃までは継続しそうな状況である。ただし、要求コストはかなり厳しく、量も相まって値崩れが起きそうな状況。自動車は製品ごとに異なる治具は出ているが、ラインを一式設備というのはあまりない。むしろ、蓄電池や軽量化の案件での引き合いが多くなっており、投資対象がかなり変わってきていると感じる。それ以外の細かい産業向けがまだ沈んでおり、顧客の構成が偏ってきているのが長期的には懸念される。
  • ビル建築に紐づく業種はコロナ禍でオリンピック開催の延期が建設進捗の遅れに影響し、景況の回復が大幅に遅れている。コロナ後を見据えてビル需要に陰りを感じる。

3.機械部品・機械製造

  • 特に中小企業はどの顧客と付き合うかで業況が大きく変わる。業界の動向を注視し動きのある業界の仕事に関われるようになっていく努力は必要か。

  • 電子回路分野では、半導体の需要が底堅い。中国・台湾がコロナ禍を抑え込んでいることもある。日本の行動制限で情報収集と技術開発に遅れが生じないか懸念される。

4.木材・木製品製造業(家具を除く)

  • 主の売り先である建設業は、他の業界より2年遅れて波が来る。来年度以降は公共事業の予算減少は避けれず、コロナの影響による売上減は9月以降からが正念場になりそう。

5.印刷・包装関連

  • デジタル化の推進により、さらなる紙離れ・印刷離れが懸念される。
  • コロナ禍によるイベントを中心とした自粛や規模縮小は弊社の商品販売には大きく影響している。
  • 新型コロナウイルスの影響を受ける客先からの注文が止まり、以前に近い状態まで戻るのか読めない。

6.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • コロナの影響は落ち着きつつある。家庭用食品は堅調。

  • 非常事態宣言の解除後も流通は大きな変化はないと思う。ワクチン接種で国民生活は新たな段階に入ると思うが、人の移動が緩和されるのはまだ先となると、景況感の大きな変化はしばらく無さそう。

7.その他製造業

  • 客先は順調なところが多いように感じるが、それがバブルによるものなのかの見極めが難しい。
  • 飲食業界からの値下げ要請が厳しい。
(3)流通業

●前回の2020年11月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは5→△3と大幅に8ポイント減少(悪い)し、再びマイナス圏に入りました。また、経常利益DIも3→0と3ポイント減少(赤字)し、仕入れ価格変動DIは15→24と大幅に9ポイント増加(上昇)しました。なお、販売価格変動DIは2019年11月調査結果の19をピークに、その後、2020年5月調査結果では△17まで落ち込み、今回は1までポイント増加(上昇)しましたが、ピーク時の19よりはかなり低い状態です。このように、販売価格が上昇しないなか仕入れ価格が上昇しているため、利益確保が難しい状態が続いています。文章回答では、2020年のCOVID-19により止められていた事業が若干動きだしたとの報告がありますが、今後も長期にわたって先行き不透明の状態が続く見通しです。(事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • トヨタ自動車の生産は昨年秋から堅調に推移してきていたが、2月13日の福島での地震の影響で部品供給が止まり、4日間の生産ラインの停止を余儀なくされたため売上が減少。今のところ輸出の鈍化の話はでていない。ロボット用の減速機を国内のロボットメーカーに販売している。昨年後半から中国向け小型ロボット向けの引き合いが増えているが、中国のユーザーは他社との相見積もりの結果簡単にキャンセルしてくるため、ロボットメーカーがそれに振り回され、結果として弊社の在庫が増えるなどの問題が出てくる傾向にある。精密減速機は納期が延びている。
  • トヨタ自動車やTier1部品メーカーは、コロナ禍の状況下で海外需要の回復もあり、第三四半期では業績の上方修正が相次いでいるが、その要因は販管費の節減(不要不急の購入抑制、内製化の徹底)によるところが強い。そのため当社のようなTier1メーカーに消耗部品等を納入している業者にとっては受注増の恩恵は全くない。金型の保全メンテナンスも大規模な改修メンテを抑制しており、いずれ修理保全が出ると思うが、それまでは耐え忍ぶしかないのが現状。
  • 世界的な半導体不足により、車載器(ナビ、ETC2.0)などの一部商品が欠品し、売上につなげることができない。月に1台くらいしか入荷していない。
  • ここ10年程増加傾向だった建設投資に陰りがみえる。土木工事発注高も来年度は微減の模様。ここ1年、財布のひもが固くなり建設機械の入替需要が伸ばし伸ばしになってきている(昨年比で50%減)。

2.繊維、衣服、雑貨

  • 当社のギフト業では、廃業店舗が増えている。ギフトの慣習の変化と、ジミ婚・家族葬儀・中元歳暮等の縮小、少子高齢化全てにおいて縮小傾向。当社は、対企業向けに特化しているものの、コロナの影響で、大きなイベント・大きな祭事が2020年2月~未だに中止となっている。
  • COVID-19の影響により、集客目的のイベントが開催できない。
  • ガソリンスタンドです。原油価格が昨年11月より上昇の一途です。世界的に見ても決して需要が伸びて在庫が少ないから価格が上がっているのではなく、投機マネーが原油市場に入ってきている感じがする。これにより実体経済に伴わない製品価格になり、販売数量減少によって販売店舗が粗利を削って価格競争をしている兆候が見られる。投機マネーが入り続けると200円/ℓなんて価格にもなりかねない。

3.運輸、情報通信

  • 2020年4月にトラック業界の長時間労働是正や全対策強化の為、必要な原資である運賃の底上げを目的に国交省より「一般貨物自動車運送事業に係る標準的な届け出運賃」制度が施行(30年ぶり復活)され、運賃料金やサービス条件改善の提案や交渉のきっかけと考えていたが、コロナ禍の為、その機会がほとんど失われた状況。
  • 車の部品は、コロナによる復活が早かった為、昨年と同様の売上となっているが、荷物の量の不安定さが目立つので来期への不安要素はある。食品関係は、小売りの荷量は減る一方だが、量販店は減ることなく上がっている。業界は厳しいらしく、今年に入って倒産した会社もあると仕入れ業者から聞いた。

4.保険、不動産

  • 損害保険代理業が主業であるが、本業種は景気に対する感応度が非常に鈍い(他業種に較べて遅れて来る業界)。リーマンの時も、翌年が一番厳しくなった。
  • 不動産売買の仲介と買取再販売を手がけている。来客数は減少しているものの契約件数は、昨年並みを維持。「ネットに載っていない物件はないですか?」と聞いてくるお客さまが減り、これがほしいという、目的を持ってこられるお客さまが増えている印象。同業者の中では、仲介手数料だけでは必要な売上が確保できないとして、不動産の買取再販売にウエイトを移す業者が増えているように感じる。建築業者に聞くと、昨年対比の成約件数が4割以上落ち込んでいる業者と昨年並みあるいはそれ以上の成約がとれている業者に二極化している。
(4)サービス業

●今回の業況判断DIは15→6、経常利益DIは21→21、と業況判断こそ落ち込んだものの、経常利益は前回とほぼ同じ数値となりました。また、次期(3カ月先)見通しでは、業況判断DIの1→22を始めとして、売上高DI、経常利益DI全て大きく向上し、これは程度の差はあれどの業種も同様です。判断が難しいところですが、各社の経営状況は以前と変わらないものの、新型コロナウイルス感染者数の下げ止まりや、それに伴う首都圏の緊急事態宣言の再延長への不安が調査時には影響したのに対し、春先には経済活動が一定戻っていると、昨年の経験から楽観視されているのかもしれません。

三業種毎では、業況判断DIが、専門サービス業34→22、対個人サービス業△9→△19、対事業所サービス業13→11。経常利益DIが、専門41→40、対個人△3→△8、対事業所18→24、と専門・対個人がやや落ち込んでいるのに対し、対事業所は概ね安定・向上していることがうかがえます。ただ、この理由として、製造業の回復がプラスに働いており、また対事業所はやや遅れて影響が出る為、堅調に回復しているとは、まだまだ言えない状態です。

経営上の問題点については、「民間需要の停滞」「取引先の減少」が33%、25%と、大きく上昇した昨年5月期の調査より、順調に下落。上がり続けていた「従業員の不足」や経営上の力点の「社員教育」が今回下がったことと合わせて、苦境下ながら落ち着きを取り戻したと見て取れます。

文書回答では、社員の危機意識が感染拡大当初より鈍ってしまったとの内容や、飲食店と密接に関わる仕事にもかかわらず、一時支援金の対象外となる事業者からの意見が目立ちました。(事務局 橋田)

1.飲食

  • 新型コロナウイルスの感染拡大を受けての緊急事態宣言により、営業時間の制限に加え、働き方改革の推進や週20時間以上働くパートが社会保険の加入対象に変わることなど、社会保険費とそれに伴う税負担といった、人に関わるコスト負担増がじわじわと収益を圧迫してきている。

2.福祉(介護)

  • コロナ禍の影響で在宅を選択する方が多く、住宅改修工事とレンタルの需要が増え続けていることと、施設からは助成金絡みの設備機器の仕事が増え、売上は上昇しているものの、今後を考えた業界の法改正に合わせた事業形態を考えていかないと、生き残れないと実感。大手同業他社からの、M&Aの話が多発している。(介護)

3.産廃・環境

  • 飲食業界におけるB to Bの中での仕入れ割合を多くして、ニッチな市場での占有率を上げる戦略が、コロナ禍によって直撃を受けた。売り先は確保しているにもかかわらず、供給が需要に追い付かず、売上の大幅な減少に陥っている。

4.広告・印刷

  • 飲食業やその関連企業(卸、仕入れ)への支援はあったものの、広告制作会社への支援はない。飲食業へ積極的に営業自粛が促されているということは、広告業は当然、計画されていた仕事がなくなっているということなので、支援のバランスが悪すぎると感じる。

5.生活サービス

  • 葬祭業は、コロナ禍で10年後の動向想定が追い込まれている。自粛による葬儀参加者の減少に加え、関連する売上が激減。コロナ禍が改善しても、需要の回復は見込みが薄い。

6.専門

  • 最短で夏まで、最長で年末までは、景気の回復が難しいと考えている。経営コンサルタントとして、個別の支援とは別に、国の施策(中小企業等事業再構築促進事業・中小企業生産性革命推進事業)を活用しての支援を、強く続けていく予定。
  • 昨年の秋頃から、新規案件が軒並み中止や延期となり、今もその状況が続いている。
  • 建築現場の職人が不足しており、工事の回転が遅くなってきている。そのため、工期が伸びて資金回収が遅れがち。今は、施策を活用しての実質無利子の融資で問題ないが、2年半先がやや心配。
  • コロナ禍の影響でもっと落ち込む見通しを立てていたが、一向にその気配は無く、また受注が増える勢いも無い。土地費用も建築費用も、高値安定になっている。ただ、名古屋駅あたりのオフィス需要は激減しており、新規竣工物件の入居率は80数%で、あまり良くない状況。