- 【概況】
- 【業況判断】 建設業、製造業では悪化
- 【売上高】・【経常利益】 全業種で回復する売上高、経常利益は業種ごとに二極化
- 【取引条件】 緩やかな改善傾向
- 【資金繰り】 「窮屈」超過幅は拡大
- 【設備過不足】・【施設稼働率】 設備は「不足」傾向、大幅に上昇する稼働率
- 【雇用動向】 「不足」を継続させ推移
- 【価格変動】 「上昇」顕著な仕入価格、販売価格はやや上がる
- 【借入金利】 短期金利ほぼ横ばい、長期金利は全体でやや「上昇」
- 【経営上の力点など】 問題点は「仕入単価の上昇」、力点上位の「社員教育」が鍵
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景況調査報告(2021年5月)第110号(PDF:1.5MB)
【概況】
「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、「今月の状況」が前回の5から7へ小幅ながらも2ポイント改善しました。しかし「今月の状況」を業種別に見ると、流通業が△3から3へ6ポイント、サービス業は6から13へ7ポイント「良い」超過幅を拡大させた一方、建設業が16から6へ10ポイント、製造業も6から2へ4ポイント「良い」超過幅を縮小させました。足もとの動きには業種ごとの異なりが見受けられます。
「前年同月比」(△16→10)ならびに「次期見通し」(11→15)は、双方とも2020年5月調査以後4期続けての改善となり、「前年同月比」は2019年5月調査以来2年ぶりにプラス値に回帰しました。
業種別でも総じて改善の動きが確認できます。「前年同月比」は建設業(△14→△9)、製造業(△24→21)、流通業(△18→7)、サービス業(△11→16)と全業種で「悪化」超過幅の縮小ないし「好転」超過幅を拡大させ、「次期見通し」も建設業(8→12)、製造業(5→11)、流通業(1→8)、サービス業(22→22)と、全業種とも「よい」超過幅の拡大ないし横ばいで推移しています。なお「前年同月比」は建設業を除く各業種で大幅な改善が確認されましたが、比較対象の2020年5月調査時は一度目の緊急事態宣言の発出により、全業種とも業況がもっとも落ち込んだ時期でしたので、今回調査のDI値の改善幅と実際の景気状況との間には相応の隔たりがあると考えられます。
今回調査で注目されたのは、建設業、製造業の業況判断DI「今月の状況」の下落要因です。文章回答ならびに分析会議での発言からは、「木材の枯渇、仕入れ価格の高騰により住宅が建たない状況」(建設業)、「配管材や電線などの銅相場が過去になく上昇している」(建設業)、「銅の価格高騰にともない、真鍮の価格も過去最高価格に」(製造業)、「アルミ、銅合金、樹脂の価格が上昇し、それにともない潤滑油も値上がり」(製造業)、「木材建材の仕入れ価格の高騰分の価格転嫁ができない」(建設業)、「原材料価格の上昇分を価格転嫁できていない。今後徐々に進めていかなければ、後半きつくなりそう」(製造業)など、「ウッド・ショック」として各方面で報道されている木材をはじめ、広い範囲での原材料価格の上昇が、中小企業の経常利益を圧迫している様子が指摘されました。
調査結果もこうした声をあらわしています。「仕入価格変動DI」は「今月の状況」で大幅に「上昇」超過幅が拡大し(22→38)、さらに業種別では建設業と製造業でひときわ大きな「上昇」超過幅拡大が確認できます(建設業:25→65、製造業36→56、流通業24→31、サービス業9→17)。また「経常利益DI」の「今月の状況」は、前回の11から10へほぼ横ばいですが、業種別では建設業が17から9へ8ポイント「黒字」超過幅を縮小させ、製造業も3から△4へ7ポイント下落し「赤字」超過に転じました。他方で流通業は「黒字」超過幅の拡大(0→10)、サービス業はほぼ横ばい(21→20)で推移しています。
建設業からは「大手ハウスメーカーの木材などの買い占めにより、中小ハウスメーカーが非常に厳しい状況」、「ウッド・ショックの影響の長さによっては倒産するところも出るのではないか」、「受注しても工事をはじめることができない。この1年は非常に厳しくなりそう」など、先行きを懸念する声が相次ぎました。
製造業からは「半導体製造装置関連は昨年対比で2倍以上の受注があるが、材料確保が困難」、「工作機械関連も一昨年の水準に近づきつつある」、「電池やスマートフォンの生産に関するロボットが好調」など、コロナ禍で停滞した生産活動を挽回する動きに入っている様子が聞かれました。自動車関連からは「米国と中国の回復に支えられて過去最高益」との声が聞かれた一方、「まとまった新規受注がなく、2次・3次メーカーへの波及は限定的」など、回復の動きには偏りがあるようです。さらに「カーボン・ニュートラルに向けた動きにより、電動化へのスピードが増している」、「この先2~3年で大きな転換を迎えるのではないか」など、コロナ禍以後の経済社会に向けた動きの加速が指摘されました。
緊急事態宣言の延長などにより国内消費の落ち込みが続き、小売業などでは厳しい状況が続いていますが、他方で先進国を中心としたワクチン接種の広がりによりコロナ禍の出口が見え始めたことで、昨年来抑制してきた生産を巻き返す動きが日本でも始まりつつあります。その結果が原材料の不足感と価格の上昇です。その動向が今後の景気状況を左右する要因となります。現在の状況には、実需を越える水増し需要も発生している点に注意が必要です。この先景気の過熱感が強まることになれば、各国政府による政策的介入の可能性が高まります。現場感覚だけでなく、マクロ的視野から各国――とりわけ米国と中国――の政策変更を織り込んだシナリオを描き、経営の舵を取ることが重要です。
[調査要項]
調査日 | 2021年5月17日~5月27日 |
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対象企業 | 愛知中小企業家同友会 |
調査方法 | 会員専用サイト「あいどる」 |
回答企業 | 会員企業より1268社の回答を得た。業種内訳は以下 (建設業222社、製造業271社、流通業312社、サービス業463社) |
平均従業員 | 23.6名(中央値7名) |
なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、安藤寿・安藤不動産代表)が実施した調査結果をもとに、景況分析委員の業界情報を集めてまとめたものです。
【業況判断】 建設業、製造業では悪化
今月の状況は、前回の5から2ポイント持ち直し7と業況判断の改善傾向を示した。業種別でみると、流通業が△3から3と6ポイント、サービス業が6から13と7ポイントと、いずれも改善傾向を示した。一方、建設業が16から6と10ポイント二桁後退傾向を示した。製造業も6から4ポイントと後退し2となった。
前年同月比は、前回の△16から10と26ポイント大幅に「悪化」超過幅を縮小させた。水面上になるのは2019年5月以来2年ぶりの事である。業種別でみると、建設業が△14から△9と5ポイント「悪化」超過幅を縮小させた。その他、製造業が△24から21と45ポイント、流通業が△18から7と25ポイント、サービス業も△11から16と27ポイント、いずれも二桁「悪化」超過幅を縮小させ水面上に回帰した。製造業が水面上に回帰したのは、2018年11月以来の事である。
3カ月後の次期見通しは、前回の11から15と4ポイント改善傾向を示した。業種別でも、建設業が8から12と4ポイント、製造業が5から11と6ポイント、流通業が1から8と7ポイントと、それぞれ改善傾向を示した。サービス業は22から22と変化はないものの、「よい」超過幅が高い水準で推移した。
【売上高】・【経常利益】
全業種で回復する売上高、経常利益は業種ごとに二極化
売上高DI(前年同月比)は、前回の△16から12と28ポイントと4期連続でマイナス幅を縮小させ、水面上に回帰した。これは2019年11月以来の事である。業種別で見ると、建設業が△16から△8と8ポイントマイナス幅が縮小した。製造業が△27から45ポイント反転し18となり、流通業が△18から10と28ポイント、サービス業が△9から18と27ポイントと大幅にマイナス幅を縮小させ、いずれも水面上に回帰した。3カ月後の次期見通しは、前回の△7から2と9ポイントマイナス幅を縮小させ水面上に回帰した。業種別でみると、建設業が△17から△9と8ポイント、製造業が△8から△1と7ポイントマイナス幅を縮小させた。流通業では△11から水面上に持ち直し1に、サービス業が1から11と10ポイントいずれも改善し水面上に浮上した。
経常利益DI(今月の状況)は前回調査の11から10とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、建設業が17から8ポイント悪化して9になり、製造業が3から△4とマイナス幅を拡大させ再び水面下に落ち込んだ。一方、流通業では0から10と二桁の改善傾向を示した。サービス業は21から20とほぼ横ばいだった。
前年同月比は前回の△13から9と22ポイント改善傾向を示した。建設業が△15から△11と4ポイント改善した。製造業では△20から14と34ポイント大幅に改善した。水面上に回帰するのは、2018年11月期以来のことである。流通業も△14から7と21ポイント、サービス業が△8から17と25ポイント、いずれも水面上に大幅に改善した。3カ月後の次期見通しは前回の7から11と4ポイント改善傾向を示した。製造業が△1から5と6ポイント、流通業が△6から8と14ポイント、マイナス幅を縮小させ水面上に回帰した。建設業は5から2と3ポイント悪化傾向を示した。サービス業は22から21とほぼ横ばいで推移した。
【取引条件】 緩やかな改善傾向
前年同月比は△4から△3と水面下ながら4期連続の緩やかな改善傾向がみられた。業種別でみると、流通業(△9→△4)が改善傾向を示した。建設業(△7→△5)・製造業(△3→△2)は大きな変化がないものの改善した。サービス業(0→△1)はほぼ横ばいだった。次期見通しも、前回の△4から△2と緩やかな改善傾向を示した。業種別でみると、製造業(△4→△1)・流通業(△8→△2)が改善した。建設業(△6→△9)は悪化傾向を示した。サービス業(△1→0)は大きな変化がなかった。
【資金繰り】 「窮屈」超過幅は拡大
今月の状況は、前回の1から△3と4ポイント「窮屈」超過幅を拡大させた。業種別でみると、建設業(1→△4)・製造業(5→0)・流通業(△1→△9)が「窮屈」超過幅を拡大させた。サービス業(1→△1)は横ばいで推移した。「今月の状況」の資金繰り動向は、前回・前々回で調査始まって以来「余裕」が高くなったが反転した結果となった。次期見通しは、前回の△2から△3と大きな変化はなかった。業種別で見ると、建設業(△5→△2)が「窮屈」超過幅を縮小させるものの、製造業(3→0)・流通業(△4→△7)・サービス業(△1→△3)は「窮屈」超過幅を拡大させた。
【設備過不足】・【施設稼働率】
設備は「不足」傾向、大幅に上昇する稼働率
設備過不足DI(今月の状況)は△8から△6と2ポイント「不足」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(△13→△10)・製造業(△3→3)・流通業(△9→△5)が「不足」超過幅を縮小させた。サービス業(△10→△11)では大きな変化がなかった。次期見通しでも前回△8から△7とほぼ横ばいながらも「不足」超過幅が縮小した。業種別では、建設業(△11→△9)・流通業(△8→△3)が「不足」超過幅を縮小させた。サービス業(△10→△11)ではほぼ横ばいで推移し、製造業(△2→△2)は変化がなかった。
施設稼働率DI(前年同月比)は、前回調査の△11から18と29ポイント大幅に「低下」超過幅が縮小し水面上に回帰した。この傾向は4期連続のものである。業種別でみると、製造業(△8→18)で二桁の26ポイントも「低下」超過幅が縮小した。次期見通しは、前回調査の△6から10と16ポイント「低下」超過幅が縮小し、こちらも水面上に回帰した。業種別にみると、製造業(△2→10)が大幅に「低下」超過幅が縮小する結果となった。
【雇用動向】 「不足」を継続させ推移
今月の状況は、△20から△20と変化がなかった。業種別でみると、建設業(△33→△32)・製造業(△10→△9)・流通業(△18→△17)・サービス業(△21→△22)とすべての業種で大きな変化が見られなかった。
次期見通しも大きな変化みられないものの△20から△22とやや「不足」超過幅を拡大させた。業種別にみると、建設業(△29→△39)が「不足」超過幅を二桁拡大させた。製造業(△11→△14)も「不足」超過幅を拡大させた。サービス業(△25→△23)が大きな変化がないものの、「不足」超過幅をやや縮小させた。流通業(△17→△16)がほぼ横ばいで推移した。
【価格変動】
「上昇」顕著な仕入価格、販売価格はやや上がる
仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の22から38と「上昇」超過幅が16ポイント拡大し、「上昇」と回答した割合は41%に及んだ。業種別でみると、建設業(25→65)が40ポイント、製造業(36→56)が20ポイントといずれも大幅に「上昇」超過幅を拡大させた。その他、流通業(24→31)・サービス業(9→17)ともに「上昇」超過幅を拡大させた。
前年同月比では22から38と16ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(28→63)が35ポイント、製造業(37→57)が20ポイント「上昇」超過幅を拡大させた。流通業(20→33)・サービス業(10→18)も「上昇」超過幅を拡大させた。
次期見通しは、前回の22から34と「上昇」超過幅を12ポイント拡大させた。業種別でみると、建設業(25→58)が33ポイント大幅に「上昇」超過幅を拡大させた。その他、製造業(41→47)・流通業(18→30)・サービス業(11→16)も同じ傾向を示した。
販売価格変動DI(今月の状況)は、前回の0から7と7ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(△5→13)・製造業(△3→8)が二桁「低下」超過幅を縮小させた。流通業(1→6)でも「低下」超過幅を縮小させた。サービス業(3→5)は大きな変化が見られないものの同じ傾向を示した。
前年同月比は前回の0から8ポイント「低下」超過幅が縮小し8となった。業種別でみると、建設業(1→18)・製造業(△6→6)では、「低下」超過幅が二桁縮小した。流通業(△1→6)でも「低下」超過幅が縮小した。サービス業(3→5)はほぼ横ばいで推移した。次期見通しは、△1から9と10ポイント「低下」超過幅を縮小させた。業種別でみると、建設業(△6→18)が「低下」超過幅を二桁縮小させた。製造業(△2→10)・流通業(△3→8)が「低下」超過幅を縮小させた。サービス業(4→5)は大きな変化がなかった。
【借入金利】
短期金利ほぼ横ばい、長期金利は全体でやや「上昇」
短期借入金利DIは前回調査の△1から1と水面上に回帰した。業種別でみると、建設業(2→1)・製造業(1→0)が大きな変化が見られないものの「上昇」超過幅を縮小させた。流通業(△2→1)が「上昇」超過幅を拡大させた。サービス業(△2→0)が僅かながら金利の「上昇」傾向を示した。
長期借入金利DIは前回の3から6と「上昇」超過幅を拡大させた。業種別でみると、流通業(3→8)・サービス業(1→5)が「上昇」超過幅を拡大させた。建設業(5→7)でもやや「上昇」超過幅を拡大させ、製造業(5→4)は大きな変化がなかった。
【経営上の力点など】
問題点は「仕入単価の上昇」、力点上位の「社員教育」が鍵
全業種でみた経営上の問題点は、「民間需要の停滞」(38%)・「従業員の不足」(28%)・「取引先の減少」(23%)と続き、前回調査と同じ傾向を示した。2020年5月期調査で、人手不足感が最も緩和したものの、再び「不足」超過幅が拡大してきたといえる。
業種別でみて特徴があったのは、建設業・製造業で「仕入単価の上昇」(41%・37%)、流通業で「取引先の減少」(28%)、サービス業で「従業員の不足」(33%)だった。今回の調査では建設業と製造業の仕入単価の上昇が特徴的であった。文書回答では「ウッドショックにより木材の供給不足や価格高騰が起きている(建設業)」「中国の景気回復で需給バランスが崩れ、需要がないのに仕入があがる(製造業)」「取引先が飲食業のため業務も激減で思考停止(流通業)」「より価格競争が激化し、ネット集客の比重が高く、資金力勝負のところがある(サービス業)」という情報が寄せられた。
全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(59%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(54%)、第3位に「社員教育」(30%)とこれまでと同じトレンドだった。
<会員の声(業種別)>
(1)建設業
●前回の2月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは16→6と10ポイント下落しました。仕入価格変動DIは25→65と40ポイント上昇(値上がり)し、次期(3カ月先)見通しも25→58と33ポイント上昇(値上がり予測)し、どちらも業種別では最大の上昇となり資材不足の影響が見られます。資金繰りDIは1→△4と5ポイント下落(やや悪化)しています。雇用動向DIは△33→△32と1ポイント上昇、次期(3カ月先)見通しは△29→△39と10ポイント下落し、人手不足の解消には目途が立っていません。販売価格変動DIは△5→13と18ポイント上昇し、次期(3カ月先)見通しも△6→18と24ポイント上昇しました。ウッドショックをはじめ、資材の不足・価格の高騰による影響が数字に表れています。取引先の状況や手元資金の確保に留意が必要です。(事務局 佐藤)
1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾
- ウッドショックによる木材の枯渇や仕入れ単価の高騰により、住宅が建たない状況になりつつある。建売を多くつくっている企業は工期も間に合わず、単価も上がり、良い材料も入らないため厳しい。今から1年近くはこういう状況が続くという見通し。
- 原状回復工事に関して今年は人の移動が少なく繁忙期の案件数は例年の1/3ほどになった。緊急駆け付け案件で今までは飲食の顧客がメインだったが、新規顧客の開拓を行うことで服飾、スーパー事業へ拡大ができ不足分は補うことができた。
- 業界としてコロナ禍の影響は少なく感じるが、例年の流れとは変わってきている。例年であればリフォーム事業は5月いっぱいまでは勢いがあるが止まってしまった。逆に店舗の新装工事の案件が増えてきている。
- 商業施設の受注は3割減で、安価な工事かブランド店の工事は動いている。また国土交通省による補助金を活用する顧客がおり、仕事の受注につながると見込んでいる。資材関係ではベニヤ板が不足しており価格が2019年に比べ1.2倍、業者の話では今後1.5倍となる見通し。中国や米国で需要が急増していることもあり、日本に材料が入ってこない状況。またコロナで人材を削減せざるを得なかったことで、現在の需要に対応できるだけの人材が確保できていない。すぐに解決する問題ではないので、影響は長引くと予想している。
2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体
- スクラップ価格上昇に伴い、製品価格が急上昇中。中国による高値でのスクラップ、ビレット買いが進み、鉄鋼製品価格上昇に影響している。見積り提出後にタイムラグがあるため、受注が決まっても鋼材価格差の補てんが非常に厳しい状態。工事の受注はマンション系のRC造が今年は多い。次いでS造も例年並みに受注。個人邸(特に木造基礎)の見積りが減少傾向にある。コロナの影響でリモートが進んできた。このリモートの影響で考えられるのは、事務所機能的な建物の新規物件が少なくなると同時に、工場系・倉庫系の建物の案件が増えるのではないかと考える。
3.給排水管工事、電気工事、設備工事
- 飲食、観光(ホテル、旅館)業がこの先全く見通しが立たない。当社取引先(全国)も約2割が、今後半年以内に倒産もしくは廃業を検討に入っている。コロナ禍もまだ一年はこんな状態が続くと予測される中で、新規開拓も視野に入れている。
- 銅の建値が昨年3月19日にはトン当たり55万円だったものが、今年5月13日にはトン当たり119万円と高騰している。電線価格に直接影響しているので、見積もりも注意しながら取組んでいる。市場では、大型案件の減少から受注価格の低下が顕著に出始めており、原材料の高騰と受注価格の下落により労務費の圧迫が懸念材料になってきている。
- 半導体不足によって電子機器が入らない状況。材料価格は値上がりしているのに対し、価格転嫁ができていないので人件費に影響が出ている。木材も買い占められており、仕事を受注しても工事ができない場合がある。5Gについては取り付けを急ぐように指示は出ているが、電子機器が入ってこないため中々進まない。3G回線の撤去作業もあるので、携帯バブルは続くと見ている。
4.建築設計・不動産
- ウッドショックの影響は出ているが、木材業界はこれからがひどくなる。構造材の生産は3割ダウンで、発注に制限が掛かっている。投資用マンションに関しては引き合いが多く、土地価格が安定しているので計画を基に建設用地が探されている。分譲マンションについては需要が少なく、設備投資も控えている。企業によって状況が違い、良いところと悪いところで差がついている。
- 広告を出しても人が集まらないため、顧客を紹介してほしいという要望が増えている。賃貸アパートは不調だが、工場や資材置き場の需要は高い。ウッドショックに関して買い付ける力のある企業は材料を確保しているが、地域の工務店は危険な状況。
(2)製造業
●業況判断DIでは、今月の状況が6→2とマイナス4ポイントとなりましたが、次期見通しは5→11と2期連続で「良い」が上回り、前年同月比は△24→21と10期ぶりに「好転」が「悪化」を上回る結果となりました。一方で仕入価格変動DIは、今月の状況が36→56と前回から20ポイントの上昇、次期見通しでも41→47と6ポイント上昇しました。しかし、販売価格変動DIは今月の状況が△3→8、前年同月比も△6→6、次期見通しでは△2→10と、いずれも「上昇」が「低下」を上回っていますが、仕入れ価格の上昇を価格に転嫁できているとは言えない状況といえます。少しずつ回復傾向にあると見られていた製造業ですが、依然として厳しい状況に置かれている企業も数多くあります。原材料費の高騰や各国の動きなど、今後の状況をさらに注視する必要があります。(事務局 松井)
1.金属加工
- 中国がいち早く新型コロナウイルスの景気の落ち込みから回復したことで、需給バランスが大きく崩れ、需要が無いのに仕入れが上がる。客先に価格改定の要請をするが、中々理解が得られない。
- 4月以降、大手カーメーカーの集購価格は据え置きになっているが、仕入先商社より値上げ要請があり、中小企業としては認めざるを得ない。製造原価は上がるが販売価格は変わらない状況が続くので、利益が圧迫され疲弊している。すべて支給材にするか、値上げを認めるなど対応してほしい。
- ウッドショックと呼ばれる住宅着工の減少にどれだけ影響が出てくるか未知数。銅の価格高騰によりメイン素材である真鍮の価格も過去最高価格になってきているので、客先への価格改定に勤しんでいる。
2.樹脂加工
- 半導体不足の影響が6月くらいから出始める予定が情報として流れてきている。それ以外の製品では使い捨てのコンタクトケースの注文が激減した。
- 新型コロナの影響で外国人の旅行客の減少などでホテル向けも減少していたが、コロナ前と比較すると6月の注文予定は70%減だった。
3.機械部品・機械製造
- 中国が設備投資をけん引しているが、日系企業及び日本国内でも設備計画の話が増えている。日本国内の顧客も仕事量が増えているところが多い。
- 半導体製造装置関連が前年の2倍以上の受注があり、材料の入手が困難になっている。
- 電線や制御盤の板金の仕入れ価格が6月から2割ほど上がる。日常部品も、納品まで3カ月かかることもある。部品の高騰や欠品による仕事の滞りなどで、売上や粗利が低下しそうな足音が聞こえる。
- 主力の半導体関連は今年いっぱい需要増。材料値上げ不足感から先行発注が目立ち、実需が見えない。
- 零細企業の製造業はコロナ渦に関係なく現在も厳しい状況が続いている。少ない仕事の取り合いの中、単価の下げ合いと共に海外に仕事が流れている様に感じる。
4.木材・木製品製造業(家具を除く)
- 新設住宅着工戸数は前年を若干上回っているものの、内訳をみると、首都圏のみが増加しており中部圏はマイナスで推移している。住宅関連のマイナストレンドは、アフターコロナでも継続すると思う。
5.印刷・包装関連
- 売上の大幅な減少はないものの小幅な減少が続いており、少しづつ首を絞められているようで不安。同業他社からの仕事を請けたいという売り込みも増えており、どこも同じような状況。各種補助金の活用を検討するため情報を集める一方で、いま手元にある設備等を活用して何かできないかを考え、動き始める。
- 突然の仕事が多いかと思えば、予定していた製品の取りやめなども起こっている。まさにコロナの状況で左右されている。
- 人の流れを制限する施策に伴って、商談が遅れ気味。コロナ終息後に持ち越される案件が増えている。イベントの延期 中止に伴う売り上げ減。
6.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業
- 梅雨入りが例年より1か月も早く、野菜の価格の高騰が気になる。
- 中国製も原材料、人件費とさらに上がり価格上昇。コンテナ不足も未だ解決に見通しがつかない模様。国内材料メーカーも原材料価格上昇と雇用調整助成金による定期休業によって仕入れ価格は上がる、納期遅れと消費が少し回復傾向にあるものの、商品の供給がいたるところで遅れている。
7.その他製造業
- コロナウイルス蔓延の時世か、外出を抑制されて要る環境の中で当社の商品が家の中の巣籠りグッズとして重宝されている。ここ数か月、出荷額も伸び欠品も多く出ている。
(3)流通業
●2020年は新型コロナウイルス感染症により経済が止まったため、その1年前の2019年5月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは19→3と大幅に16ポイント減少(悪い)しています。また同様に、経常利益DIも29→10と19ポイント減少(赤字)し、販売価格変動DIも22→6と大幅に16ポイント減少(低下)と、依然として厳しい経済動向です。新型コロナウイルス感染症により需給バランスが崩壊し、木材価格高騰のウッドショックをはじめ、あらゆる資源価格が高騰しているなか、流通業も例外なくこの状況がいつまで続くのか予想ができません。(事務局 墨)
1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
- 材料不足、半導体不足が客先の生産の足を引っ張る傾向がある。自動車もトヨタでさえ生産ラインが止まってしまう。現状は東北の工場のラインがラインごとに8日間と2日間止まるという状況。せっかく中国などで車の販売が好調なのに、生産ができないと我々の商売にも影響がある。半導体の製造装置も非常に好調だが、一部の樹脂系の部品が材料不足で生産ができないという話があり、機械が組みあがらない可能性がある。ロボットはスマートフォン組み立て関連の設備投資の話に振り回されている感じ。
- トヨタの国内生産台数は内示時点では増産見込みであったが、半導体不足の影響もあり流動的。2022年以降の開発車系の部品出図は予定通りとのことで、対応力強化を進めるつもりでいる。
- 主要顧客である自動車製造関連では半導体不足だけでなく、殆ど報道されていないが、今年2月の米国南部大寒波による停電で多くの工場の操業が停まり、その影響により樹脂材料供給が停滞する事で自動車生産にも少なからず悪影響が出るという情報もある。6月以降、各メーカーの一部ライン停止も発表され予断を許さない状況。政府は半導体生産委託、技術供与を台湾TSMCへ行うとの発表だが、サプライチェーンとしての安全保障を考えれば絶対に止めるべき。
2.建築資材
- 建築業界はウッドショックを中心とした原材料の値上げに歯止めがかからず、ここから1・2年は非常に苦しいことが予想される。
- 木材の価格が高騰、入手しづらい状況となっている。いつ解消されるかが読めない。
3.繊維、衣服、雑貨
- 旅行事業者です(旅行業登録2種)。1年以上続く観光需要の激減に苦悩している。国の事業再構築補助金の申請などできることは動いていますが、足元の売上げが立っていない。
- 現状は、そんなに悪い状況ではないが、秋冬物に関して輸入品の価格がかなり値上がりするので景気が回復してこないと厳しくなってくるかもしれない。
- コロナ禍による観光地来客数の大幅な減少・修学旅行の中止・延期により、売り上げ見通しが立たない。取引先も休業や出勤調整しているところが多く非常に厳しい。
4.飲食料品
- 昨年同様、緊急事態宣言のなかでセーフティがないので、困窮している。
- 取引先が100パーセント飲食店の為、緊急事態宣言期間中の現在、時短・休業の影響でかなりのダメージを受けている状況。
5.運輸、情報通信
- 長く続くコロナ禍の影響により、新規大型設備投資案件が停滞している感じが否めない。中小企業によるコストを抑えたシステム投資が増えたが、対応できる人材が慢性的に不足しており、苦しい。
- IT業界は、DX化の加速で追い風的なところもあるが、業務システムやレガシーシステムは、あまりニーズが掘り起こされていない。EVや自動運転関係は待ったなしの競争で、そういった分野へのIT投資は今後も旺盛だと思われるが、現在稼働している業務システム(生産、販売、購買、会計管理等)は、今暫く継続して運用する場合が多い様に感じている。従って、中部地方の製造業の業務システムは、コロナ禍が終息するまでは、需要が萎んだ状態が続くと見ている。
- 世界的な半導体不足の影響が早くも出ていて、電話設備、通信機器等の納品の目処が立たなかったり、納期に間に合わなくなったりして、商談が進められなくなっている。
6.保険、不動産
- どうしても、コロナの状況に一喜一憂します。一方で、ウッドショックと言われる木材不足により、秋以降建築現場が止まると言われており、また「1件あたりの住宅価格が既に200万円値上がりした」とも聞き及んでいます。
(4)サービス業
●前回調査時と比べ今月の状況として、業況判断DIは6→13、経常利益DIは21→20との結果が出ました。次期(3カ月先)見通しでは、業況判断と経常利益DIがほぼ変わらず、売上高DIが大きく向上と、新型コロナウイルスの感染再拡大やそれによる緊急事態宣言の再発出・延長をはじめとして、前回調査時と比べ好転は見られないもの、オリンピックの開催やワクチン接種の開始により、先行きが明るく感じられる様になっていることを、表しているのではないでしょうか。
ただ三業種毎では、業況判断DIが、専門サービス業22→31、対個人サービス業△19→△6、対事業所サービス業11→9。経常利益DIが、専門40→43、対個人△8→2、対事業所24→4と、依然として、専門サービス業が目立って好調な半面、対個人・対事業所サービス業は回復しきっていない、数値によっては前回より落ちていると、業況に反して予断を許さない状況です。飲食・観光事業者の回答を抽出したところ、経常利益DIが若干改善したのみで、変わらない厳しい状況が数字上にも出ています。
昨年5月をピークに下がり続けていた、経営上の問題点「民間需要の停滞」「取引先の減少」がそれぞれ33→34%、25→28%と下げ止まり、前回下がった「従業員の不足」が27→32%、経営上の力点「社員教育」が26→29%と、わずかながら「人材確保」の28→29%と合わせて再上昇しています。
文書回答では、小規模・薄利だった市場にも新規参入、特に大手企業の参入やそれによる一層の低価格化を憂うものや、木材の不足・高騰との「ウッドショック」による支障が既に出ているとの意見が目立ちました。コロナ禍後の展望が一定反映された景況ですが、収束後、反転して飛躍できるかそのままとなってしまうかは、現在の具体的取組から既に表れ始めています。(事務局 橋田)
1.飲食
- 緊急事態宣言による営業時間短縮や休業要請にともない、生活必需品以外の消費が低迷している様に感じる。アフターコロナ後の値上げや税負担などを考えると、あまり強気な運営はできない。
- 飲食業において、とりわけ居酒屋という業態は引き続き営業できない状況に変わりなく、休業手当を始め保証も十分ではないため、家賃交渉や人件費削減などで、借入金の支出を抑えるしか手立てがない。
2.福祉(介護)
- 景気には左右されにくい業界ではあるが、コロナ禍により、今までにない対策費用の増加に対し、同居者の発熱による健康観察期間の設置や訪問回数の制限、訪問スタッフの人数制限などもあり、保険売上は減少している。また、大手の参入や抱え込み事業などの影響による契約減少も発生。サービス提供側の人的質が高ければいいが、効率と利益の追求へ重きを置いていたり、質の悪さはこの業界の大きな課題である。
3.広告・印刷
- 展示会への出展企業が少なくなっており、また出展しても予算削減で停滞している。その反面、web事業は活発な動きが見られるので、こちらに注力している。
4.生活サービス
- 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出るたびに、お客様が来なくなるのが深刻。飲食には手厚い保障があるが、この業界へは何もなく、本当に困っているところへ手当をしてもらいたい。
5.専門
- 住宅着工戸数が下がり続けているのに、土地の値段や建設単価に変動が見られない。特に木造建築では「ウッドショック」により木材が手に入らず高騰中。国土交通省も、工事遅延の発生で資金繰りに注意するよう、融資先を紹介したりして注意喚起している。今後多様な製品に波及し、木造以外でも支障をきたすようになるのではと、危惧している。
- より価格競争が激化し、ネット集客の比重が高まり、資金力勝負の面がある一方、新規参入も増え続け、業務の質もかなり差が大きい。その中で自社はどう表示していくべきか、試行錯誤中。
- 年度末にコロナやウッドショックの影響で止まっていた案件が、木材確保の目処が立ちようやく動き始めた。ただ6月以降、木造を中心とした案件は厳しいと言われている。その他の材料単価も上がっており、建設関係は厳しくなるのではないか
- 建設業の受注が来年早々ガタ落ちになると耳にする。今年から大企業が安価な公共工事に入札してきている。その影響で、建設業者が顧客に多い自社としては、来年が怖い。
- 経理や総務のアウトソーシングが認められつつあるため、新規顧客については需要がある一方、既存顧客では経営悪化に伴い、工数が減るもしくは仕事の依頼自体がなくなっている。景気が低迷する中、さらにふるいにかけられていく状況が加速していく。