景況調査

第111号-2021年8月
改善傾向は維持も、原材料高が経営圧迫

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:587KB)

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景況調査報告(2021年8月)第111号(PDF:1.47MB)


【概況】

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、「今月の状況」が前回の7から11へ4ポイント改善しました。「良い」と回答した企業の割合が1ポイント上昇し、「悪い」と回答した企業の割合が3ポイント低下したことによります。業種別では、建設業が前回の6から13へ7ポイント、製造業が2から10へ8ポイント、サービス業が13から20へ7ポイント「良い」超過幅をそれぞれ拡大させたのに対し、流通業は前回の3から△3へ6ポイント下落し、2期ぶりにマイナスとなりました。

「次期見通し」も前回の15から17へと、わずかながら「よい」超過幅が拡大しました。しかし、業種ごとで状況にばらつきがあります。建設業(12→23)と製造業(11→17)は「よい」超過幅を拡大させ5期続けての改善となりましたが、流通業は横ばい(8→8)、さらにサービス業は5期ぶりに「よい」超過幅を2ポイント(22→20)縮小させました。

「前年同月比」は前回の10から5へ、5ポイント「好転」超過幅が縮小しました。業種別では、製造業が21→23へ2ポイント改善したほかは、建設業(△9→△12)、流通業(7→△5)、サービス業(16→8)で「好転」超過幅の縮小ないし「悪化」超過幅の拡大がみられました。とりわけ「今月の状況」で唯一マイナス値となった流通業(7→△5)は12ポイントの大幅減となりました。昨年夏は緊急事態宣言が解除され景気が急回復する途上にあったのに対し、今期は新型コロナ感染の急拡大で「自粛経済」が広がりつつある状況にあることが「前年同期比」DI値の悪化をもたらしたものと思われます。

文章回答では、「ウッド・ショックにより、物件が大幅減少」、「品不足で、ものによっては6カ月待ちの機械部品、電子部品なども出てきている」、「仕入先からの材料の値上がりが続く」など、原材料・資材の不足や価格上昇による利益圧迫を指摘する声が全業種に共通して多く見受けられました。こうした状況は、「仕入価格変動DI(前年同月比)」の「上昇」超過幅拡大(38→47)、「経常利益DI(前年同月比)」の「好転」超過幅縮小として、DI値にも反映しています。また、「観光業は人流抑制のなか、大打撃を受けている」、「大きなイベントが開催されないことで、売上が減少」など、コロナ禍の影響を訴える回答も多く見られました。

景況分析会議でも「木材価格は概ね2倍程度に落ち着いているが入手困難」(建設業)、「鋼材、ボルトも大きく高騰しており、工期の長期化や着工の先送りが懸念される」(建設業)、「石油、化学製品、軽油の価格が上昇」(流通業)など、原材料不足や価格上昇による経営圧迫を懸念する声が聞かれました。

また分析会議では、「カーボンニュートラルの関係で、太陽光パネルの引き合いが急激に増えている」(建設業)、「自動車関連の設備投資案件は、EV開発かソフトウェア関連ばかり」(製造業)など、「脱炭素」などの社会的課題が中小企業のビジネスにもはっきりと影響しつつあることを印象づける発言も多く聞かれました。

日本でもワクチンパスポートと陰性証明を活用した「新たなウィズ・コロナ経済」への模索が始まろうとしており、いわゆる「コロナ不況」も最終局面を迎えつつあります。他方で、「脱炭素」「SDGs」など社会的課題が中小企業のビジネス環境に変化をもたらしつつあります。中小企業経営者にはこれまでにも増して「情報収集」と「学び」への積極的姿勢が求められます。

[調査要項]

調査日 2021年8月23日~8月31日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1279社の回答を得た。業種内訳は以下
(建設業226社、製造業268社、流通業306社、サービス業479社)
平均従業員 24.4名(中央値7名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、安藤寿・安藤不動産代表)が実施した調査結果をもとに、景況分析委員の業界情報を集めてまとめたものです。

【業況判断】 建設業、製造業で緩やかな回復基調

今月の状況は、前回の7から4ポイント持ち直し11と業況判断の改善傾向を示した。業種別でみると、前回後退傾向を示した建設業が6から13と7ポイント改善傾向を示した。製造業も2から8ポイントと改善し10となった。サービス業が13から20と7ポイント二期続けて改善した。流通業は3から△3と6ポイント悪化傾向を示した。

前年同月比は、前回の10から5と5ポイント後退傾向を示すものの水面上に留まった。業種別でみると、建設業が△9から△12と3ポイント「悪化」超過幅を拡大させた。流通業が7から△5と12ポイント「悪化」超過幅を拡大させ再び水面下に落ち込んだ。サービス業でも16から8と8ポイント「悪化」超過幅を拡大させた。製造業では21から23と大きな変化はみられないものの「好転」の状態で推移した。

3カ月後の次期見通しは、前回の15から17と大きな変化は見られないものの2ポイント改善傾向を示した。業種別では、建設業が12から23と11ポイント、製造業が11から17と6ポイント改善傾向を示した。それぞれ2020年5月調査より5期連続の傾向である。サービス業では22から20とやや後退した。流通業は8から8と変化がなかった。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】
製造業の売上高「増加」、経常利益の次期予測は回復

売上高DI(前年同月比)は、前回の12から10と2ポイントとプラス幅を縮小させた。業種別で見ると、建設業が△8から△6と2ポイントマイナス幅が縮小した。製造業が18から4ポイント改善し22となった。流通業では10から0と10ポイント悪化傾向を示した。サービス業では18から18と横ばいで推移した。3カ月後の次期見通しは、前回の2から3とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、建設業が△9から4と13ポイントと二桁、製造業が△1から5と6ポイントそれぞれマイナス幅を縮小させ水面上に持ち直した。流通業では1から△1と大きな変化はないものの再び水面下に落ち込んだ。サービス業では11から6と5ポイントマイナス超過幅を拡大させた。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の10から15と5ポイント「黒字」超過幅を拡大させた。業種別でみると、製造業が△4から8と12ポイント「赤字」超過幅を縮小させて再び水面上に持ち直し、サービス業が20から30といずれも二桁「黒字」超過幅を拡大させた。一方、流通業では10から3と7ポイント「黒字」超過幅を縮小させた。建設業は9から10とほぼ横ばいで推移した。

前年同月比は前回の9から5と4ポイント「黒字」超過幅を縮小させた。業種別で見ると、流通業が7から△6と13ポイント「赤字」超過幅を拡大させた。サービス業は17から11と6ポイント「黒字」超過幅を縮小させた。建設業が△11から△9、製造業が14から16と大きな変化がなかった。3カ月後の次期見通しは前回の11から18と7ポイント「黒字」超過幅が拡大した。業種別でも同じ傾向が見られ、建設業が2から15と13ポイント、製造業が5から18と13ポイント、サービス業が21から26と5ポイント、いずれも「黒字」超過幅を拡大させた。流通業では8から9とほぼ横ばいで推移した。

経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 「過剰」超過幅が拡大

今月の状況は、前回調査の12から14と2ポイント「過剰」超過幅が拡大した。これは2期連続の傾向である。業種別でみると、製造業(12→19)が7ポイント「過剰」超過幅を拡大させた。「不足」と回答した割合は1割に留まった。前年同月比は前回の7から10と3ポイント超過幅を拡大させた。製造業(7→13)でも同じ傾向を示した。次期見通しは6から10と4ポイント「過剰」超過幅が拡大した。業種別では、製造業(6→16)が10ポイント二桁「過剰」超過幅を拡大させた。

【取引条件】 改善傾向の気配

前年同月比は△3から△2と水面下ながら5期連続の改善傾向がみられた。業種別でみると、製造業(△2→△1)・サービス業(△1→1)は大きな変化がないものの改善した。流通業(△4→△6)が悪化傾向を示した。建設業(△5→△5)は横ばいだった。次期見通しも、前回の△2から△1と僅かながら改善傾向を示した。業種別でみると、建設業(△9→△5)・サービス業(0→2)は改善傾向を示した。流通業(△2→△3)は大きな変化は見られないものの悪化した。製造業(△1→△1)は変化がなかった。

【資金繰り】 「窮屈」超過幅は拡大

今月の状況は、前回の△3から△8と5ポイント「窮屈」超過幅を拡大させた。業種別でみると、建設業(△4→△12)・製造業(0→△5)・流通業(△9→△13)・サービス業(△1→△4)と全業種で「窮屈」超過幅を拡大させた。次期見通しは、前回の△3から△9と「窮屈」超過幅を拡大させた。業種別で見ると、建設業(△2→△9)・製造業(0→△6)・流通業(△7→△16)が「窮屈」超過幅を拡大させた。サービス業(△3→△5)は、ほぼ横ばいながら「窮屈」超過幅を拡大させた。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足は大きな変化なし、稼働率は「上昇」を維持

設備過不足DI(今月の状況)は△6から△6と横ばいで推移した。業種別でみると、流通業(△5→△2)が「不足」超過幅を縮小させた。建設業(△10→△11)・製造業(3→2)が大きな変化がないものの「不足」超過幅を拡大させた。サービス業(△11→△11)では変化がなかった。次期見通しは前回△7から△6とほぼ横ばいながらも「不足」超過幅が縮小した。業種別では、建設業(△9→△12)が「不足」超過幅を拡大させた。製造業(△2→0)・サービス業(△11→△10)が「不足」超過幅を縮小させた。流通業(△3→△3)では横ばいで推移した。

施設稼働率DI(前年同月比)は、前回調査の18から11と7ポイント「低下」超過幅が拡大するものの水面上を維持した。水面上は2019年2月調査以来、前回に引き続き2回目である。業種別でみると、製造業(18→20)では更に「低下」超過幅が縮小した。次期見通しは、前回調査の10から4と6ポイント「低下」超過幅が拡大したものの、こちらも水面上を維持した。業種別にみると、製造業(10→7)がやや「低下」超過幅を拡大させる結果となった。

【雇用動向】 「不足」超過幅が拡大

今月の状況は、△20から△23と「不足」超過幅を拡大させた。業種別でみると、建設業(△32→△36)・流通業(△17→△24)・サービス業(△22→△25)といずれも「不足」超過幅を拡大させた。製造業(△9→△8)はほぼ横ばいで推移した。

次期見通しは△22から△25と「不足」超過幅を拡大させた。業種別にみると、建設業(△39→△42)・流通業(△16→△23)・サービス業(△23→△27)が「不足」超過幅を拡大させた。製造業(△14→△7)では業種別で唯一「不足」超過幅を縮小させた。

【価格変動】
仕入価格、顕著な「上昇」、販売価格もやや上がる

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の38から44と「上昇」超過幅が6ポイント拡大し、「上昇」と回答した割合は47%に及んだ。業種別でみると、建設業(65→67)が引き続き「上昇」超過幅を拡大させた。製造業(56→70)では14ポイントと大幅に「上昇」超過幅を拡大させた。その他、流通業(31→39)・サービス業(17→21)でも「上昇」超過幅を拡大させ、すべての業種で仕入価格が上昇した。

前年同月比では38から47と9ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(57→73)が16ポイント、流通業(33→44)が11ポイント、それぞれ二桁「上昇」超過幅を拡大させた。建設業(63→70)・サービス業(18→23)でも「上昇」超過幅を拡大させた。

次期見通しは、前回の34から42と「上昇」超過幅を8ポイント拡大させた。業種別でみると、製造業(47→64)が17ポイント大幅に「上昇」超過幅を拡大させた。その他、建設業(58→63)・流通業(30→37)・サービス業(16→21)も同じ傾向を示した。

販売価格変動DI(今月の状況)は、前回の7から14と7ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(8→19)が11ポイント二桁「低下」超過幅を縮小させた。建設業(13→20)・流通業(6→11)・サービス業(5→9)でも「低下」超過幅を縮小させる結果が出された。

前年同月比は前回の8から7ポイント「低下」超過幅が縮小し15となった。業種別でみると、製造業(6→20)では、「低下」超過幅が二桁縮小した。流通業(6→13)・サービス業(5→12)でも「低下」超過幅が縮小した。建設業(18→20)は大きな変化は見られないものの同じ傾向を示した。次期見通しは、9から14と5ポイント「低下」超過幅を縮小させた。業種別でみると、製造業(10→19)・流通業(8→11)・サービス業(5→10)が「低下」超過幅を縮小させた。建設業(18→19)はほぼ横ばいで推移した。

【借入金利】
製造業の短期金利「上昇」、低下傾向は建設の長期金利

短期借入金利DIは前回調査の1から1と変化がなかった。業種別でみると、製造業(0→5)では5ポイント金利が「上昇」した。建設業(1→△2)では「上昇」超過幅を縮小させた。流通業(1→0)・サービス業(0→1)が大きな変化が見られなかった。

長期借入金利DIは前回の6から4と「上昇」超過幅を縮小させた。業種別でみると、建設業(7→2)では5ポイント金利が「低下」した。流通業(8→6)・サービス業(5→3)が上昇」超過幅を縮小させた。製造業(4→4)は横ばいで推移した。

【経営上の力点など】
問題点は「仕入単価の上昇」、力点上位の「社員教育」が鍵

全業種でみた経営上の問題点は、「民間需要の停滞」(33%)・「仕入単価の上昇」(29%)・「従業員の不足」(29%)と続いた。今回調査では特に「仕入単価の上昇」が重要課題にあがってきた。そして2020年5月調査で、人手不足感が緩和したものの、再び「不足」超過幅が拡大してきたといえる。

業種別でみて特徴があったのは、建設業・製造業・流通業で「仕入単価の上昇」(45%・49%・32%)、サービス業で「従業員の不足」(33%)だった。今回の調査では建設業と製造業の仕入単価の上昇が特徴的であった。文書回答では「材料の仕入れ単価が急激に上昇し、以前に提出している見積と単価があわない。(建設業)」「自動車産業の半導体不足とコロナによるロックダウンから部品調達難。(製造業)」「昨年対比で3割近く燃料価格は上昇しており負担増。(流通業)」「雇用調整助成金に頼らない体質作りと、社内改善を進める。(サービス業)」という情報が寄せられた。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(59%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(53%)、第3位に「社員教育」(32%)とこれまでと同じトレンドだった。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●前回の5月調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは6→13と7ポイント上昇、次期(3カ月先)見通しも12→23と11ポイント増加し業種別では最大の上昇となりました。さらに売上高DI次期(3カ月先)見通しは△9→4と13ポイント上昇、経常利益DI次期(3カ月先)見通しは2→15と13ポイント上昇し、こちらも業種別では最大の上昇でした。仕入価格変動DIは65→67と2ポイント上昇(やや値上がり)し、次期(3カ月先)見通しも58→63と5ポイント上昇(値上がり予測)し、仕入れ価格は依然として高止まりしています。資金繰りDIは△4→△12と8ポイント下落(悪化)し、昨年の余裕感はなくなっています。雇用動向DIは△32→△36と4ポイント下落、次期(3カ月先)見通しは△39→△42と3ポイント下落し、人手不足が仕事の確保に影響を及ぼしています。材料価格の高騰だけでなく、材料不足も解消されていない状況ですので、仕事が遅延することによる資金繰りの悪化に注意する必要があります。(事務局 佐藤)

1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾

  • ウッドショックにより、資材の高騰が顕著になっている。人と会う機会が減って、新規開拓、顧客フォローが不十分となり、3カ月・半年先の数字が読みにくくなっている。ここに来て、コロナ禍のため、現場が止まり、打ち合わせが延期になった案件が増えてきている。リピート受注出来ている取引先の社長や、担当者様の高齢化が進み、引退や退職がここ数年に重なって来るのも課題である。
  • 飲食店の顧客が規模を縮小しており案件が激減してきている。賃貸案件も人流が無いため、縮小傾向にある。新規顧客と新規事業の強化を並行して行っているが、財務も強化が必要。コロナの世の中だけではなくアフターコロナでもそんなに変わらない世の中になりそうなので、今からでも新しい売り上げの確保をしていくことが急務になってきている。
  • 建設資材の高騰で先の物件の適正価格の判断が難しい。物件が少なくなる中、受注競争が激しく原価割れの工事でも請けなければならず、かなり厳しい状況が続くと予想している。

2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体

  • 毎年の事だが、気温が上昇するに伴って、人材(応援含む)が不足してくる。今年はRC造マンション新築が多い年。スクラップ単価上昇(中国の高額買いが原因)で、国内も便乗値上げで、製品単価に影響を及ぼしている。鋼材単価は現在から年内は上げ止まりを予想しているが、鉄骨の鋼材単価上昇が懸念されている関係で、来年以降はS造よりRC造が増えると予想している。

3.給排水管工事、電気工事、設備工事

  • コロナ前の計画が全て予想外になり、観光、ホテル業界は全く先が見えない。建築から30年以上のホテルは、今後出張、観光、インバウンドの減少が続くならば必要無くなるという統計が出ている。日本政府が何を次に考えるか次第で投資する基準が変わるため、対応出来る準備を続けていく。
  • 材料等の仕入れ単価が急激に上昇しており、以前に提出している見積りと単価が合わない。中には便乗値上げと思われるケースも多くある。またメイン顧客である自動車業界ではアジア圏の国で生産している部品が、ロックダウンによる生産停止の影響により工場の稼働停止が9月にあり、その影響で仕事量が急激に減少している。10月以降は現在の所どうなるか分からない状況。
  • 建築大型案件の減少による業界の価格競争が、電気工事の受注にも影響が出ている。併せて銅建値の高値推移と鋼材の値上げによる仕入れ価格の上昇、半導体不足による商品欠品の影響も注視しなければならない。一方携帯基地局工事は、5Gへの切替え工事が多く出ており、キャリアの偏りはあるものの忙しく、状況は良い。半導体の影響によりキャリアの無線機器の納期が不安定になっており、一部で工期に影響も出ている。
  • 制御部品の原価が上がっている。着工に必要な部品の中には長いと1年近く入ってこないものがある状況。太陽光発電の引き合いも増えていて、県外から相談があるが人手不足でやりきれない。

4.建築設計・不動産

  • 住宅関係は動いているが、店舗や商業施設、宿泊施設などは需要が減少している。木材だけでなく鋼材やボルトも不足しており、同じ業界でも格差が生まれている。また人手不足の影響も出ており、人手が足りないところは仕事をこなすことができない状況。
  • 鉄骨の入荷が遅れた影響でプロジェクトの進行が止まっている。ゼネコンに話を聞いてみると来年の仕事がなくなってくるという情報もある。建設費が上昇していることで着工にも時間が掛かり、採算が合わなくなる案件が増えるのではないか。
  • コロナ前から兆しはあったが、大型案件の受注が減っている。通信関係では一部の会社が設備投資を控えており、仕事がなくなっている状況。カーボンニュートラルを推進する関係で太陽光発電の引き合いが増えている。
(2)製造業

●業況判断DIでは、今月の状況が2→10と8ポイントの2期ぶりの改善、前年同月比は21→23と2ポイントの改善、次期見通しは11→17と5期連続で「良い」が上回る結果となりました。しかし、仕入価格変動DIは、今月の状況が56→70と前回から14ポイント、前年同月比が57→73と16ポイント、次期見通しでも47→64と17ポイント上昇し、この5年では高水準に達しています。また資金繰りDIでは、今月の状況が0→△5、次期見通しも0→△6とともに3期ぶりに「窮屈」が超過となりました。昨年のコロナ融資から1年が経過し、一部で返済が始まる影響とみられます。リモートワークが難しい製造業では、資材不足による仕入れ価格上昇や資金繰りの対応に併せて、社員の感染対策も行う必要があります。先行き不透明感が増す中で、あらゆる面での対策が求められます。(事務局 松井)

1.鉄鋼業、金属加工

  • 仕入れ値が昨年度から1.5倍の値上がりとなった。急激な値上がりで市況も冷え込み気味な業界もあり、値上げで顧客がついてきてくれているのか、離れてしまって販売が落ちているのかわかりにくい状況。
  • 半導体をはじめ、コロナによる海外ロックダウンの影響などで、生産の増減が激しい。材料の値上がりもあり在庫管理、生産管理に手を取られている。
  • 需要はほぼコロナ前くらいに戻ってきているが、半導体部品の不足や海外でのコロナ拡大の影響で生産計画が先伸ばしとなっていることで受注量が伸びない。
  • 材料価格の急上昇に販売価格の転嫁が追い付かない。

2.樹脂加工

  • 一部ラインストップの影響で8~9月は生産数ゼロの部品も出ており、この期間の自動車関連売上げは大きく落ち込む。一方で、挽回計画に対して対応の能力調査も受けている。
  • 海外のコロナ感染拡大によるサプライチェーンの影響で自動車関連の減産予定がある。

3.機械部品・機械製造

  • 中国が設備投資をけん引しているが、日系企業及び日本国内でも設備計画の話が増えている。日本国内の顧客も仕事量が増えているところが多い。
  • 資材の入手困難、価格の高騰に伴い工程が遅延する。確保した業者を遊ばせないよう、対応が難しい。
  • 半導体の不足感がで、非常に先々の景気動向が分からない。カーボンニュートラルで仕入れ等に出る影響が分からず不安を感じている。
  • 9月から11月にかけて、東南アジア諸国のロックダウンの影響で、ハーネス関係や半導体の製品が供給不足になる。そのため、得意先各社がラインストップで売上げが大幅減少し、業績も大幅に悪化する予定。対応策を検討し、売上が戻った時に業績をさらに向上させる計画を立てて9月から実施。

4.木材・木製品製造業(家具を除く)

  • ウッドショックは若干落ち着いたものの、価格は高値に張り付いている。需要はそれほど活況でもなく、すべてを価格転嫁するのは困難。コロナが終息するにしたがって、今度は住宅業界の業績不振先の信用不安が広がることが懸念される。
  • 加工用の仕入(木材)確保難と仕入価格上昇。商社も輸入できてなく、在庫の売先を選別している。

5.印刷・包装関連

  • コロナ禍はまだ落ち着くことはなさそうだが、今こそ次世代の仕事づくりに真剣に取り組む時と感じる。
  • 昨年の何が何でも中止というところから比べれば好転してるが、一昨年と比べるとまだほど遠い。この一年半でテレワークやオンライン等が進み紙離れが進んでいる。
  • 同業者から聞く話は廃業や縮小の話、今後どうなるのかというという不安な言葉ばかり。この数か月、周りの同業者も含め仕事の動きが止まっていると感じる。

6.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • 外食産業の仕事がとても少なく、その業界が我々のところに来て競争が激化している。
  • アパレル業界は、秋冬にワクチン接種で収束を見込んだ仕入れをしてきたが、感染拡大で大きな差が出た。昨年より借入れ条件の厳しさが予想され、在庫を抱えた倒産が多数出るのではとの見方が大きい。
  • 業界7割は昨年から変わっていない。どこでもできるような通常の仕事は、価格競争が激化している。来年以降は動き出す話が多いが、まだ4~5カ月先の話である。

7.その他製造業

  • 昨年に引き続き、新型コロナによるイベントのキャンセルまたは延期で影響が大きい。
  • コロナ禍で自社製品が室内インテリアとしての需要が増し、売上げアッブに繋がった。
(3)流通業

●2020年は新型コロナウイルス感染症により経済が停滞し、比較対象にならないため、その1年前の2019年8月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは13→△3と大幅に16ポイント減少(悪化)となりました。また、前回の2021年5月調査の結果と比較して2021年8月期の業況判断DIの「今月の状況」を見ると、他の業種(建設業・製造業・サービス業)は若干改善されたものの、流通業だけが3→△3と6ポイント減少(悪化)しており、流通業だけがマイナス圏に入りました。経常利益DIも10→3と7ポイント減少(赤字)し、資金繰りDIは△9→△13(窮屈)となりました。依然として、先行き不透明の厳しい経済動向が続いています。(事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 半導体不足の影響が空調機器や、FA関連の商品にも波及している。一説には、日本に売るより、他国に売る方が高く売れるから、日本が品不足になっているとか。
  • 短期的には東南アジアのコロナ感染と半導体不足により、自動車の生産ができず、T自動車の9月の生産は4割減となった。10月から挽回生産を行うとのことだが、コロナの勢いや半導体供給の状況は改善される様子がないため、挽回がすぐに可能になるとは思えない。自動車が動かなければ、その周りの産業も止まるためその影響が心配。また、ロボット、半導体製造装置の需要も急増しているが、そのための部材である減速機や直動部品の供給が追いつかず、納期調整に苦労するだけでなく、在庫の積み増しが資金繰りを圧迫するという苦しい経営を強いられる。

2.建築資材

  • 需要停滞の状況下において原材料の値上げが頻発している。
  • コロナとウッドショックにより、物件が大幅減少。業界自体は少しずつ回復傾向にあるみたいだが、当社にはまだその実感が無い。

3.繊維、衣服、雑貨

  • ガソリンスタンドですが、公共工事についてお客様の話を聞くと、計画的に予算がついているので直近では減っている感じはしないが、長雨による進捗遅れで仕事が停滞したり、外出しないので民間の需要が減っている様子。
  • 夏物の処分期に長雨による影響が出ていたり、東南アジアがコロナの影響で秋冬物の納期に遅れが生じたり、明るい材料がない状況になっている。
  • 半導体不足により新車の納期が遅れ、中古車の仕入れ値が高騰している。
  • 昨年はコロナ融資や補助金関係によって金余りも一部感じていたが、長期戦となり、いつまで続くか分からない不安から趣向品の購入を抑える方が一般的に増えた印象がある。

4.飲食料品

  • 緊急事態宣言の再発令で、宅配は昨年並みに需要増。年末に向けて、輸入品を中心に仕入れ価が上昇。店舗は価格競争が激化傾向に。
  • コロナの影響というより、昨冬の鳥インフルエンザの影響をまともに受けている。そして、コロナ前からの資金難に拍車がかかっている。
  • 地球温暖化による世界的な異常気象による被害が年々大きくなっている。特に夏の集中豪雨による土砂災害は来年もさらに大きな被害を我々にもたらすことが予想される。過去、夏場は販売の最盛期だった商品でさえも夏に売れなくなる傾向が今後も続くと思われる。

5.運輸、情報通信

  • 消費関連のお客様はEC以外、総じて不況が継続。そのような中で、昨年比で3割近く燃料価格は上昇しており負担増。国内元売りは寡占化しており、原油価格と連動しない価格誘導と感じる。
  • コロナが始まり、タクシー業界はかなりの影響を受け続けている。緊急事態宣言などが発令されるとすぐに売り上げに影響が出る。名古屋でもコロナの影響によるタクシー会社の廃業・事業譲渡が今年に入り3社でている。売り上げは平均するとコロナ前の5割~6割程が続いている状況。

6.保険、不動産

  • 保険代理店(ディーラー)において、代表者が高齢で後継がいない場合や売上が少ない代理店は保険会社(メーカー)から肩を叩かれ、統廃合が進んでいる。
  • 住宅を建てたいとお考えのお客様でも、住宅ローンが組めないお客様が増えてきている。感覚的に昨年までだったら組めたであろうというお客様なので、金融機関の審査が厳しくなっているように感じる。
(4)サービス業

●今回の業況判断DIは13→20、経常利益DI20→30との結果でした。数字上は、比較的大きく回復しましたが、実感とは異なるのではないでしょうか。前回調査時(5/17~27)は、緊急事態宣言下だったのに対して、今回は調査時(8/23~31)終盤に緊急事態宣言が発出された為、宣言前のいわば「駆け込み需要」など、回答がやや上振れしていることは否めません。その為か、次期(3カ月先)見通しの売上高DIは、11→6と約半減しました。

三業種毎に見ると、業況判断DIが、専門サービス業31→38、対個人サービス業△6→0、対事業所サービス業9→17。経常利益DIが、専門43→55、対個人2→7、対事業所4→19と、いずれも向上しています。ただ、業種毎に隔たりが大きく、更に飲食・観光事業者に絞ると、業況判断DIは△56、経常利益DIは△46と、底値からは脱却したものの、コロナ禍以前への回復には程遠い状況です。

経営上の問題点は、「民間需要の停滞」が29%、「取引先の減少」が25%と、コロナ禍以前には戻っていないものの、順調に下降しているのに対し、「仕入単価の上昇」「人件費の増加」「金利負担の増加」「従業員の不足」「仕入先からの値上要請」が、それぞれ7%、27%、3%、34%、4%と上昇し、特に「金利負担の増加」「仕入先からの値上要請」は、約10年ぶりとなる高値を記録。

経営上の力点は、「新規事業の展開」が25%と下降線を描いているのに対し、「人材確保」「社員教育」がそれぞれ30%、31%と、コロナ禍で大きく落ちた5月調査時より、上昇を続けています。

文書回答でも、上記を指し示す回答が散見され、フォーカスされる飲食・観光業の苦境が紛れもなく続いている一方、好調な業態も従業員の不足や人件費の増加といった問題が出始めていること。全体的な経済活動はやや回復に向かっているものの、仕入単価の上昇やコロナ融資への返済開始と、新たな不安要因が生じていることを表しています。短期的な景気の動向に左右されず、情勢への着目と基本的な企業づくりに並行して取り組むことが、「必要とされ続ける企業」への第一歩です。(事務局 橋田)

1.飲食

  • 緊急事態宣言の発出などに伴う休業で、営業が行えていない。協力金の入金が遅れていて、資金繰りが窮屈。

2.福祉(介護)

  • 介護需要は一定の伸びが見られるものの、業種自体が不人気のため、人材確保に苦慮している。売上自体は安定しているものの、人材募集のコストの捻出が厳しい。
  • コロナ禍で収益増加が見込めない中、売上に影響の少ない福祉分野への新規参入が増加。その結果、過当競争になっているが、不慣れな業者が増えることで顧客の利益に繋がっていないと感じる。

3.広告・印刷

  • コロナ禍の影響が昨年度より出てきている。特にアパレルや食品関係の顧客の広告費削減が大きい。
  • コロナ禍でのネットの重要性から、ホームページのリニューアルが盛んで、Webマーケティングの関心が強い。ソフト面での人材強化が課題。
  • 助成金や補助金を活用したホームページ制作などの案件が増加。ただし、一過性のものとは認識している。深刻なのは、飲食店などコロナの影響を受けた業種からの依頼が激減していること。しかし、異業種からの飲食業への参入は続いており、新規参入者は今が認知を上げる機会と広告を展開している。

4.生活サービス

  • 業界ではほとんどの企業が赤字決算。規模が大きいところほど赤字幅も大きく、M&Aや廃業も増えており、非常に厳しい状況。
  • 既存顧客で経営が持っている面があるが、新規顧客が少ないので、長い目で見ると不安。
  • 契約の見直しや人材の確保に苦戦している中、更に最低賃金が上昇する難しさがある。

5.専門

  • ウッドショックに続き、鋼材の値上がりや調達難で、予算と工事費が合わず、設計変更など順調に仕事が進まない状況が続いている。あまり長く続くようだと売上にも影響する。また、人手があれば売上を上げることもできるが、その確保が難しく、ボトルネックになっている。
  • コロナ禍に伴う制度融資などにより、中小企業の資金繰りは一定の安定はしているが、現状に安心してしまい、事業計画の策定など将来に対して準備する事業者が少ない。徐々に返済が始まると、一気に資金繰りが詰まってしまう状況を心配している。
  • 業界内で、同業者など横の繋がりから、顧客の紹介を受けることが多くなっている。従業員を雇用して社業を発展させるというより、社内体制を変えずに既存の顧客を守る方向なのかと思われる。