同友会らしい「共育」の実践
馬場 愼一郎氏 データライン(株)
第17期役員研修大学第5講座、馬場愼一郎氏の報告を紹介します。
共育に公式はない
指針・採用・共育と並べて「三位一体の経営」といわれますが、中でも共育は他の2つと比べて、より同友会理念の根本に近いものだと思います。また共育は、各社がそれなりにやっているつもりで自己満足に陥りやすいものだといえます。
例えば、共育の実践報告を聞いてその具体例を真似してみても、必ずしも皆さんの会社でうまくいくとは限りません。なぜなら、会社が抱える事情は千差万別であり、共育には「こうしたら良くなる」という公式はないからです。
個々の実践事例を単純に取り入れるだけでは、社員を働かせるためのテクニックになりかねません。その実践は報告者の会社にとってどんな意味があり、それを自社で成立させるにはどうしたらいいかなどを自問自答することが大切です。共育には公式がないからこそ、実践報告から学び方を学ぶことによって自分の考え方の幅を広げ、自社にとって一番いい方法を見つけ出してほしいと思います。
共育をする目的とは
会社は利益を得ることで成り立っています。では、社員は利益を得るための手段なのでしょうか。「主体的に動く自立型社員になってほしい」といいますが、そんな自立型社員に我々は何をしてほしいのか。ひょっとしてそれは、経営者の甘えであるのかもしれません。
経営の目的は人により様々ですが、「人間尊重の経営」を目指す同友会会員は、社員が成長しながらいきいきと働ける場をつくること、つまり「共に育つ」そのものが経営の目的といえるのです。
よく、理想的な組織の形として童謡「すずめの学校」と「めだかの学校」が比較されます。一見、「誰が生徒か先生か」わからないめだかの学校のほうが民主的でいい組織と感じますが、会社の経営状態によっては「ムチ(指揮棒)を振り振り」指導するすずめの学校のほうが良い場合もあります。共育のためには教育も必要かもしれません。
「共に育つ」ために、経営者は社員にどんな「場」を作るべきなのか。また、その「場」に経営者はどういう立ち位置で参加すべきなのか。改めて自問自答していく必要があります。