憲法を運用する時代へ
~日本国憲法の誕生から歴史・理念を学ぶ
森 英樹氏 名古屋大学・名誉教授
天皇主権から国民主権へ
政策委員会主催の「平和を考える連続学習会」の第5講が、全体で25名の参加で開催されました。
「日本国憲法~その理念・内容・構造」をテーマに行われた今回は、報告者に森英樹氏(名古屋大学・名誉教授)を迎え、日本国憲法(以下、新憲法)誕生の歴史的経緯と背景、新憲法の基本的理念と骨格、さらに、新憲法から「平和」をどう考えるかについて、体系的に報告をいただきました。
氏は冒頭、今回のテーマである新憲法と、それ以前の大日本帝国憲法(いわゆる明治憲法)との最大の原理的違いを、天皇主権から国民主権への転換にあると指摘。しかし公布当日の国民は祝賀大会で「新憲法万歳」ではなく「天皇陛下万歳」を叫んでおり、これを見た「憲政の神様」尾崎行雄は「独立の頭で憲法を運用できるようになるのには3代はかかる」と指摘していたと紹介。昨年、戦後70年を迎えた節目に新憲法を巡った国民的議論が地の底から起こり、真正面から平和の問題が問われたことを「公布70年にして、『独立の頭』で『憲法を運用』する時代のきざし」と強調しました。
人間の普遍的欲求は平和にある
新憲法の誕生を巡っては、現在に至るまでさまざまな論争が行われています。そうしたなか、氏は新憲法誕生に際しての当事者を、GHQの存在、日本の支配層、日本の民衆に整理しつつ、現在の「押しつけられた憲法」の認識に対して、「『押しつけた』のは世界史の民主的憲法の奔流」であり「『押しつけられた』のは日本の統治層」であったことを、歴史的事実から明らかにしました。
その上で、つくられた憲法を活かすのは、国民一人一人の自覚にかかっていること。現在大きく議論されている安全保障問題と新憲法については、他国から攻められることは絶対にないと言い切れないなかにあること。そして、戦争放棄・戦力放棄・交戦権の放棄を決心した新憲法に照らして、外交をはじめとする「攻められない」ための前提を満たす努力が、私たちに求められていることが強調されました。
最後に豊田副代表理事より「人権尊重や人間尊重が盛んに求められるなかで、人間の普遍的欲求は平和にある。その平和を実現し続けるために、国民の圧倒的多数が生きる中小企業として現実的議論を積み上げていこう」と学習会のまとめがされました。