活動報告

人を生かす経営を学ぶ総合学習会 第2回(8月27日)

働き方改革と中小企業経営

松丸 和夫氏  中央大学経済学部教授

働き方改革関連法の概要と要点を学ぶ

関連法施行に向けて

働き方改革関連法が成立し来年4月から施行されようとする中、中小企業経営者にとっては、社員が生き甲斐を持って働き、かつ生産性を高めていくにはどうすべきかが喫緊の課題となっています。今回の学習会では中央大学教授の松丸和夫氏に同法の概要と、経営者が理解し対応すべきポイントをお話しいただきました。

働き方改革関連法は、① 雇用対策法の見直し、②時間外/休日労働の罰則付き上限規制、③勤務間インターバル、④高度プロフェッショナル、フレックスタイム、⑤年次有給休暇、⑥産業医・産業保健機能、⑦均等・均衡待遇(パート・有期労働法に改正)という広範囲な法改正や新法から成り立っています。中小企業には一部(②・⑦)において猶予期間もありますが、来年4月の施行に向けてしっかり対応しなければなりません。

中小企業の多くは社員が自分の裁量で働くことが日常化しており、社員の抱えている仕事を把握、管理できていないことが一番の課題です。社員が自主的に残業するので裁量労働制にしている、という受け身ではなく、経営者が社員に対し、どのように働いてもらうのかという姿勢をはっきりさせなければ責任逃れになります。「何を仕事にするのか」を経営者が意識せず、惰性で続けている限り効率化も生産性の向上もありません。

自社変革への契機に

グループ討論では、「下請け企業が残業時間削減のため社員を早く帰らせるとなれば、1人親方を現場に入れて繋ぐしかないが、その1人親方の働き方はどうなるのか。元請け大企業の仕事の出し方を規制するなどの対策が必要で、全体を見渡しての改革なのかが疑問」「トヨタのジャストインタイムでは1日8回納入しなければならないが、採用難という厳しい現状がある。また、この改革による大企業の合理化のしわ寄せを被らざるを得ない。国も行政も、この改革を中小企業の目線でとらえているのか」と懸念が示されました。

松丸氏は「生産性の向上は単に効率性の問題ではなく、いかに付加価値を上げていくかです。この関連法を追い風にして、社員が働き甲斐と将来展望が持てる職場に自社を変革していくことが、本来の働き方改革です。企業努力だけでなく政治的責任も果たされるよう、社会的な広がりを持った取り組みを同友会に期待します」と結びました。