活動報告

障害者自立応援委員会「共に働き、共に育つ」(6月11日)

社員が生き生きと働くには

佐野 和子氏  (有)佐野花火店

全国から花火が集まる配送センター

理念が入社の動機に

6月の障害者自立応援委員会では佐野花火店の佐野和子氏に報告いただきました。

同社は、終戦後に佐野氏の祖父が花火の商売を始めた会社です。祖父は足が不自由で、体の不自由な人が身近にいることは当たり前だったといいます。また父も、誰にでも差別なく面倒見のよい人で、佐野氏が入社した30年前から、障害のある人の就労体験を受け入れていました。

今は、精神障害のあるS氏が働いています。4年前に会社に見学に来て、経営理念の「私たちは互いに健康に気を遣い、互いを尊重し合います」という言葉に感銘を受け、働きたいとの希望があったといいます。佐野氏は、「面倒かな」「何とかなるかな」の2つの思いが揺れる中でトライアル雇用に踏み切ります。

S氏は地元で一番優秀な高校でいじめられ、逃げるように入った遠方の大学でもいじめられ、精神を病んでしまったといいます。佐野氏は彼の居場所をつくろうと決心しますが、この時の失敗は、社員に相談せず始めたことでした。

つまずきを次のチャンスに

平均年齢40歳の女性3人の部署に、42歳で身長183センチ、体重100キロの男性が突然、配置されました。女性特有のテンポの良い会話が交わされる中で、1つの話題を掘り下げたいS氏との関係は、次第にぎくしゃくしていきました。

その頃、世間で精神障害者による事件が起き、不安を募らせた社員から不満をぶつけられた佐野氏は部署全員で話し合うことにしました。社員が正直に不安な気持ちを話す間、S氏はうつむいて黙って聞いていましたが、しばらくして、佐野氏が勧める「配送センター」への配置転換を承諾してくれました。

配送センターには全国から数多くの花火が集まります。力のいる棚出しや並べの仕事は、体力のあるS氏だからこそできることがたくさんありました。本人からの希望ではない異動でしたが、周りからあてにされるようになり、S氏の意欲につながりました。佐野氏は、その人の良さを見つけ少し後押しする、少しずつ自信が持てる、それが大切なのだと実感したそうです。

「人はみな、親から受け継いだ命を生きている。必然ともいえる出会いの中で、笑って生きて働いてほしい。互いを罵り合うのではなく、尊重し合える会社にしたい」と佐野氏は締めくくりました。