活動報告

第22回女性経営者全国交流会 in ひろしま(6月13日~14日)

【第1分科会】次代に輝く女性経営者のあり方
~地域に生きる女性として、地域と共に歩む

越野 裕子氏  (株)yu ko-ne

99人が参加した第1分科会

6月13日~14日に広島で開催された第22回女性経営者全国交流会で、第1分科会の報告者としてyu ko-neの越野裕子氏が登壇しました。以下に報告概要を紹介します。

起業に至った経緯

分科会で報告する越野裕子氏

私は愛知県一宮市でイタリアンビュッフェの飲食店を営んでいます。

今の店は、以前は夫の父親が経営していましたが、経営は苦しく、会社は倒産、義父は自己破産し、店を手放すことになりました。その時、銀行から「息子夫婦でやり直さないか」と提案がありました。子供との時間が取れなくなると悩みましたが、他人に渡ったその店が繁盛していたらきっと後悔すると思い、店を買い取ってスタートしました。

同友会に入会して

店を始めて3年目に、同友会に入会しました。同友会で「越野さん、いつまで接客やってるの」と言われました。私は「飲食店だもの、接客の何がいけないの」と反論しましたが、「越野さんはまだ経営者じゃないね」と言われ、その時から「経営者とは何か」を考え始めました。

また、「越野さんのお店のスタッフは、越野さんの借金を返すために働いているの」と言われたこともありました。とても悔しく、そこから自分の気持ちが変わり、経営指針の作成にも取り組みました。

昨年、例会で「時間の使い方は命の使い方」という報告を聞きました。仕事だけに必死になっていた私には何のことか分かりませんでしたが、店を始めてから初めて息子の野球の試合を見に行き、「母としての満足感」を味わいました。母であってはいけない、社長でなければいけない、と思い続けてきた私にとって初めて「命の使い方」の意味が分かりました。母として頑張ることで仕事ももっと頑張れる、と気付きました。

地域と共に

同友会の繋がりから「うきうきチーズケーキ」が生まれました。娘のために焼いていたチーズケーキを会員の誕生日に持って行ったところ、販売することを勧められました。地元の卵を使うことで「いちのみや食ブランド」に認定され、地元のイベントで販売する機会も増えて、地域との繋がりも深まりました。仕事ばかりで地域や学校の行事に参加できず、肩身の狭い思いをしてきましたが、地域の皆さんが私を認めてくださいました。

それがきっかけで、ママ友から「お店を借りて教室をやりたい」と相談があり、2階席をお貸しすることになりました。会場費は頂かず、参加者からケーキとドリンクをご注文いただくことで、主催者は固定費を気にせずに済み、参加者は1人でも気軽に参加でき、私も店を知ってもらえるので、さまざまな教室やワークショップが開催されるようになりました。

もう1つ、「地域若者サポートステーション(サポステ)」があります。ここに登録すると、若者が実習に来ます。スタッフは反対しましたが、一度社会に出てそこで躓いた若者が次の大きな一歩を踏み出すための体験であることを説明したら、スタッフの姿勢が変わり、実習を終えた後もアルバイトとして続ける若者が増えました。

彼らの中には、笑顔が上手に作れなくても店のポップを描くことは得意な子がいます。会話が苦手でもピザを上手に焼ける子もいます。摂食障害があってもデザートのメニューを考えることは好きな子もいます。

先ほどのチーズケーキですが、私はどのイベントでもホールかカットで販売していたのでなかなか売れませんでしたが、サポステから来た1人から「スティックにしたら」と提案があり、半信半疑で出してみたところ、それまでの何倍も売れました。店の飾りも評判がよく、「輝けない人はいない」と改めて思います。できないと決めつけるのではなく、その人のいいところを探すことが経営者の仕事だと思います。

「中小企業経営者として何ができるか」をグループ討論

新たな挑戦として

今いちばん力を入れていることが「ROOKIES」という職親の会で、児童養護施設を出た子を雇用する企業として登録しています。団体設立の新聞記事を見てすぐに登録し、昨年末に初めて1人を採用しました。店のスタッフとして接しないといけないのですが、その前に、この子が自分の収入で生活できるようにサポートし、母親代わりになって支え、この子が安心できるようにたくさんの愛情を注ごう、と思いました。

私は、自分の子育ての経験から、一緒の時間を過ごせば分かり合えると信じていますので、少しでも長く一緒の時間を過ごそうと、買い物や子供の送迎に誘いました。ある日、その子が「誕生日にケーキを焼いてほしい」とお願いに来ました。私に心を開いてくれた瞬間でした。

感謝と笑顔で一生懸命に

私の10年ビジョンは「みんなからもらえる『ありがとう』で自分の存在価値を作る」です。東日本大震災をきっかけにボランティアをしたいと考えるようになりました。自分と同じ立場のお母さんがどんな思いでいるのだろうと思うと、小さな子供が3人いてお金もなく、何もできない自分が本当に悔しく、だから、まずは自分が時間にもお金にも、心にもしっかりと余裕をつくって、それから人に貢献したいと思いました。

そして、感謝の気持ちを大事にしたいと思います。「感謝」の反対は「当たり前」です。当たり前に思っていることが無くなった時に初めて、当たり前ではなかったことに気付きます。朝起きて体が動くこと、仕事ができること、帰る家があることにも、1つひとつ感謝の気持ちを持ちたいと思います。

今日のテーマ「輝く女性経営者の生き方」ですが、私の中では「自分らしく」がいちばんだと思います。私は好きだから地域貢献をやっています。できることを1つずつやっていけばいいと思います。大切なことは貢献度の大小ではなく「思い」です。自分がやりたいことをやることで、輝く経営者にもなれるのではないか、と思います。

もう1つは、「一笑懸命(いっしょうけんめい)」。人は一生懸命になると笑顔が消え、一生懸命な顔になります。経営をしていると苦しいことや、つらいこともあります。そういう時に笑顔でいられる経営者こそ輝けると思います。これから大変な時こそ「一笑懸命」笑っていきましょう。

2日目は第1分科会で座長を務めた佐野和子氏より、分科会の概要が報告された

【文責 事務局・井上一馬】