活動報告

新入社員歓迎特集

新型コロナウイルス感染症の拡大により、合同入社式や新入社員共育研修が開催できませんでした。そこで、合同入社式の記念講演が予定されていた浜木綿の林永芳氏、新入社員研修の「先輩社員から学ぶ」講座で報告予定だった斎藤達也氏から講演内容や励ましのメッセージを寄せて頂きました。また、号外作成にあたって、教育学者の植田健男氏より「生きる」「学ぶ」「働く」ことについて寄稿をいただきました。新社会人になる皆さんにエールをおくります。

合同入社式・記念講演
「あなたの物語の幕が上がる」

林 永芳氏

林 永芳氏  (株)浜木綿代表取締役

一生のうちで10万時間働く

皆さんが抱く社会人のイメージはどういったものですか。社会人になれば、お金を稼ぐために仕方なく働くと感じている方もいると思います。

今から50年間働くとして、一生のうち、働く時間は10万時間となります。これをどう考えるかによって、働き方が大きく変わってきます。働く時間が「自由がなく拘束される」というイメージであれば、それは苦痛でしかないでしょう。

働く時間は10万時間

仕事の意味と価値

仕事を楽しむためにはポイントが3つあります。1つ目は、仕事に意味と価値を感じることです。

皆さんの身の回りを見渡してみてください。何1つとして、自分で作ったものはありません。誰かが作っているから、生活が成り立っていることがわかります。

このように、お互いの仕事を通して、周りのみんなや社会からあてにされている、こんな考え方をしてみると、自分の仕事に意味と価値を見出せるのではないでしょうか。

「労働」から「仕事」に

2つ目は、「労働」ではなく「仕事」をすることです。仕事とは何でしょうか。仕事とは、日々出てくる課題を解決することです。当社で例えれば、原価を1パーセント下げるために考え、行動すること、それが仕事です。

労働とは、自社でいえば過去のデータを調べたり、野菜のグラム数を計ったり、仕入れ先を見直すなど個々の事務作業なのです。原価を1パーセント下げるという目的が明確になってこそ、1つひとつの労働は、価値のある仕事になるのです。

また組織とは、「目標を達成するためにつくられた分業の仕組み」です。例えば、浜木綿では、「楽しく食事をしていただく」という目的の実現を目指して、全社員がそれぞれの役割を果たしながら、会社が一体となって運営されているのです。

自主的・主体的に

3つ目は、自主的、主体的に考えていくことです。「就社」するのか「就職」するのかの違いはありますが、大切なことは、会社側に選ばれただけでなく、「自分で選んで入社を決めた」ということです。

皆さんはやりたいことを思い描いているからこそ、中小企業で働くことを決めたのではないでしょうか。

自分の関わり方次第で会社を変えていける、そういう思いを持って入社してくれたと思います。物語の主人公はあなたです。そういう意味で、主体的に生きてほしいと思うのです。

仕事を楽しむ

自責と他責

また、自責・他責という考え方がありますが、自責で考えることが成長の源です。他人のミスで叱られた時、人のせいにして終わるのでは、何も事態は変わりません。

そればかりか、人間関係も悪化し、何よりも自ら成長するチャンスを失うことになります。当事者意識こそが、自分自身の能力向上に繋がるのです。

経営者にとってもゴールを意識することは難しいことですが、これほど重要なことはありません。意識的に適度な目標を掲げることで、人は自ら行動し、成果を出そうとします。

理念で現実は変わる

夢・希望・理念・目標・ライフワーク、これらすべてが現実を変えるツールです。今から150年くらい前には奴隷制度は当たり前で、人間はみな平等という認識はありませんでした。しかし、それをおかしいと考えた人たちが、「自由と平等」という理念を掲げ、社会問題として取り組み始め、実現しました。

今では考えられないことですが、その時代には自由も平等も当たり前ではなかったので、それが理念や目標となり、世の中を変えてきたという歴史があります。

もう幕はあがっています。あなたの物語

強く・したたかに、そして元気よく

こうしたいと目標を描くこと、これは個人でも同じです。ゴールを設定し、そのための目標を立てていくと日常の行動が変わります。日々の課題を解決しながら仕事を行う、社員が今はできないことができるようになる、そのことが私たち経営者の最高の喜びなのです。

皆さんの社会人として働く時代は、不安定で不確実、複雑で不明確です。ですが、皆さんの会社の社長と同様に私も、強く・したたかに、そして元気に楽しく働いていただきたいと願っています。

今一度、これから働く10万時間をどのように使うのかを考えてみてください。あなたの物語の幕は、もう上がっているのです。

(文責 事務局・下脇)

教育学者からのメッセージ
「社会人として働き始める皆さんへ~「学ぶこと」の意味を考える」

植田 健男氏

植田 健男  花園大学教授(名古屋大学名誉教授)

「学ぶこと」は卒業?

新入社員の皆さん、ご入社おめでとうございます。これで晴れて社会人になられて働き始められるのですね。心よりお祝い申し上げます。

ところで、ひょっとして、やっとこれで学校とはおさらばして「学ぶこと」はあまり必要がなくなった、とお思いではありませんか。

確かに、これまでのような学校での「勉強」とはおさらばすることになるとしても、同友会会員企業に入った以上は、これまでとは違った、もっともっと大切な本当の意味で「学ぶこと」が問われるようになるだろうと思います。

「学ぶこと」≠「勉強」

今、「えっ、マジで?」と思ったあなたにこそ、お伝えしたいことがあります。学校での「勉強」では、知識や技術は身に付けたとしても、覚えればそれで済んでしまい、その意味を考えたり、まして、それを使って何かを創り出すことは求められなかったのではありませんか。

さらに、もっと大事なことは、それをもとにしてより良い人間らしい生き方を実現していくこと、自分らしく「生きること」とは、全く結びつけられてこなかったのではないでしょうか。

また、私たちは、何のためにどうして働くのか、つまり「働くこと」の意味と、人間らしく「生きること」の意味とを、しっかりと繋げられるようなかたちで「学ぶこと」を体験してきたでしょうか。

残念ながら、多くの人の答えは「ノー」ではないでしょうか。それはどうしてなのか。どういうことなのか。これは一度、じっくり考えてみるだけの価値がある「問い」だと思います。

少なくともこれからは、「学ぶこと」と、これまで経験してきた学校での「勉強」とを区別して考えてみませんか。

人間らしく生きる

本来、「学ぶこと」は皆さんが「人間らしく生きていくこと」と分けては考えられないものだし、いつまでも学校に行き続ける人はいないので、やがてそれは「働くこと」のなかで実現されていくようになるのです。

同友会の基本理念である『人間尊重』は、こんなところでも生きているのですね。「働くこと」を通して、人間らしく「生きること」、本当に「学ぶこと」とはどういうことなのかが見えてきたら、これからの人生がもっと豊かに開けてきそうですね。

【プロフィール】

京都大学大学院教育学専攻修了後、1984年より名古屋大学教育学部に奉職し、以降、名古屋大学付属中学校・高等学校校長等を務める。2019年4月より花園大学福祉学部教授となり、現在に至る。名古屋大学名誉教授。
専門は教育経営学・教育法学。愛知同友会では共育委員会のアドバイザー等を務めた。

先輩からお祝いの言葉
「仕事に喜びとやりがいを」

齊藤 達也氏

齊藤 達也  (株)アーティストリー

不安を成長に繋げて

私はアーティストリーに入社して4年目になります。弊社は主に商業施設に向けたオーダー家具、木製品の製造を行っており、私は今、5軸CNCという木材切削機械のオペレーターをしています。

入社してすぐは家具を製造する職人として、自分の手でつくることにやりがいを感じていました。その後、オペレーターになって、他の職人の仕事の一部を担うという役割に変わりました。

当初は「お手伝い」という感覚でいたために、自分の中で職人の時に比べ、責任感ややりがいが小さくなってしまいました。

しかし、加工がうまくできると職人から感謝され、それに喜びを感じるようになりました。今では3D加工など難しい作業もできるようになり、その分プレッシャーも大きいですが、責任感とやりがいを強く感じています。

新入社員の皆さんは、最初は慣れない仕事に不安やプレッシャーを感じることもあると思います。しかし、続けていくうちに、仕事の中での喜びとやりがいを見つけ出すことでしょう。新社会人の皆さんが、それぞれの場で活躍されることを心よりお祈りしています。