活動報告

人を生かす経営推進部門&共同求人委員会「若者から選ばれる企業になろう」(12月2日)

共同求人活動に参加して、わが社はどう変わったか

【パネリスト】
丹羽 昭夫氏  (有)宝製作所
鵜飼 英一氏  (株)エバーグリーン
社本 滋美氏  (株)メイゴ

【コーディネーター】
吉田 幸隆氏  エバー(株)

3社それぞれの新卒採用と会社の変化を語る

人を生かす経営推進部門と共同求人委員会の共催で学習会を開催し、40名が参加しました。

コロナ禍で今後の求人活動をどうするのか悩む企業も多いなか、「国民や地域と共に歩む中小企業」という同友会理念から見ると、雇用することが一番の地域貢献であり、企業の変革にもつながります。そうすることで、若者から選ばれる企業になれるきっかけになるかもしれません。共同求人に参加して会社を変革してきたパネリスト3氏から、自身、社員、会社の変化と今後の展望を報告いただきました。その概要を紹介します。

「共同求人活動」になぜ参加したか

将来への大きな不安

【丹羽】 自社はゴム成型金型の製作や金属部品加工を行っています。共同求人活動に参加したのは、リーマンショックの頃です。当時は共育委員会で活動をしていて、新入社員共育研修などに携わるなかで、自社でも一緒に育っていく社員を採用したいと思っていました。それまでは、ハローワークや折込みチラシなどの場当たり的な採用で、経営理念などの説明もありません。そのため、入退社が繰り返されるような会社でした。そしてなにより社員の高齢化が進み、将来への大きな不安がありました。共同求人活動に参加することで、社員の若返りと定着・成長、また会社全体の意識改革につなげたいと思いました。

丹羽 昭夫氏

組織化で売上げ増加や事業拡大へ

【鵜飼】 37歳で不動産業として独立開業し、11年前からは学習塾も始めました。同友会に入会し、地区例会で報告者の依頼をするため丹羽さんの会社を訪問したところ、いきいきと働く社員さんたちを見て、共同求人活動への参加を決意したのが5年前のことです。その前は、縁故や社員の紹介で採用していました。組織化をしたいという想いもありましたが、資金面もハードルになり、踏み切れずにいました。また、社員の平均年齢が上がっていくことに危機感もあり、未来が見出せない状態でもありました。共同求人で若返りを図るとともに、既存社員が育成に関与して新たなやりがいを感じてくれることや、社員が増えて売上げの増加や事業拡大につながっていくことを期待していました。

鵜飼 英一氏

社員の世代交代を目指す

【社本】 自社は父が創業し、その後に兄が社長になり、私で3代目です。事業内容は自動車部品の卸売りをしています。かつての採用は、欠員補充の行き当たりばったりというありさまでした。社員を採用しても育たず、離職率の高い会社でした。同友会に入会してすぐに秋の合同企業説明会や採用戦略セミナーに参加し、10年後の社員の年齢や働く環境を考えました。当時の平均年齢が40歳で、10年間なにもしなければ50歳になってしまうと思うと、危機感しかありませんでした。私も丹羽さん、鵜飼さん同様に若い社員が増えて世代交代をしていきたいことと、社員の成長を促しながら会社の未来を一緒に描き、業界のレベルアップにも取り組みたいと思い、参加しました。

社本 滋美氏

活動するなかで得た気づき

労働環境整備の重要性

【丹羽】 採用活動をしても、入社した後に働く環境が良くなければ辞めてしまいます。社内の労働環境を整えることで、今いる社員にも良い会社と思ってもらえることに気づきました。最初は101日だった年間休日を、115日まで増やしました。しっかりと休み、仕事にもきちんと取り組めるようにしたことで、売上げも伸びています。また、共同求人活動に参加した当初は社員の平均年齢が50歳だったのが、12年かけて36歳にまで若返りました。

経営理念が社員に浸透

【鵜飼】 私の今の状況は、丹羽さんが共同求人に参加した時と同じような立ち位置だと思います。参加1~2年目はブースに学生が来ず、採用もできませんでした。しかし、それまで私が語っていた経営理念を一生懸命に学生へ伝える社員を見ていて、共同求人に参加したことでしっかりと私の想いも伝わっていくものだと感じ、採用できなくても落ち込まず、次につなげようと思うようになりました。

採用難の業界に一石を投じたい

【社本】 私が一人で突っ走ってしまい、失敗したことも多くあります。参加1年目に一緒に活動していた幹部社員は「育てたいと思える学生がいない」と、しばらくして退社。その翌年は新入社員と一緒に参加しましたが、自分の会社を語ることができないまま参加させたため、不完全燃焼のような状態になり、退社に至ってしまいました。失敗はありますが、業界は社員の平均年齢が高い会社が多く、また若者の車離れで採用が難しい傾向もあるなかで、そういった状況に一石を投じたいという信念は変わりません。セミナーで気づく課題を一つひとつ克服しながら、より良い会社にしていきたいと思っています。

目に見える社員の成長

右腕左腕へ成長

【丹羽】 入社8年から10年経つ社員2人がとても頼もしくなり、右腕左腕のような存在になってきました。1人目は、営業や機械の導入、新工場建設や社員教育など、様々なことを私と同じ目線で考えてくれています。2人目は社内外の1カ月先までの工程管理をしっかりしてくれるようになりました。彼らが入社したのはリーマンショックの真只中、あるいはその直後だったため、合同企業説明会でも多くの学生と出会うことができました。また不況でしたので、社内でじっくりと育てる余裕がありました。私は経営者人生が20年くらいになり、次へのバトンタッチを考える時期に入っています。社員と共に、会社の将来を考えていきたいと思っています。

プライドを持って働く

【鵜飼】 初めの頃は、学生が合同企業説明会のブースに来てくれませんでした。これに対して社員から、「うちの会社は不人気な業種なのか」という声が出てきました。悔しさもあったのか、会社の魅力を伝えるためにプレゼン資料を作成したり、ブースが気になるのかシフトを組んで交替で合説に来たりする姿が見られるようになりました。私自身、そういった社員の姿を見ながら、たとえ採用ができないとしても、プライドを持って働くことで、学生にも伝わっていくのではないかと思っています。

新卒採用の理解が広まる

【社本】 採用活動をしていても、幹部社員は「新卒を採用しても、育つ前に辞めてしまう」「自動車の知識の習得や検索ができるとは思えない」という否定的な意見が多数でした。しかし、「実践型人材育成システム・人材開発助成金」対象の研修を半年間受けた新入社員の日に日に成長する姿を見て、「これからは新卒の若い人にしかこの仕事はできない。毎年、新卒採用をやりましょう」と言ってくれるようになりました。また、その研修の指導役だった先輩社員が会社の周りを掃除してくれるようになったり、何度も転職して自社に来た社員が新入社員を誘って食事に行き、自社の良さを伝えてくれたりするなど、嬉しい変化が見られるようになりました。

新卒採用を検討する皆さんへ

経営者が信念を持つ

【丹羽】 最初は「うちの会社なんかが新卒採用ができるわけがない」と思っていたのは事実ですし、社員も同じように思っていたかもしれません。しかし、経営者が信念を持って進めることが大切です。社員18名のうち13名が新卒入社の社員で、若い社員が増えることで銀行や取引先から自社を見る目が変わりました。そして、将来性があると思ってもらえることで注文が多くなり、売上げの増加につながりました。入社して定年を迎えるまで40年くらいあり、いつまでも社員たちが活躍できるような会社でいられるようにしていきたいと思っています。

採用で皆を幸せに

【鵜飼】 創業時は個人事業主の集まりだった自社が、同友会で学ぶなかで「会社」にしていきたいと思うようになりました。不動産業は個人経営や家族経営、そして大手が多い業界です。業種柄、人が増えることで様々な展開を描くこともできますし、目標やビジョンに向かって今後も活動していきたいです。私自身まだまだ不十分なところはありますが、今いる社員のためにも継続した採用活動を行うことで、皆を幸せにできるのではないかと思います。

諦めずにやり続ける

【社本】 採用活動と同時に、育成計画も進めていかなければ、ミスマッチで離職してしまいます。自社は求人セミナーで学びながら、社内環境の整備をなんとかやってきた状況です。今年はコロナ禍で企業説明会もオンラインになり、簡単な動画を社員と制作しました。自分の伝えたいことばかりを伝えるのではなく、学生が何を知りたがっているのかを考えて説明することも大切です。そうした工夫が、内定3名につながったと思います。自分にも言い聞かせていますが、手応えがあるまで諦めずにやり続けることが、目指す企業へつながっていくと思います。

【文責:事務局 松井】