活動報告

第24回女性経営者全国交流会 第7分科会(6月29日)

市場は今、SDGsの時代に!女性経営者による新たな価値創造

~ジェンダー平等を実現しよう! 持続可能な企業づくり

鈴木 世津氏  ヒューネクスト(株)
今津 悠見氏  (株)アグメント

第24回女性経営者全国交流会・第7分科会では座長の篠田寛子氏(クレオ、北第1地区)の進行のもと、鈴木世津氏(ヒューネクスト、同)と今津悠見氏(アグメント、知多地区)による報告が行われました。その概要を紹介します。

ジェンダー平等を目指して

鈴木世津氏
鈴木世津氏

【鈴木】当社は2004年に個人事業の語学教室として起業しました。

当社の経営理念は「誰もが人生のオーナーシップを持ち、体験的学びを通じて自己実現する喜びを追求します」で、それを実現するための経営方針は「私たちはジェンダー平等の実現にむけた、教育活動と共創議論の場を展開します。とくに女性企業が生み出す価値循環のエコシステムと社内環境はこれからの新しい繁栄をしめすものと確信しています。業界と国境を超えた共創を誘発することで女性企業家の成長に寄与します」と掲げています。

17年には語学研修をオンライン化し、外資多国籍企業の社員研修トレーナーの認定を受けるなど、私が進む道に確信を持ちつつありました。そんな折にお誘いを受けて参加した「世界企業家サミット」で、「サプライヤーダイバーシティ」を推進する国際NGO「ウィコネクトインターナショナル」と出会います。

サプライヤーダイバーシティとは、女性企業家などマイノリティが所有する多様な企業が、大企業のサプライヤーとして、商品やサービスを提供する機会を得るための取り組みです。同NGOは、女性が所有する事業体であることを査定し国際認証「WBE(Women’s Business Enterprise)認証」を与えることで、サプライヤーダイバーシティの活動の妥当性とその推進を測定可能にする唯一の団体です。

この活動の背景を見ますと、世界経済において購入意思決定の85%は女性によるもので、世界全体の企業のうち32~39%は女性所有の中小企業なのですが、大企業や政府の調達に対して女性企業家がサプライヤーとなる割合は1%もありません。

この著しく不平等な状態の克服で、多くの女性企業家がビジネスを大きく展開できるようになり、ジェンダー平等の実現に大きく寄与できると考え、私は同NGOの日本マネージャーを受託することにしました。

当時の私は無実績で、18年から3年かけて、信用資本を築くとともに様々なことを学ぶ計画を立てました。また日本全国300名の女性企業家と対話し、その声を上にあげていく活動を行うことにしました。さらに日本全国とつながるために、オンラインでの関係を基礎とする「DX化」を掲げました。

17年7月の日本支部キックオフ企画では、全国から50社の女性企業家と10社のバイヤーが参加しました。

また19年に東京同友会の例会でサプライヤーダイバーシティを紹介する機会をいただき、コロナ禍の20年には日本初の女性企業家実態調査を行い、191社の貴重な声を集めることができました。同年、オンラインでバイヤー10社と女性企業サプライヤー51社のマッチング企画を行い、実際に数社が受注に結びつきました。

この3年半は大変多くの方の助けで、様々なことを実現することができ、まさに奇跡でした。私たち女性に、絶好のチャンスが到来している時代だと感じます。

地域の“安心”となる企業に

今津悠見氏
今津悠見氏

【今津】当社は知多半島にある阿久比町で父が創業し、私は2016年に社長に就任しました。事業内容はし尿汲み取り、浄化槽の点検・清掃、下水道補修、家庭や店舗の排水管メンテナンス、一般・産業廃棄物の収集を行い、生活に必要不可欠な分野です。近年は食品や剪定枝・竹などのリサイクルも行い、そばの栽培も行っています。

地域密着・資源循環型の取り組みとして、食品廃棄物の減量・再資源化をさらに発展させ、リサイクル堆肥を原料として農作物を育て、持続可能な循環型社会の構築を目指した「アグエコプロジェクト」を、10年にスタートさせました。

ここでそばを選んだのは、白くかわいらしい花が景観に良い、健康や美容面で注目されている、観光地で地元のそばを食べる習慣があることなどからです。また名称は、人と環境を美しくするというコンセプトから「知多美人そば」としました。企業の価値を高めるプロジェクトとして、地域の限りある資源を大切にし、豊かな知多半島にしたいという想いで取り組んでいます。

地元の子どもたちへの環境リサイクル授業も行っています。子どもたちが理解を深めることで、大人への理解も広がりやすくなり、とても重要だと感じています。

経営理念には「人と環境を大切に」を掲げ、経営方針に「知多地域を中心とした環境事業を通じ、暮らしの“安心”を追求する」としています。私たちの事業はエッセンシャルワーカーとして人々の下支えとなる仕事ですし、私たちが存在することが地域にとって何よりの安心となるよう、追求していきます。

今津氏の報告資料より

日本の女性企業家が直面する課題

【鈴木】日本の女性経営者が直面する課題のうち、圧倒的に多いのが「仕事と家庭の両立」(65%)です。これは、日本の性別役割分担の実態がいかに深刻かということを意味します。

2番目に多いのが「男女差別」(30%)の問題です。男性中心社会の中にあるビジネスチャンスは、女性経営者はなかなか取りに行くことができません。ハラスメントなど身の危険もあります。

他方で良い情報もあり、女性経営者が活躍する業界はすでに多岐にわたっています。特に男性優位とされる製造業などでも女性経営者が多く生まれています。

環境事業とSDGsとの結びつき

【今津】SDGsが注目され始めてから、当社のこれまでの取り組みがSDGsとつながっていたことに気づきました。それを機に作成した「SDGs宣言」で、当社の取り組みをSDGsの指標で改めて整理し、当社の「地域」「人」「環境」それぞれとのつながりを大変伝えやすくなりました。

当社の事業が地域の下支えとなり、社員が誇れる・自慢できる会社にしていくことは、世の中の諸問題に取り組むSDGsの考え方に近いと考えています。

実践できる3つのこと

【鈴木】ジェンダー平等と女性経済拡大のために、今すぐできることを3つ紹介します。

1つ目は「ジェンダーレンズ」――自社の様々な指標を「男女比」で見てみることです。例えば、育児休職や介護休職を男性も取っているか、男女間で給与や昇進の格差はどうか、取締役の男女比は、など。そして「女性のためのメンター制度や、社内に相談できるしくみがあるか」を挙げます。女性が相談しやすい環境づくりのためにも、女性管理職は重要だと思います。

2つ目は、様々な調達・外注案件を、身近な女性企業に発注していただきたいと思います。関係を結ぶ良い接点にもなりますし、女性がどのような視点でものづくりやサービス提供をしているかを知る機会になると思います。

3つ目は、女性の取締役がいない会社ですぐにできることとして、経営指針を発表前に、身近な同友会の女性社長に見てもらい、意見をもらうことです。当事者の意見を取り入れることで、本当の意味で女性が働きやすい環境づくりができるようになると思います。

鈴木氏の報告資料より

行動によって生まれる「つながり」

【今津】当社ではコーポレートメッセージとして「つながる、チカラ。」を発信しています。限りある地域の資源を大切にして、豊かな地域にしていきたいという想いで、アグエコプロジェクトを通じて「食」「農業」「里山」といった地域の資源をつなげ、維持・循環させながら利用する取り組みを行います。

地域でのコミュニティには積極的に参加し、自分にはない価値観や情報を持つ人との出会いをとても大切にしています。信頼関係を築いてビジネスにつなげるだけでなく、仲間として共に地域社会を良くするために議論し切磋琢磨する。そのような環境づくりが、私の考えるつながりの大切さです。

【鈴木】弊社の事業としては、女性企業の海外展開が急速に進み始めていて、英語ピッチトレーニングの需要が非常に高まっています。

また現在「共創型ポータルサイト」の構築を2つのテーマで進めています。1つは食と防災の教育と女性視点でのBCP研修です。災害対策は私たちにとって、もはや日常です。女性企業家視点で実体験を交えた研修を共創することで、共に市場創造して、Win-Winになっていくことを目指しています。

もう1つは、女性企業における採用と人材育成のサイトです。女性企業がジェンダー平等の採用を行い素晴らしいエコシステムを構築していることを打ち出し、各企業で協力しながら採用活動を支援し、人材育成の需要にもつながることを展望しています。

鈴木氏(右)、今津氏(中央)両氏の報告を座長の篠田氏(左)がまとめる

既成概念にとらわれず想いを行動に

【篠田】お2人に共通するのは、考え方が非常に柔軟で既成概念にとらわれていないこと、それを行動に移して実践していることです。

この「既成概念にとらわれない」ことは、ジェンダー平等を受け入れていくことにも共通していると思います。古い価値観に固執していては新しいビジネスも生まれにくいですから、やはり多様な価値観や考え方を受け入れる姿勢が大切ではないでしょうか。

【文責:事務局・政廣】