基本的人権とは
~人類が歴史の中で獲得してきた成果
長谷川 一裕氏 弁護士法人名古屋北法律事務所

企業が生き残る分岐点
第5回「労使見解」を深める学習会では、「基本的人権とは~人類が歴史の中で獲得してきた成果」をテーマに弁護士法人名古屋北法律事務所の長谷川一裕氏から報告をいただきました。
なぜ今、人権尊重経営が必要なのか。それは、ビジネスと人権に関する国際社会の取り組みや、それに伴う企業の社会的責任が求められているからだと長谷川氏は指摘します。特にSDGs(持続可能な開発目標)のすべての目標が人権尊重に結びついていることから、切っても切り離せないものとして世界的に注目されているといいます。
人権は、空気や水のように当たり前にあると考えられていますが、世界に目を向けると、まだ軽視されている地域や事柄も多くあります。人権には、まずは自由権(思想や信教、表現、職業選択等)、社会権(生存することそのものや教育を受けること)、そして参政権、選挙権などが挙げられ、その根幹が紹介されました。
会社経営の中にも、外国人を雇用した際の文化の違いや社員の職業選択の自由、世代間での価値観の違い、表現の仕方など、多くの問題が隣り合わせにあり、そこを意識して経営をする「人権感覚」を経営者が身に付けることこそ、企業が生き残る分岐点になると強調しました。
また、同友会の目的唱和の際に、「資質を高める」という言葉がありますが、これはまさしく想像力と共感能力のことを指していること。相手の立場に立って考えられるか。別の言い方をすれば、「他人の靴を履いて考える。ここが重要で、人権やジェンダーの問題にも重なる部分だと捉えている」と説明がありました。
認め合う関係を築く
立場はさまざまでも、人権は誰にでも平等にあり、人権と人権のぶつかり合いの中から調整をするために、公共の福祉があることにも言及しました。
事例としては、この全世界に影響を与えている感染症に関しても、企業側は会社を存続しなければならない立場から営業の自由を主張し、一方で人命を守る生存権の観点から自粛を依頼することで調整がなされているといいます。
こういった事例を積み重ねながら、「人類は今の段階でのベストな答えを導き出してきました。答えは1つではないので、判断を重ね、事例を積んでいくしかありません」と見解を述べました。
人権は、宣言するだけでは絵に描いた餅になってしまいます。理想で一致する、互いに認め合う関係を築いていく、ここも同友会の人間尊重経営に共通する部分であると指摘がありました。経営者が各社で人権感覚を身に付け、経営していくことが、これからの時代をつくる。そのように考えていけば、苦労のしがいのあることだと提起がありました。