【ここから物語が始まる】雇用実践報告
「障害者」と呼ばれる方々とわたくし
~人生、障害「無」くしてあり得ない
杉浦 多恵氏 (株)サンコー
初めての出逢い
杉浦多恵氏が初めて障害のある人に出逢ったのは、小学校の「なかよし学級」に通う重度のダウン症の生徒でした。その頃はいろいろな人がいて当たり前だと思っていましたが、小学6年の卒業旅行でそれが変わりました。
旅行先で一緒に宿泊した生徒は、会話が不自由で、食事や着替えなど身の回りのことはサポートが必要な人でした。彼女のサポートを男性の先生がしている様子に、自分とは違う世界の人のように感じたと言います。
再び障害者と関わったのは、大人になってからでした。横断歩道で立ち往生する車イスの人を大急ぎで安全な場所へ移動させましたが、思いやりのない行動で車イスの方に恐怖を感じさせたのではないか、結局は自己満足だったのでは、とトラウマになってしまいます。
その後、車イスの人たちが集う施設にボランティアとして通い始めた杉浦氏は、周囲からの「なぜ、通い続けるの」という問いに、「楽しそうなみんなの笑顔を見たいから」と素直に答えられるようになっていきました。
自分はここにいていいの?
菓子・食品製造卸を営むサンコーは、アスペルガー症候群のNさんを雇用して6年になります。Nさんの「こだわりの強さ、正確さ、確実さ」はお菓子の詰め合わせ業務で大いに力を発揮し、詰め合わせの拡販が可能になりました。
Nさんも会社も順調だと安心し始めた矢先、個別面談でNさんが自らの人生を語ったことばは「転落」のひと言でした。杉浦氏は自分の考えとのギャップにショックを受け、焦ります。「転落」の意味を聞くと、「会社に必要とされていない気がする」ということでした。
早速、上長と2人でその誤解を解いたのですが、伝えているつもりで伝わっていない、社員との信頼は社長の一貫した言行一致にある、と痛感したそうです。
杉浦氏はNさんとの出逢いによって社員の幸せをより深く考えるようになり、障害者雇用が人間尊重経営の根本であることを実感する日々を送っています。