私の人生
~この世にいらない命はない
磯村 太郎氏 サン樹脂(株)
会員の人生観から学び合う「人間性を語る夕べ」。経営の「科学性、社会性、人間性」のうち、「人間性」が最も集約され、話題となり、自らの課題に気づく場として開催しています。
「羽蟻」の存在
報告者の磯村太郎氏(サン樹脂・代表取締役)は、出生からこれまでの生い立ちを赤裸々に報告しました。
青年期に遭遇した文字にできない大きな出来事は、癒えない心の痛み、怒り、渦巻く疑念を残し、磯村氏を開放してはくれませんでした。生きることに投げやりだった大学時代、唯一心に響いたのは、「羽蟻」の講義でした。
蟻は、生まれながらにして「働き蟻」「兵隊蟻」「羽蟻」の3種に分かれて誕生します。働き蟻は餌を運び、兵隊蟻は巣を守りますが、羽蟻は一見何も役立っているようには見えません。そして、ある時期になると飛び立ち、着地した先で羽を落とし、繁殖をして新しい巣を作ります。
教授は「種を守りぬく、それが羽蟻の役割」と語り、「この世にいらない命はない」と学生たちに教えました。「この世にいらない命はない」――やさぐれた磯村氏の心の闇に光が射し込みました。以来、この価値観は磯村氏の支えとなっていきました。
「人間性を語る夕べ」に参加した村田直喜氏(MRT)から感想が寄せられましたので、以下にご紹介します。
【寄稿】自らの人生を重ね 語り合う
村田 直喜 (株)MRT
磯村氏の人間形成の経緯と感情の強さが印象的でした。感情のコントロールが難しい時期に出遭った大きな出来事は、その人の人間性を変えてしまうかもしれません。また、トラウマのように刷り込まれ、その後の人生にブレーキを掛け、選択を偏らせる思考に陥るかもしれません。
経営者として、解決しないことに「なぜ」と問い、正しい選択だと思う方に進み、また「なぜ」にぶち当たる。これを繰り返すうちに自信を失う瞬間があります。そんな時、同友会では、他の経営者の客観的な一言で目から鱗が落ち、偏った視点から抜け出し、必死で守り拘っていたものを手放し、別の価値観や生き方に気づいていきます。
日々の経営の中で、社員が見えなくなり、数字上の生産性だけを求めるようになることがあります。人を人として見る、接する、生きがいを分け合う大切さに立ち返る。そういう気づきが障害者自立応援委員会にはあります。だから、私はこの場に来て経営姿勢を再確認しています。