ここから物語が始まる
~障害者雇用の実践報告
荒川 亨氏 (株)石川製作所
障害者との出逢い
祖父、父ともサラリーマン家庭であった荒川亨氏は、文盲の祖母、小学校卒の母の姿を通し、男尊女卑の時代を肌で感じて育ちました。また、近所に住む障害者の家には近づかないよう釘を刺されるなど、子どもの頃の体験が知らぬ間に無意識の偏見につながると振り返り、いかにそれを払拭できるかが生きる上での課題だと言います。
エンジニアとして20年会社勤めをした荒川氏は、3代続く工場を叔父から託され、1999年に同友会に入会します。その時、所属した緑地区の鈴木峯保氏(ゆかた福祉会・元会員)の人間性に強く惹かれ、有志で障害者や高齢者の学習会を始めます。そして、この社会が障害者にとって生きづらいなら、それをなくすために行動しようと定期的な寄付活動から始めました。この寄付活動は今も続けています。
「働きたい!」に応える
製造部品の選別工程が増え、内職者が高齢化する中、荒川氏は障害者施設に仕事を出すことを思いつきます。労働観のしっかりとした福祉施設と出逢い、物流、作業環境、納期等の条件を整え仕事を出し始めると、その施設に通っていた28歳のA子さんから石川製作所で働きたいと申し出があり、早速トライアル雇用に挑戦、今年の4月にパートで採用しました。
受け入れには、先輩社員が1週間単位の手順書を、使う道具も含めてわかりやすく作成してくれました。A子さんには発達障害があり、会話は少なく、ミスをすると体が固まり休んでしまいます。すると、A子さんの緊張をほぐそうと関わる社員が出てきました。また、各部署から障害のある人に適した仕事が挙がってくるなど、社員たちの思いやりに荒川氏は「心底ありがたかった」と言います。
A子さんの就職へのチャレンジは4社目で、現在、石川製作所が最長記録を更新しています。荒川氏とのすれ違いざまに、A子さんから「お疲れさまでした」とあいさつも出るようになり、安心して自分の力が発揮できるよう会社全体で応援しています。