活動報告

【連載】学ぼう、なくそう、ハラスメント(第6回)

カスタマーハラスメントから労働者・企業を守るために(1)

厚生労働省はマニュアルやポスターを多数発行し、カスハラ対策に注力している

増えているカスハラ被害

顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当なクレーム・要求等の著しい迷惑行為により労働者が精神的苦痛を受け休職や退職に追い込まれることもある「カスタマーハラスメント(カスハラ)」問題。これ自体は昔からありましたが、近年ではこのカスハラ問題が特に増加傾向にあり、厚生労働省2020年調査によると、労働者がカスハラ被害を受けた割合は15%と、パワハラの31%に次いで高くなっています。

こうしたカスハラ実態の背景も踏まえ、昨年2月に厚労省は「カスハラ対策企業マニュアル」を発表しました。社会全体でカスハラ対策を推進していく1つの転機となったといえます。実際に、昨年10月に大手ゲームメーカーが修理サービス規程に「カスハラ対策」を明記したことがニュースとなり、共感を呼んだことは記憶に新しいところです。

何がカスハラに当たるのか

厚労省のマニュアルではカスハラについて「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。

カスハラの判断基準は、業種や業態、企業文化などの違いから企業ごとに違いがあると思われますが、1つの尺度として、(1)顧客等の要求内容に妥当性はあるか、(2)要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当か、という観点で判断することが考えられます。

(1)の例では、顧客が購入した商品について「不良品だ。交換・返金しろ」と要求しても、その商品に瑕疵などがなければ顧客の要求には正当な理由がないと考えられます。

(2)の例では、要求内容に妥当性があっても、その言動が暴力的・威圧的・差別的などである場合は、社会通念上不相当と考えられます。暴言や侮辱、土下座の要求、長時間・執拗なクレーム、不退去やその場に監禁など拘束的な行動などがそれにあたります。

なお、殴る・蹴る・物を壊すなどの行為は、直ちにカスハラに当たると判断できることはもとより、犯罪に該当しうるものです。

(次号以降へ続きます)