新卒採用から会社が変わる
~穴だらけの指針書から見えたもの
五十嵐 寛氏 (有)イガラシ金型製作所
同友会での学び
共同求人と障害者自立応援の両委員会が合同で開催され、イガラシ金型製作所の五十嵐寛氏より採用と社員との関わりについて報告いただきました。
五十嵐氏が同友会に入会する前の同社は、社員はほぼ身内、客先は固定、売り上げも変化なし。残業は当たり前で、中途採用した社員は半年でほとんど辞めていくような状態だったといいます。
同友会で初めて参加した委員会は、労務労働委員会でした。ここでは、定年後の働き方を変えていかなければ長くは働けないことを学び、ベテラン社員がやりがいを持って働ける職場を整備してきました。
入会当時、経営の目的は利益を出すことだと思っていた五十嵐氏。経営指針に取り組む中で、それが間違いだと気づかされたといいます。
共同求人に挑戦して気づいたこと
社内で指針発表をし、未来を語っても、当初は誰にも響きませんでした。そんな中でも、5年後を考えた時に、仕事を増やしてもやってくれる社員がいない、数字を達成するために支えてくれる社員もいないということは明確に分かりました。穴だらけの指針書でもそれだけははっきりと分かり、五十嵐氏は同友会の共同求人に踏み切ります。
求人をしてみて、新卒採用について何も知らないということが分かりました。採用ができている企業は当たり前のように就業規則を作り、賃金規定を整えていたのです。
「当時の自社は、いつまで経っても残業なしでは会社が回らず、有給休暇も自由に取れない、年間休日は94日しかない。本当にこれでいいのかと考えさせられ、採用活動を通して徐々に会社を変えてきた」といいます。
社員と向き合う
自社の改革に取り組み「理念採用」ができるようになった一方で、社員を適材適所に配置したり、個々の社員に合った指導ができなかったりしたために、困難に突き当たる社員が出てきました。
ある社員はパニックを起こすようになり、適応障害と判断され、退社に至りました。経営者自身が障害について学ぶこと、社員にも理解してもらうことを怠っていたことを反省していると五十嵐氏。
ある社員は眠れない日が続き、ストレスからくる適応障害が悪化した結果、うつ病になり、ドクターストップがかかりました。就業規則にもあるように長期休暇をとらせ、復帰後は負担になる働き方を変え、状況を見ながら少しずつ対応しています。
「彼を引き留めることがよいのか迷っていますが、本人の働きたいという意思と、病気に対して向き合い、治そうとしている気持ちを大切にしていきたい」と五十嵐氏は話します。「現在進行形の問題で、この先どうなるか分からないが、今できることをやり、彼と精一杯向き合っていきたい」と結びました。