人間尊重経営を深める各支部啓発学習会
~東三河、名古屋第1・第3・第5
10月19日(木)・20日(金)に愛知で開催される第22回障害者問題全国交流会に向け、「人間尊重経営を深める」啓発学習会が各支部において開催されています。今号では東三河、名古屋第1・第3・第5の各支部による取り組みを紹介します。
東三河支部(7月24日)
障害者と関わり、個性を尊重
山口 弘修氏 (株)中部シイアイシイ研究所
各自の特性と向き合い個性を引き出す
東三河支部の学習会では、まず障害者問題全国交流会啓発チームの馬場愼一郎氏(データライン)と磯貝賢一氏(大磯屋製麺所)より、障害者問題の現状や、その向き合い方などをお話しいただきました。その上で、経営体験報告として山口弘修氏(中部シイアイシイ研究所)に登壇いただきました。
山口氏は当初、業務の急場をしのぐために雇用した障害者との関係が上手くいかず、とても苦労したといいます。しかし、それぞれが持つ障害の特性と向き合い続けました。そして、ともすればマイナス面にばかり目を向けられがちな彼らの個性を引き出し、会社としてサポートしていける体制を整えました。
その体験談から、参加者はいろいろなヒントや気づきを得られたことと思います。普段、後回しにされてしまいがちな障害者に関わる問題を掘り下げてのお話は、大変有意義なものでした。
障害者と関わることで新しい風が吹く
その後のグループ討論でも「一社一人関わる・愛知モデル」にあるように、障害者を雇用することだけでなく、小さなことでも何かしら関わってみること、その際にどんな関わり方ができるか、などを意見交換しました。障害者と関わることで、会社や個人に新しい風が吹く、といった活発な討論ができました。
私自身を含め、どこか他人事に感じられてしまうことの多い障害者問題。本学習会は、普段と違う視点から障害を持つ人のことを考える良い機会になったと思います。
同友会が掲げる「人間尊重経営」について改めて考えるきっかけになり、障害の有無にかかわらず、お互いの存在を尊重し合うことの大切さを再認識できました。
(一社)あるふぁ 神谷 新
名古屋第1支部(7月24日)
社員に寄り添う姿勢の学びに
志水 嘉津彦氏 進興金属工業(株)
人口7%超が障害者
名古屋第1支部の人間尊重経営を学ぶ啓発学習会は支部の役員と人を生かす経営推進委員を対象に開催しました。 まずBeBlockの松村祐輔氏に課題整理をしていただきました。今や障害者の割合は国内人口の7%を超えて増加傾向であること、日本の社会問題として障害者に対する人権侵害があり、「自分事」として向き合う必要があることが説明されました。
続いて、進興金属工業の志水嘉津彦氏より「障害者と関わることでの変化」について実践報告をいただきました。障害者雇用にまつわるさまざまな問題にどう取り組み、社員といかに関わって乗り越えてきたか、また良い面も交えて、実践し続けている思いが赤裸々に語られました。
個人の得意・不得意を生かす人員配置を
支部の障全交実行委員として人間尊重経営を学ぶこととなった私は、障害者雇用を通じて社会貢献を目指すのだと単純に思っていました。しかし、障害者雇用に取り組むことは、同時に健常者の社員に対する経営者の姿勢を学ぶことにもつながっていると気づきました。
本学習会を通じ、経営者が心身ともに健康で経済的・時間的に余裕があって、社員に優しくできる状態であることの重要性に気づきました。人に優しくなるには、さまざまな点で余裕がなければならないとも実感しました。
健常者でも障害者でも得意なこと・不得意なことがあります。経営者が障害を個性と認識して社員に寄り添う姿勢を持つことができれば、個人の長所・短所を分析して適正な業務に就いてもらうことが可能となります。個性を無視して会社がやってほしい業務を押し付け、上手くできないから「できない人」と決めつけることは間違いであり、そのような考えでは会社も社員も幸せになれない、そうはなりたくないと感じました。
伊駒建設(株) 峯 吉伸
名古屋第3支部(7月25日)
人間尊重経営を学ぶ
障害者との関わりを3氏でパネル討論
名古屋第3支部の学習会では、まず障全交実行委員の鶴田修一氏(鶴田工業所)より「一社一人関わる・愛知モデル」の紹介と、障害者を取り巻く現状についての問題提起がありました。その後、生駒健二氏(イクシー)、中西耕策氏(循環資源)、村田直喜氏(MRT)の3名より、パネル討論形式で実践報告をしていただきました。
父の代から障害者雇用に取り組んでいるという中西氏からは、障害者と共に働くことへの想いが、また生駒氏・村田氏からは障害者雇用に挑戦する中での自身や会社の変化について、語られました。
共に働く仲間として
イクシーでは経営理念を軸に多様な人が活躍できる会社となるよう、個人の特性に合わせた対応に取り組んでいます。障害のある人は仕事以外で問題が起こった時に影響が出てしまうことが多いため、状況のヒアリングをすることで仕事に集中できる環境を整えているといいます。
循環資源では互いの個性を認め合い、役割分担して仕事に取り組む風土があり、障害のある社員の存在が社員同士のコミュニケーションを円滑にしていると話されました。
MRTではまず学校とのインターンを活用し、社員の理解が得られるように時間をかけて取り組んできました。社長の想いだけで障害者雇用を進めず、実際に障害者と関わる社員の理解を得ることが大切だと強調されました。
3氏に共通するのは、障害者という属性で判断するのではなく、個人の特性として障害を捉え、共に働く仲間として向き合っていることです。また、親亡きあとも自立した生活ができるよう、社宅の整備やグループホーム運営にも挑戦し、「定年まで働いてもらいたい」と将来の展望が語られました。
当日は参加者が22名という状況ではありましたが、障害者について知る第一歩の学習会となりました。
名古屋第5支部(7月31日)
障害を特性と認識する
二人三脚で取り組む
名古屋第5支部の学習会では、一弘電機の河合麻古氏とダイコーゴムの久納征人氏に障害者雇用の実践報告をしていただきました。
河合氏は、共同求人で採用した新卒の社員のことで悩んでいました。例えば、都道府県名が漢字で書けない、休憩の前にやりかけていた作業を覚えていない、遅刻が続く、などです。縁あって採用した社員を何とか育てたい、と本を読んだり専門家に相談したりした結果、その新入社員に発達障害の傾向があることが分かりました。
河合氏は、一旦その新入社員を製造部から総務部に異動させ、製造部に戻ることを目標に二人三脚でさまざま取り組みます。その結果、現在は製造部に戻ることができ、少しずつですが成長も見られるようになりました。
発達障害を、障害としてではなく特性と理解し、どういう工夫をすればいいのかを一緒に考えて取り組むことが大切です。
人と接するということ
久納氏は、会社の作業の一部を障害者施設に発注していたこともあり、知人の勧めで就労継続支援B型事業所「りゅっか」を開業しました。
最初はスタッフに任せていた利用者との面談に自身も加わると、普段ダイコーゴムでしている社員面談と何ら変わりないことが分かり、障害の有無にかかわらず、人と接するということは本質的に同じであることを理解します。
今では、りゅっかの利用者をダイコーゴムで受け入れたり、ハローワークでも障害者枠で募集できたりして、りゅっかの経験を活かして経営に取り組んでいます。
現在、障害と認定される人数は急増しています。しかし障害を持つからといって、働きたいという欲求や人間らしく生きる権利を奪われることはあってはならないことだ、と愛知同友会の先人たちは考えました。
すぐに障害者を雇用することは難しくても、まずは障害者の存在を認知し、障害者施設で作っている物を買うなど簡単なことから始め、障害者問題を「自分事」として考えていくことが求められます。