活動報告

第22回障害者問題全国交流会に向けて

人間尊重経営を深める各支部啓発学習会
~南尾張、名古屋第2・第4

10月19日(木)・20日(金)に愛知で開催される第22回障害者問題全国交流会に向け、「人間尊重経営を深める」啓発学習会を各支部において開催してきました。今号では南尾張、名古屋第2・第4の各支部による取り組みを紹介します。

南尾張支部(8月30日)
先入観を取り払って

小野 徳仁氏  丸博青果(株)

経験と葛藤を飾らずに話す小野氏

「見えない生産性」を高めよう

南尾張支部の学習会では中西の笠原尚志氏より「1社1人関わる・愛知モデル」についてお話しいただきました。

「1社1人関わる」とは、決して障害者の採用ありきではなく、まず知ることから始め、それに向けたきっかけづくりをすることだと笠原氏は話します。「社員の理解が得られない」との声を聞くことに対して、「これは関わる理由を社長自らがしっかり理解できていないことの裏返しであり、関わり合いを通じて『見えない生産性』を高めていこう」と打ち出しました。

実践事例では丸博青果の小野徳仁氏が報告。笠原氏の話を機に学生の実習受け入れから始めた同社では、現在6名の障害者が働いています。既存社員と同等の戦力として捉えていた当初は、親への対応や感受性の幅の広さに現場の社員が疲弊してしまったそうです。小野氏は、障害者を安易に一くくりにし、「単純作業が得意」など先入観を持っていたのではと反省しました。

また、「人として『捉え方』は変えず『接し方』をより意識すべきなのでは」「情けで仕事を渡し、出来が悪くても受け入れることは、社員扱いしていないことになるのでは」と、接する上での葛藤も率直に話されました。

誰もが生き易い社会に

時間はかかっても彼らも確かに成長しており、「こうしてあげれば良い」と一方的に決めるのではなく、しっかりと本人の声を聞き、それが活かせる個々のニーズを探すこと。身近な人が突然障害を持ったケースを挙げ、「関わりが必ずある今、『ありがとう』と屈託なく言えるように、誰もが生き易い社会づくりの一端を担いたい」と、小野氏は締めくくりました。

グループ討論でも「企業は1人では成り立たず、構成する各々ができる関わり方を考える」「自身の振る舞いを『障害者に対して』と仮定して振り返ってはどうか」と、前向きな意見が飛び交いました。

最後にエバーの吉田幸隆氏より実践と連帯が呼びかけられ、大盛況のうちに終わりました。

名古屋第2支部(8月29日)
人間の可能性に確信

江尻 春樹氏  信濃工業(株)

人として、経営者としてどうありたいか

身の回りの人権侵害に正面から向き合う

第22回障害者問題全国交流会in愛知に向け、「人間尊重経営」を障害者雇用の切り口から深める啓発学習会が名古屋第2支部で開催され、27人が参加しました。

報告者に松村祐輔氏(BeBlock、中村地区)、江尻春樹氏(信濃工業、海部・津島地区)が登壇。松村氏からは「1社1人関わる・愛知モデル」を共有するための課題整理」、江尻氏からは障害者雇用の実践報告がそれぞれ行われました。

松村氏は、今の社会は全世界的な共通認識として、障害の有無にかかわらず、あらゆる人が生まれながらに持つ権利(人権)を尊重する方向に向かいながらも、現実には様々な人権侵害が身の回りで日々起こっていることを指摘し、そこへ同友会理念、『労使見解』を基礎とした人間尊重の経営で正面から向き合える経営のありようが求められていることを提起。

当初は「ためらい」を抱きながらも障害者雇用に踏み出した経験にも触れながら、障害者を障害者にしている「問題」を、「他人事」でなく「自分事」として捉えていくことが時代の要請となっていることが整理されました。

1人の人間として互いを認め合うこと

江尻氏からは、自社の障害者雇用の実践模様が報告されました。設計・製造・組み立て・メンテナンス・据え付けまでを一貫して担う専用機メーカーである信濃工業では、先代社長(創業者)の頃から永く障害者雇用に取り組んできています。

これまでに出会ってきた7名の障害を持つ社員との関わりから、障害者をステレオタイプなイメージで捉えていたことによる失敗を重ねながらも、地道な実践の中で得られた小さな成功や、人が育つことへの感動から、「障害を持っていたとしても、互いを1人の人間として認め合うこと」の意味、人間尊重経営の原点が障害者雇用の実践には息づいていることが強調されました。

全体を通じて、生産条件ではなく生存条件を追求し、自社の社会的存在意義を今よりもさらに高めていくこと、その過程で経営者自らの人間性を深めていくことがまとめとして提起され、学習会は締めくくられました。

名古屋第4支部(7月26日)
誰もが安心して働ける場を

森岡 忍氏  (株)オープンセサミ・テクノロジー

誰もが働きやすい環境を考え、実践している森岡氏

他人事から自分事へ

名古屋第4支部の啓発学習会は、支部役員を対象に開催しました。

まず「1社1人関わる・愛知モデル」を共有するための課題整理として、BeBlockの松村祐輔氏による動画を視聴。内閣府による人権擁護に関する世論調査(2017年)を基に、障害者が就職・職場で不利な扱いを受けたり、差別的な言葉を言われたりする等の人権侵害が起きている状況が説明されました。

愛知同友会では、当時もあったこの社会課題を解決すべく1986年に「障害者問題(現・障害者自立応援)委員会」を設立しますが、運動としての広がりは、いまだ十分とはいえません。こうした背景から、委員会では「1社1人関わる・愛知モデル」を2021年に発信。障害者と関わり、やがて雇用することを理想とし、多様性を受け入れ障害があっても安心して働ける場を増やしていく活動に、さらに力を入れています。

松村氏は、運動を推進するカギは「他人事」から「自分事」へのシフトチェンジであり、自分にできることを考えてほしいと訴えかけました。

障害者もチームの一員

続いて、オープンセサミ・テクノロジーの森岡忍氏より「障害者と関わることでの気づき、会社の変化」について実践報告いただきました。

障害者雇用のきっかけは法定雇用率を満たすことだったと話す森岡氏。当初は担当者が業務を切り分けて障害者の方専用の仕事を考えていましたが、担当者の負担が重く、次第に社内の雰囲気が悪くなったといいます。

そのため業務の振り方を見直し、障害者の方も他の社員と同様にチームの一員と位置づけ、チーム内の仕事の一部を担ってもらうように変えました。また、直接の対話が苦手な方にはチャットでコミュニケーションをとるなど、関わり方も工夫することで、特別に意識することなく会社の一員として皆が接するようになり、雰囲気も和気あいあいとしてきたそうです。

参加者からは、「障害者雇用について考えることは、全社員の働く環境を良くすることにつながると感じた」との感想が聞かれ、障害者についての理解を深め、同友会の人間尊重についての学びを深める学習会となりました。