活動報告

人間尊重経営を学ぶ学習会(第3回)11月6日

「他人ごと」から「自分ごと」へのシフトチェンジ

~障全交の学びを経営実践へ そして地域未来創造企業へ

昨年10月19日(木)・20日(金)に愛知で開催された第22回障害者問題全国交流会の事後学習会として、「人間尊重経営を学ぶ」実行委員会主催・第3回全県学習会が開催されました。峯吉伸氏(伊駒建設)、酒井訓拓氏(コンベルティー酒井)、加藤昌之氏(加藤設計)により行われた報告の概要を以下に紹介します。

峯 吉伸氏
伊駒建設(株)

峯 吉伸氏

名古屋第1支部の障全交実行委員として人間尊重経営を学ぶこととなった私は、障害者雇用を通じて社会貢献を目指すのだと単純に思っていました。しかし、障害者雇用に取り組むことは、同時に健常者の社員に対する経営者の姿勢を学ぶことにもつながっていると気づきました。

障害者という切り口を「人を生かす経営」と置き換えて考えることで、経営者が心身ともに健康で経済的・時間的に余裕があって、社員に優しくできる状態であることの重要性に気づきました。人に優しく接するには、さまざまな点で余裕がなければならないとも痛感しました。

健常者も障害者も得意・不得意があります。経営者が1人1人の個性を認識し、社員に寄り添う姿勢を持つことができれば、特性を生かした適正な業務配置が可能となります。相手の立場に立って考え、社員の声に耳を傾けることで社員が活躍できる職場環境づくりを進めています。

酒井 訓拓氏
(有)コンベルティー酒井

酒井 訓拓氏

私は、東三河で開催されたバリアフリー交流会に参加したことがきっかけで障害を持つ方々と関わることになりました。そこから、全国会合にも参加するようになり、自分自身が商売人から経営者に変わらなければならないと自覚するようになりました。

それから「普通」でも「知的障害」でもないはざまにいる境界知能の社員を雇うことになりました。仕事のやり方を工夫し、朝夕は必ず声をかけるようにしました。すると、その社員は少しずつ自信を持てるようになり、生き生きと働いてくれるようになりました。

世の中には、働くことに悩みを抱えている人が多くいます。そのことを少しでも知ってほしいと思い、その人たちを支援する機関「地域若者サポートステーション(通称サポステ)」の取り組みを東三河支部役員会で紹介しました。

障全交での学びは、人間性・社会性・科学性の全体的なレベルを向上させることです。全ての人が生きやすい社会の実現を目指す上で、合理的な配慮が必要であり、経営者としての覚悟と責任の大きさが自身の成長につながると感じました。自分にも社員にも優しさのある会社にしていきたいと思います。

加藤 昌之氏
(株)加藤設計

加藤 昌之氏

障害者問題と社会情勢を見てみると、動態的視点では、人口減少と障害者人口の増加があります。静態的視点ではSDGsの世界、人権と人間尊重の流れがあります。同友会運動の視点では、同友会理念と人間尊重です。

障全交の事前学習会として、第1回は菅原絵美氏(大阪経済法科大学教授、グローバル・コンパクト研究センター代表)から「ビジネスと人権」について学びました。第2回では、浅海正義氏(みらい経営研究所)、鈴木清覚氏(ゆたか福祉会)のお2人から愛知同友会における障害者問題の歴史を学んだのです。

障全交当日は、「企業経営における見えない生産性」について考えました。バリアフリー交流会などに関わることで、人間尊重の本質に気づくことができます。健常者にも障害者にもわかりやすく業務を分解し手順書等を作成することで、業務の効率化や人間尊重の働き方が見えてきます。

障全交を経験して、人を生かす経営(三位一体経営)のベースに障害者問題があるということを学びました。障害者問題を通じて誰もが社会で働ける環境から、健常者も含め1人1人を互いに認め合い、その能力を発揮できる会社風土づくり・地域社会づくりを進めることが人間尊重の同友会運動です。

「2022ビジョン」では、「地域未来創造企業」をスローガンに「環境創造業」としての中小企業へと飛躍する気概と誇りが込められています。国民や地域と共に歩む、自立型で、中小企業の健全な努力が報われる経済・社会を創ろうということです。

「生まれ、成長し、学び、働き、暮らす」という当たり前の人間の営みが持続可能に保たれ、誰もが働ける社会、地域経済の活性化、豊かな地域づくりを、企業経営を通じて実現していくことを目指しています。

目の前にいる障害者と関わること(共に働くこと)で「生きること・暮らしを守ること・人間らしく生きること」とは何かを考えていく必要があると思います。人は誰でも「価値観が揺さぶられる」瞬間があります。その瞬間から経営者も変わり、社会も変わり始めます。

「地域未来創造企業」は、そのことが当たり前になる企業づくりであり、社会づくりなのです。いつか社会から「障害者問題」という言葉が消える日まで、自身と自社に常に引き当てながら実践を積み重ね、私たちが生きる地域の未来を創り上げていきましょう。

加藤昌之氏の報告資料より

【文責:事務局 伊藤】