活動報告

第22回障害者問題全国交流会 第5分科会(10月19日)

私たちが楽しく働ける場所はありますか?
~その問いに応えられる活動をどう進めていきますか

パネリスト

大植 栄氏  (有)メタルワーク福山(広島同友会)
榎本 重秋氏  ぜんち共済(株)(神奈川同友会)
岩附さとみ氏  愛知中小企業家同友会事務局

コーディネーター

馬場愼一郎氏  データライン(株)(愛知同友会)

グループ討論でこれからの経営姿勢を学ぶ

この分科会では障害者問題の運動課題について広島・神奈川・愛知の各同友会での実践事例を通じて深めました(パネリスト登壇予定の杉浦昭男氏(真和建装)が急逝され、代わりに岩附さとみ事務局員が登壇)。

論点の整理

【馬場】この分科会では、障害者問題委員会の運動課題をどう深めていくのか方向性を探っていきます。経営者・企業・各地同友会という個別の状況や情報交換に留まるのではなく、個別の状況を踏まえた上で「ありたい姿」の方向性を探るという観点に立ち、議論を進めていきます。

馬場 愼一郎氏
馬場 愼一郎氏
大植 栄氏
大植 栄氏

各地の活動の特徴

【大植】広島同友会の活動としては、県内5校の特別支援学校と連携してバスツアーを開催しています。このバスツアーは、雇用ありきではなく、先生方の企業への理解を深めるためのもので、会員企業の会社を見学しています。その他には、企業参観日を設け、職場実習の受け入れを行っています。

【榎本】神奈川同友会では、中小企業の立場から行政への要望・提言、就労困難問題についての勉強会、特別支援学校見学会、児童養護施設との交流などを行ってきました。委員会では障害者雇用を中心とした勉強会を開催し、障害者を始めとする多様な人材の雇用推進を図ることを通し、共生社会を実現する企業づくりの活動を進めています。

【岩附】愛知のバリアフリー交流会では、会員・障害のある人やその関係者が集い、中小企業の本物の仕事を体験し、それぞれが可能性を見出します。インターンシップは、雇用前提でなく、社員を交え実習生と企業が次のステップを見つけています。月1回の定例会は、「ここから物語が始まる(障害者雇用実践報告)」と「人間性を語る夕べ」を交互に行っています。

榎本 重秋氏
榎本 重秋氏
岩附 さとみ氏
岩附 さとみ氏

今後の運動課題

【大植】企業と社会福祉が責任を持つべき範囲は、障害のある人たちの支援の度合いによって違いがあります。私たちは企業家として、「人を生かす経営」の具現化に努め、障害者問題の取り組みを会内外に発信し「誰もが安心して暮らせる、夢の持てる地域づくり」を目指すこと。つまり、中小企業家だからこそできる、1社が1人と関わり「人を生かす経営」の総合実践を進めていきたいと思います。

【榎本】歴代の委員長や委員会活動で携わった方々の想いを、どのようにつなげて発展させていくかが課題です。もう1つの課題は、障害者問題に取り組むにあたり、同友会だけの活動になっているというものです。活動を運動に変えていかねばなりません。地域資源を活用し、行政や学校との連携を図っていくことが重要ではないかと思います。

【岩附】「1社1人関わる・愛知モデル」は、運動推進のための重要な視点をまとめた現在の到達点で、会員の実践課題、委員会の取り組み、関わりのメニューを提示しています。委員会の学びの視点に、「黙々と働くことを障害の特性で括らず、その奥にある自尊心を支えます」と入れました。その人の自尊心や向上心を見つけ、そこを応援することが大切だと考えています。

明日に向かって

【大植】「障害者問題とは何が問題なのですか」と聞かれることがあります。健常者と障害者の間には目に見えない溝があり、障害者手帳の有無で判断されます。特別支援学校より弊社に入社した人がいて、一人前の仕事をこなし待遇も正社員と同じにしています。将来的には、「障害者問題」という言葉がなくなるように、私たちは運動を進めていかなければなりません。

【榎本】神奈川同友会の2020年ビジョンでは、多様な人材を積極的に雇用するダイバーシティ経営を目指すことが謳われており、県の方針に障害者問題を組み入れることが必要です。「我々は雇用率のために雇用しているわけではない」。厚生労働省の課長を会合にお呼びした時に、そう発言した人が杉浦昭男さんでした。同友会は凄いなと、社会に知らしめたいです。

【岩附】東京大学名誉教授の故・大田堯先生は、人間が4足歩行から2足歩行になった理由を、「その気になったから」と言いました。その話を杉浦昭男さんが自社の朝礼で紹介し、その気になった理由を聞いたところ、知的障害のS君が「幸せになりたいから」と即答。杉浦さんは、出会った社員を障害の有無に関わらず、幸せにすることが経営者の責任だと言いました。

【馬場】委員会のあり方について様々な考え方を交流しましたが、杉浦昭男さんがよく言われていた「自立したいと思っていても障害ゆえにできない人もいる。その時に誰が支えるのか」。この目の前の事実を通して「人間尊重経営」に向かうために、障害者問題委員会が存在するのだと思います。

【文責:事務局次長 八田】