活動報告

協働共生委員会(12月11日)

「LGBT法」について学ぶ

堀江 哲史氏  ミッレ・フォーリエ法律事務所

「虹のモチーフ」の旗を掲示する堀江氏

差別意識に苦しむ現状

12月の協働共生委員会では、2023年に「LGBT理解増進法」が施行されたことを踏まえ、あらためてLGBTに関する基礎知識と、企業におけるSOGI(ソジ)の多様性に関する責務について、堀江哲史弁護士の報告より学びました。

LGBTなど性的少数者の置かれる現状として、日本社会では根強い差別意識により、現在もほとんどのLGBT当事者がカミングアウトも相談もできず、困難を余儀なくされている現実が示されました。

また実際の性のあり方の多様性は「LGBT」では表現しきれないものであり、近年ではあらゆる人が持つ属性の「性自認」と「性的指向」を表す言葉「SOGI」の普及が進められていると紹介されました。つまり、「LGBT」と「それ以外」の人を区別しない捉え方です。

「理解増進法」と企業の責務

次に、国内外での性の多様性に向けた動きを受け、日本で施行された「LGBT理解増進法」の概要が紹介されました。「増進法」は「性的指向や性自認を理由とする不当な差別はあってはならない」を基本理念に「相互の人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現」をめざすものであり、国・自治体・企業・学校に性の多様性に関する理解の増進を求める法律です。

その中で企業に関する規定として事業主に、普及啓発、就業環境整備、相談の機会の確保を行うとともに、多様性増進に関する施策への協力を求めている(努力義務)ことが示されました。

企業に求められる対応

LGBT当事者は概ね全人口の約5%とされ、LGBTと無関係でいられる企業は存在しないこと。また企業における性的指向や性自認を理由としたハラスメント(SOGIハラ)はパワハラに当たり、全企業にパワハラ防止法等に基づく防止義務が課せられており、すべての人がSOGIハラを行ってはならないことについて指摘されました。

また企業の対応ポイントとして「経産省事件」の判例を引用して解説され、一律の解決策があるわけでなく個別具体的事情を踏まえて判断すべきこと、アウティング(本人の意思に反してSOGIを開示する)などのSOGIハラが起きないようにすること、当面の措置で良しとせず理解の増進と措置の見直しを継続することが紹介されました。

本質は「人間尊重」の追求

堀江氏は、「多様性の尊重」とは「少数者を大切にする、特別な権利を認める」ことではなく、すべての人を1人1人大切にする、まさに「人を生かす経営」「人間尊重経営」で求めていることだと話します。今回のような機会をきっかけに、各社で多様性への理解を深め合う風土づくりを実践していくことが大切です。

具体例として、LGBTを象徴する「虹のモチーフ」を社内に掲げたり名刺に入れたりすることにより経営者がメッセージを発信することから始めていくことで、当事者にとって「味方がいる会社」に少しずつしていくことなどが呼び掛けられました。