活動報告

障害者自立応援委員会「人間性を語る夕べ」(10)1月12日

頼られる、望まれる、不可欠な存在

馬場 愼一郎氏  データライン(株)

報告者の馬場愼一郎氏

会員の人生観から学び合う「人間性を語る夕べ」。「科学性、社会性、人間性」の「人間性」が最も集約され、話題となり、自らの課題に気づく場です。

自己認識のスタート

報告者の馬場愼一郎氏は、小学校から中学校にかけて2度の転校を経験しました。都心部と郊外の風土の違いもあり、転校先では否が応でも浮いてしまい、目立ちたくない自分がいる一方、小学校高学年になると目立ちたくて行動する自分もいたといいます。その根底には「自分の居場所(存在理由)をつくりたい」という強い思いがあり、自分はこういう人間だと理屈をつけ立場をつくることに惹かれていきました。

馬場氏は、自分の行動に一貫性のある理屈を持たせ、たとえ間違えても自分の考えに立ち返り、次はこうしようと思考することで自分の身を守ってきたと振り返りました。

心情的には「孤」であり、常に斜に構え冷ややかな馬場氏でしたが、スポーツの団体競技では一転。大きな声でエネルギッシュに皆と一体で闘うことに情熱を傾ける、そんな自分を発見したのは中学校時代でした。

転機となった出来事

大学卒業後、大手企業に就職した馬場氏に大きな転機が訪れます。長髪、グラサン、皮ジャンで出勤する尖った社員だった馬場氏は、アメリカでの新事業部立ち上げの現場に海外要員育成研修生として赴きます。

しかし、現地の受け入れ態勢が未整備なため、生まれて初めて「仕事が全くないつらさ」を味わいました。その後、会社の上層部をアテンドする仕事で移動や食事を共にするうち、どんな肩書きがあろうが、1皮むけばみんな同じ人間なのだと身に沁みてわかりました。

さらに、新事業部立ち上げのため懸命に現場作業に打ち込む社員たちの姿に、「この人たちに後ろ指をさされない生き方をしたい」と強く思ったといいます。こうした経験を重ね、1年後に日本へ戻った馬場氏を迎えた周りの第1声は「角が取れたね」でした。

9年間務めた大企業を退職し、馬場氏は父親の創業した馬場洋紙店(現データライン)に戻り、紆余曲折を経て会社を継ぎました。打ち続く経営問題に立ち向かいながら、社員との信頼関係を築こうと7転8倒した馬場氏は、「社員が一番聞きたいことは、会社の行く先と自分の居場所だ」とし、自社の行動理念である「頼られる、望まれる、不可欠な存在」に込めた真意を語りました。