活動報告

中同協第22回障害者問題全国交流会 総括と展望

対等な関わりから信頼が生まれる

障害者自立応援委員会 委員長 浅井 順一氏

障害者自立応援委員長の浅井順一氏

同友会と障害者との関わり

2023年10月19、20日、愛知にて中同協第22回障害者問題全国交流会が開催されました。開催を誘致した大きな理由として、愛知同友会全体に「なぜ経営者団体に障害者問題委員会があるのか」、「同友会が障害者問題に関わる原点」を啓発したいという思いが強くありました。

愛知同友会は1962年の創立当初から障害者に関わりました。1969年に持ち込まれた授産所建設運動の相談に、会員から出資金を募り、土地を探し資材を集め、仕事をつくるなど全会をあげて取り組み、全国に先駆けて無認可の共同作業所が誕生。その後、全国に共同作業所が続々と誕生し、今日の全国組織「きょうされん」に発展していきました。

「1社1人関わる運動」を提起

こうした取り組みを経て、1986年に愛知同友会に障害者問題委員会が発足します。しかし、授産所建設運動から15年が経ち、会員数は200名から1500名を超えるまでとなり、理事をはじめ会内の理解は「委員会は、障害者が身近にいる人や、関心を持つ人の集まり」という見方が大半になっていました。

同友会が人間尊重の精神を基盤とする以上、障害者に関わる運動があったことは必然ですが、その運動の広がりは決して十分とは言えない状況が続きました。歴代委員長たちの葛藤や憤りを経て、2015年に委員長となった真和建装の杉浦昭男さん(昨年9月に急逝)が先輩たちの蓄積を踏まえ、会員企業各社が障害者と関わる「1社1人関わる運動」を掲げました。

運動推進の基本的な考え方は、次の4点でした。

(1)人間尊重を標榜する我々にとって障害者と向き合うことは必須のもの、(2)地域社会における中小企業の使命実現として障害者とその取り巻く環境と向き合う、(3)障害者雇用の促進は重要な目標ではあるが、会員の実情に応じた種々のメニューで関わりを可能にする、(4)この運動は善意や理想だけでは越えられない困難に遭遇する。その時は知識と経験を共有し会員相互の支え合いで乗り切る。

障害者との関わりのメニューは、(1)バリアフリー交流会、(2)就労体験、(3)障害者雇用実践報告、(4)人間性を語る夕べ、(5)職業訓練(仮称)、(6)学校や企業の見学会、(7)啓発、(8)調査等の活動を展開しています。

その奥にある自尊心を支える

運動の到達点をまとめた「1社1人関わる・愛知モデル」は、会員の実践課題、委員会の取り組み、関わりのメニューを提示しています。委員会の学びの視点に「黙々と働くことを障害の特性で括らず、その奥にある自尊心を支えます」と入れました。

私たちは時に「知的障害の人がコツコツ根気よく働くのは障害の特性です」と耳にしますが、大事な点はなぜコツコツと根気よく働くのか、ということです。そこには、認められたい、達成感を味わいたいという自尊心や向上心があります。そこを見逃さず応援することが人間尊重経営において大切であり、それはどの社員にも通じる視点です。

今、全国的に委員会の名称を「障害者」から変える同友会が増えていますが、愛知が委員会の名称に「障害者」を掲げ続けるわけは、この運動が置き去りにされてきた歴史的な事実があり、未だ達成できていない課題から目を反らさず真正面から取り組もうとしているからです。

ここから未来が拓かれる

第22回障害者問題全国交流会のメインテーマ「対等な関わりから信頼が生まれる」は、杉浦昭男さんの発言が発端となりました。杉浦さんは「私たちは障害者に正面から対等に向き合い、意見を聞いているか。聞いているふりをし、答えることはむずかしいと決めつけてはいないか。もしそうだとしたら、そのような人間を障害者は心から信用できるだろうか」と私たちに問いかけました。

私自身、障害のある社員は自分にとってどのような存在なのかを自問自答してきました。地区の会合や障全交の実行委員会で様々な議論を重ねるうちに、「命の価値」や「可能性を精一杯生かして成長したいという願い」は、自分も含めてみな同じなのだと確信し、『労使見解』の「社員は信頼できるパートナー」や「対等」という意味がこれまで以上に腑に落ちました。

障害者自立応援委員会ではこれまで「心を寄せる」「関わる」「応援する」という取り組みを進めてきましたが、次の一歩は「対等な立場で向き合う」とし、2024年度の委員会方針にも位置付けました。

障害者と対等に関わる――ここから委員会の明日が見え、障害者の未来が拓かれると信じています。