ここから物語が始まる
~社員が幸せになれる会社をめざして
山内 郁生氏 (株)町井製作所
素人だからこそ
町井製作所は、金型設計・製作、量産プレス、溶接まで一貫生産体制をとる自動車部品製造業です。社員数は230名で、そのうち19名が障害のある社員です。
障害者雇用は安全面を理由に行っていなかった同社ですが、山内郁生氏のリードで2020年から取り組み始めました。きっかけは競合他社の見学です。障害のある人がラインに入り普通に仕事をしている様子を見て、自社でもできるのではと考えました。
障害者雇用率は段階的に引き上げられ、ハローワークからの働きかけで仕事の切り出しから始めました。最初はパソコンや部品の取り出し作業でしたが、十分にできるとわかり、人の手を介す製造現場でもトライしてみます。その際、決めたスタンスは「依頼はすべて引き受ける」でした。障害者雇用に対し、素人の自分だからこそ学ぶ機会を増やそうと考えたのです。
障害者雇用で自分自身を知る
山内氏の同友会入会の動機は、社員が幸せになれる会社をめざしたかったからです。そのために三位一体の経営を実践し、そこに障害者雇用も位置づけました。雇用で最も重視しているのは社員への声がけです。社員たちの気づきや相談はすべて山内氏が受け、社員が不安を抱え込まないようにしています。
最初の1人が定着すると、社内の理解が進み、障害による不便さを同僚と一緒に改善する現場も出てきました。ぎくしゃくする現場は、山内氏が問題の原因を探り対処します。障害への配慮が当たり前なのか特別扱いなのかに迷う時は、経営指針に立ち返り、客観性を持った経営判断を肝に銘じています。
山内氏は、障害者雇用によって経営者の責任を痛感し、また、自分自身を知る機会になったと言います。自分は何を喜びとする人間なのか――それは、この会社で働きたいと思ってもらえること。そのために、今の自分の精一杯で1人1人に向き合い、社員の生活が充実する会社にしていきたいと報告を結びました。