活動報告

障害者自立応援委員会(8月6日)

ここから物語が始まる
~障害者雇用の実践報告

杉浦 敏夫氏  スギ製菓(株)

杉浦 俊夫氏

葛藤の末の覚悟

報告者の杉浦敏夫氏は、先代が創業したスギ製菓を継ぐ予定ではありませんでしたが、あるきっかけで入社、経営者としての道を歩み始めました。どこへ行っても「先代はすごい」と言われ、「大丈夫だろうか」という目で見られ、周囲の期待と自分の思いの間で葛藤する日々が続いたそうです。

さまざまな場で経営者としての学びを重ね、杉浦氏が至ったのは「先代が築いた礎に感謝し、その上に立たせてもらおう」という謙虚な思いでした。そして、社員が幸せになってこそ自分の幸せがある、社員と一緒にやっていけば間違いない、みんなで楽しい会社にしていこうと覚悟を決めたとのことでした。

人が一番大切という思いは最初からありました。地域に支えられ自社があり、地域で縁のあった人を採用する――そこに障害の有無は関係ないと杉浦氏はいいます。

現在、社員225名のうち、障害のある社員は7名です。最初の雇用は19年前で、安城養護学校(現・安城特別支援学校)から紹介された知人の兄弟でした。以来、ほとんどが地域のつながりからの採用です。同社は障害者雇用の義務がある企業ですが、杉浦氏は「雇用は“地域と共に”の思いから」行っていると話しました。

存在価値を尊重する

7名の社員はそれぞれの持ち味を生かし、みな違う仕事に就いています。コミュニケーションがとりにくい、雨になると休む、仕事を怠けがちなど困りごともありますが、常に「どうしたらよいか」という発想で1つ1つ工夫を重ねてきました。時間がかかり、思うようにできない分、できた時の喜びがひときわ大きくなるという体験を幾度も重ね、「雇用とは共に育つこと」と杉浦氏は確信するようになりました。

日常的には同じ部署の社員が関わるため、杉浦氏はその部署の幹部と価値観を共有することを最も重視しています。そのため同社では、人生を豊かにしていく「管理職憲章」を定め、幹部との面談に時間をかけています。「管理職憲章」の中でも杉浦氏の肝いりの条文は「部下の役割を明確に、存在価値を尊重し、成長・やりがいを醸成する」「職場環境を改善し、社員と共に幸せな人生をつくりあげていく」の2つです。

合理化、機械化の流れの中、社員の仕事が機械にとって代わられることもありますが、社員のやりがいある新規の作業を確保するよう全社で知恵を出し合っています。

最後は「社員1人1人の潜在能力を会社側が決めてはならない」と断言し、「時間をかければ必ず成長する、そしてそれは関わってみなければわからない」と報告を締めくくりました。