フランス式仕事の進め方
五十畑 浩平氏 名城大学教授

ゼネラリストのエリートとスペシャリストのワーカー
協働共生委員会アドバイザーである五十畑浩平氏による学習会が開催され、生産性向上や、今後どのような能力がビジネスに必要なのかを考えるための題材として、先進国の中でも労働生産性が高いフランスの職業制度・構造の特徴が紹介されました。
フランスの職業構造は、少数のカードル(管理職)というエリート層、中間管理職層、多数を占める一般労働者のワーカー層という3層構造となっています。カードルは大学の上にあるグランゼコールという最高学府を卒業する必要があり、卒業後は大企業や国家にすぐさま管理職として登用され、指導的人材となっていきます。
一方、ワーカー層は職業学校で訓練を受け国家資格を得たスペシャリストとしてジョブ型雇用されます。カードルが考えたコンセプトを上意下達でワーカーが実行し、また現場ではワーカーは自己裁量で仕事ができ、仕事の迅速性を高めているといいます。
職業は学校で教わるもの
フランスでは、あらゆる職業について職業学校が設けられています。職業教育は学校で行うものという制度が確立されており、職業ごとに国家資格を与える制度となっています。これにより、資格の有無だけで企業は採用判断がある程度可能で、日本のように採用してからゼロから教えるということがありません。
学校はすべて国立で無償であり、ワーカー層は別の職業学校に再び入って新たな職業スキルと資格を得ることもでき、転職を前提とした労働市場にも対応できるようになっています。また、フランスでは小学校から高校まで哲学教育が必須となっており、哲学的思考法によってビジネスに重要な課題発見能力や健全な批判的思考、合理的思考ができるといいます。
これらの制度・構造によりフランスの仕事の進め方は合理性が高いものとなり、総合的に生産性を上げている可能性があると五十畑氏は指摘しました。一方で合理性を重視するがゆえに「仕事の完成度は8割程度でよい」という価値観の社会にもなっており、仕事の出来栄えは日本と比較すれば「雑」という特徴も紹介されました。