活動報告

障害者自立応援委員会(1月10日)

障害者雇用の実践報告

ここから物語が始まる
~急かさず諦めず寄り添う

鈴木 敏弘氏  幸七園

鈴木 敏弘氏

トラブルは次へのステップ

報告者の鈴木敏弘氏は高校卒業後に地元造園会社に就職し、働き方にストレスを抱えつつ13年間勤め、31歳で独立し幸七園を立ち上げました。折しもリーマンショック直後で仕事はなく、軽トラックに脚立を乗せ、1人であちこちの現場を手伝う毎日でした。子ども3人を抱え、家族の生活不安は増すばかりで、「よく決断したものだ」と今でも思い返すそうです。

鈴木氏は現在、特殊伐採やロープを使った高所作業を得意とする幸七園と、伐採した幹を再利用する(株)gladを経営しており、これまでに知的障害、不安障害、双極性障害(躁うつ病)のある社員を雇用してきました。

知的障害のY君とは、障害者のソフトボール大会で出会い、造園の仕事に関心があると知り、実習を経てgladで採用しました。しかし、事務員とはコミュニケーションでのトラブルが多く、鈴木氏は仕事以外の場で親睦を深めようと思いつきます。

Y君の好きなボーリング大会を企画すると協力会社も参加し、自然に会話が弾みました。躁うつ病のIさんからは「じゃがいもを育てたい」と手が挙がり、社員がやってみたいことにみんなで取り組み、徐々に社内の関係性が良くなってきた手ごたえを感じています。

ビジョンを目指して

鈴木氏は小さい頃、落ち着きがなく勉強もできず、親にはかなり心配をかけたそうです。高校受験は滑り止めも落ち、先生から厳しく叱責され、自分も親も精神的にかなり追い込まれた経験がありました。それが障害者雇用につながっており、「誰だって、できることはあるはず」という信念の下、社員が仕事先でトラブルを起こすとすぐに現場に駆け付け、どうしたらできるかを説明して回ります。

Y君には就職して10カ月すると気持ちが途切れる「10カ月の壁」があり、職を転々としてきました。鈴木氏は「急かさず、諦めず」寄り添い、2年半勤めることができました。10カ月の壁を乗り越えたことを糧とし、今はY君の新たな就活を応援しています。Iさんは、真面目でやりすぎて燃え尽き、波が出てしまう状態をフォローし、正社員に登用しました。

幸七園のビジョンは「誰もが輝ける環境」です。これは経営者にしかできないと鈴木氏は言い、「大変だからこそチームワークで乗り切る喜びはひとしおで、社員が働き輝く環境をつくり出し、造園業界を盛り上げていきたい」と、ビジョンを目指す意気込みを語りました。