障害のある子どもたちの実習受入について知ろう!
同友会では、障害者との関わりの1つとして、生徒たちの実習受入企業を広げています。今回は、愛知県教育委員会の県立特別支援学校就労アドバイザーである神谷真吾氏と、MRT代表取締役の村田直喜氏を報告者に迎え、学校と企業の体験報告から理解を深めました。
以下に各報告の要旨を掲載します。
〈学校側から〉
神谷 真吾氏 愛知県教育委員会
県立特別支援学校就労アドバイザー

愛知県下の特別支援学校の今年度卒業予定者は1115名(2024年9月時点)で、そのうち企業への就職を希望する知的障害の生徒は302名います。学校では「企業への就職を前提とする実習」と「前提としない実習」がありますが、いずれも面談や学力検査等では掴めない、仕事への適性、職場での関係性、環境に適応する力を知る大切な機会となっています。
知的障害のある生徒たちに不足しているのは「経験」です。失敗したら怒られるのではないか、分からなかったら聞いていいのか、など不安を抱え、自己肯定感が低い傾向にあります。企業での実習は、通勤も含め学校とは違う経験を積み、できることが増え、責任感も芽生え、生徒の成長のためにはとても貴重な機会となっています。
「就職を前提とする実習」の場合でも、実習をしたら100%採用というわけではなく、仕事内容の妥当性、職場の理解の状況で判断し、企業と生徒の双方が「一緒に働きたい」と思える関係性を築き就職となります。
2024年4月から、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化され、社会的活動を制限しているバリアを取り除くことが求められるようになりました。生徒たちの可能性を拓く実習に、多くの企業のご協力を期待しています。
〈企業側から〉
村田 直喜氏 (株)MRT代表取締役

私は2012年に同友会に入会し、共同求人、経営指針、障害者の課題に取り組んできました。
最初、障害者自立応援委員会に参加した時は、重い課題だと感じましたが、「人を生かす経営」の背骨と聞き、雇用は無理でも関わってみようとバリアフリー交流会に参加。そこで初めて障害者の働く姿に触れ、理解を深めるきっかけとなりました。
経営指針に取り組み2年目に、経営理念に「社会性、科学性、人間性」の要素を含め、適材適所と雇用を位置付けましたが、この時点で障害者は対象としていませんでした。その後、精神、知的、聴覚の障害の方を実習で受け入れ、さまざまな特性があることを知っていきました。
2016年度経営指針書のビジョンに「障害者の実習受入」を含め、翌年「障害者雇用」を位置付けました。ビジョンに示すことで覚悟も決まってきます。社員たちは、まずは様子見でしたが、回を重ねるうちに仕事の切り出しもできるようになりました。
特別支援学校のO君を実習で受け入れた時、現場との齟齬も多くありましたが、課題を1つ1つ学校に返し指導してもらい、2年前に採用に至りました。昨年、母校の後輩が実習に来た時、熱心に仕事の説明をするO君の姿に、次の採用に向けての意を新たにしたところです。