活動報告

障害者自立応援委員会 人間尊重を深める全県学習会③ 2月4日

「他人ごと」から「自分ごと」へのシフトチェンジ

障害者と関わる それぞれの物語

2023年度に愛知で開催した障害者問題全国交流会の学びから「人間尊重を深める」全県学習会をシリーズで開催しています。今回は、矢野純也氏、遠藤かつひこ氏、後藤伸氏の実践報告の概要を紹介します。

経営者だからできること

矢野 純也氏  MOVIRIDGE

矢野 純也氏

私は2022年に会社勤めをしながら動画制作の事業を創業、翌年独立し、同友会に入会しました。入会した当時、会員の皆さんが持つ熱意をひしひしと感じ、自分もこんな経営者になりたいとあこがれを抱きました。バリアフリー交流会に初めて参加したのは2024年です。当時は独立して1年を過ぎた頃でしたが、写真撮影の体験ならできると思ったのです。

私が大学生の頃、母が病から全盲になり、障害者の生きづらさや不自由さを身近に感じていました。弱音を言わない母だったので、どう関わればよいかを自分で考えながら一緒に生活していました。母の介助や家事をしていた姉は、人見知りが激しく就職に苦戦しており、その姿から「働きたいけれど一歩踏み出せない人たち」の存在も意識するようになりました。姉は今、当社の動画制作事業で、幼少期から好きだったイラスト・アニメーションの分野で活躍しています。

私は「経営者になることは、誰かのために何かをすること」だと考えています。経営するなら人のために尽くす、その対象が「地域」なのか、「困っている人」や「不自由な人」なのかはさまざまですが、損得や利害ではなく、自ら関わりを考え、できることから1つずつでも提供したいと思っています。それは会社員ではできず、経営者だからできることなのです。

「やらない」選択をするのは簡単ですが、「やってみる」ことが大切です。私は、バリアフリー交流会に参加して、自分の中の当たり前を見直す自己変革のきっかけになり、参加者の「やりたい気持ち」に寄り沿うことで自社の労働環境を考え、自主性を育む気づきを得ました。

経営で大切にしているのは、関わる意識・尽くす気持ち・やってみる精神の3つです。失敗した経験や成功体験が人を成長させていきます。これからも同友会で多くの学びを得て、事業を成長させ、世の中に還元していきたいと思っています。

この子らを世の光に

遠藤 かつひこ氏  (有)遠藤技研

遠藤 かつひこ氏

経営をしっかりと学ぼうと2016年に同友会に入会しました。2年後、経営指針作成編で採用の相談をすると、障害者雇用のヒントを頂きました。さっそく障害者自立応援委員会に参加し、障害者と向き合う実践報告を聞き、経営者の愛情の大きさ、心の広さに圧倒されたことを覚えています。

翌年、滋賀で開催された障害者問題全国交流会に参加し、今も頭から離れない一文に出合いました。それは「この子らに世の光を、ではなく、この子らを世の光に」というもので、どうすれば障害のある子たちが光になるのかと疑問が湧き、すぐには答えが見つかりませんでした。

その後、障害者のことを見たり聞いたりするうちに、とてもしっくりくることばに出合いました。特定の分野で優れた能力を持つ「ギフテッド(神様からの贈り物)」です。障害のある子たちの能力を見つけ、伸ばし、輝かせる世の中は、誰にとっても優しい住み良い世の中になる、それが「この子らを世の光に」の意味だと納得できました。

振り返れば、保育園時代から、障害のある友達がいました。アルバイト先にも、経営者仲間にもいました。こうした出会いの中で、人は環境と努力で成長できることを教わってきました。

社員には安心して働いてもらいたいと思い、障害児のいる社員と一緒に愛知同友会のバリアフリー交流会に参加しています。子どもがいろいろな仕事を体験し、得意な事、好きな作業が見えてくると、社員も家族も私も視野が広がり、不安が和らいできます。

障害者は、日本国民の約10%と言われています。世の中の困りごとを解決するために経営をしている我々が、障害者の存在を素通りしては、理念を実現することはできません。これからも障害者と対等に共存できる社会をめざし、学び続けていきたいと思います。

人として認め合う

後藤 伸氏  (株)リクラス

後藤 伸氏

私は29歳で脱サラ後、同僚と起業し33歳で社長に就任、翌年同友会に入会しました。入会当時は、生きていくために儲けることが最優先で、同友会で言われる「顧客満足」「社会貢献」などはきれいごとにしか聞こえませんでした。3年程は他人の意見を受け入れられず頑なな態度をとっていましたが、魅力ある会員と出会い、徐々に耳を傾けるようになりました。さまざまな会合に参加するうち「経営の目的は儲けることだけなのか」と自問するようになり、2005年に自分自身のことばで経営理念を確立しました。

障害者との関わりを意識したのは、2023年度愛知で開催した障害者問題全国交流会でした。それまでは「障害者」と一括りにし、自社には関係ないと決め込んでいました。「見えない生産性」の話を聞き、互いを認め、支え合うことで組織の力を発揮するという価値観に触れました。

愛知同友会のバリアフリー交流会では、障害のある社員や生徒たちと交流し、身近に感じるようになりました。委員会の定例会では、障害のある社員と向き合う実践報告に度肝を抜かれ、その経営姿勢を羨ましく感じることもありました。こうした体験を通じ、人として認め合う価値観を持てたことは、私にとって大きな変化でした。

当社には、コミュニケーションが苦手で仕事のミスが多く、周囲から不満が出ている社員がいました。孤立させないよう声をかけ、すれ違いざまに冗談を言い、厳しい上司から席を離すなど環境を変えると、徐々に本人の表情が和らぎコミュニケーションがとれるようになり、その変化を嬉しく思いました。他にも問題を抱える社員はいますが、諦めず成長の可能性を探っています。もし、委員会に参加していなければ、きっと違う対応をしていたでしょう。

今年は当社のクレド(行動指針)を見直し、「全ての人が自分らしく輝ける職場環境」「多様な価値観や考え方を尊重」を新たに加えました。時間をかけて社風を育てていこうと思っています。