【特集】労使見解50年
あてにし、あてにされる関係づくり
『労使見解』に照らして人の課題に向き合う
北中 一朗氏 (株)コムライン

第25期社員と学ぶ共育講座・第1講座での北中一朗氏の報告概要を紹介します。
強引に規模を拡大
私は2008年に入社した2代目です。当社は現在、回転ずしチェーン店を主軸に飲食店を手掛けていますが、先代は鉄工所で創業をしました。
時代背景や、業態を変えてきたこともあったと思いますが、私の入社当時はトップダウンの組織で、経営者や部長の言うことを聞くだけの指示待ち社員が多くいました。それは、経営者が社員を自主的に動くよう教育してこなかったことが原因です。
また、規模の拡大を続け、社員が離職すれば採用する、パッチワーク人事をしており、社員が定着し、成長して規模が大きくなった、というよりは何とか規模を拡大してきた会社でした。

とことん社員と向き合う
入社した当時、「会社を変えなくてはいけない、後継者として社員にも認めてもらわなくてはいけない」との強い想いから焦りが生じ、全て1人でやっていました。しかし、思い通りに動いてくれない社員を見て、ようやく1人では会社は変えられないということに気が付き、社員をあてにする大切さを認識しました。
そして同友会で出合った『労使見解』に照らして自社の人に関する課題を分析し、1つ1つ改善をはかっていきました。
まず、社員が疲弊している姿を見て、働く環境の改善から着手しました。働きがいや誇りを感じられるのは、働く環境が整っていることが前提です。残業時間が長く、世間並以下の給料であれば、将来の見通しも立たず、社員の定着はあり得ません。
評価制度も作りました。社員が生き生きと働くための目標設定、上司と部下、社員と向き合うための手段にしています。また、社員が成長するには、ベクトルを合わせ、1人1人と向き合うことが大切です。よって、想いを伝える際には「わかりやすく」、「要点を絞る」、「考える余地を残す」ことを意識しています。そして、何よりも大事なのは、社員が戸惑わないためにも、経営者と幹部が「同じことを言う」ことにあります。
これまでも環境の変化はありましたが、乗り越えられたのは社員のおかげです。1人1人の可能性を発揮できる環境づくりが会社の可能性を広げることにつながります。時代的に多様化が進んでいるといわれていますが、それはあくまで相対的に見た場合の話であり、1人1人と向き合えば、さまざまな違った考えがあっても関係なく、さらに社員と向き合うことが求められていると思います。
自ら判断できる、自ら成長したいと思える環境づくりは経営者の責任です。そして、あてにし、あてにされる関係を構築するには信頼関係が不可欠です。社員との対話を大切に、共に良い会社づくりをしていきましょう。