後継者としての在り方
~経営者として覚悟を決めた瞬間
穂谷 あかね氏 (株)アウテック松坂

まさか自分が会社を継ぐなんて
「愛彩」8月例会ではアウテック松坂の穂谷あかね氏に報告いただきました。
穂谷氏の両親が創業した同社は、戸建住宅の屋根工事や外壁工事を主力に、近年は太陽光発電にも力を入れる建設会社です。過去にはバブル経済の崩壊により、主要取引先からの突然の契約打ち切りで家業は存続の危機に直面。社員も離れ、仕事もゼロという中、家族を守るために穂谷氏は会社員を辞めて家業に戻ります。その後、「他人には任せられない」という父の判断で後継者に選ばれましたが、当初は経営者になる覚悟はなかったといいます。
自身の弱さと向き合い決意を固める
当時の穂谷氏は人見知りで話下手、経営知識もない自身に大きな不安を抱えていました。そんな時に出会ったのが愛知同友会で、「経営者はここまで学び続けているのか」と衝撃を受けます。その後、自身の根底にある弱さと向き合う中で「5年間だけ全力で挑戦する」と腹をくくり、営業担当不在を補うホームページづくりや新規取引先の開拓に奔走。社内改革にも力を注ぎ、個人面談や社員旅行、研修制度の導入を進めました。
一方で、建設業に携わる女性を集めて「愛知ガテン女子推進委員会」を設立。作業着ファッションショーは新聞各紙に取り上げられ、大きな反響を呼びました。さらに、社員や協力業者へ感謝を直接伝える「突撃ありがとう賞」、社員の家族に贈る「笑顔のカレンダー」など、独自の施策を展開。「関わる人をパートナーとし、誇りを育む」経営を実践し続けてきました。
地域から認められ、誇りを持てる企業へ
こうした取り組みはやがて実を結び、新卒採用の実現や経済産業省からの「事業継続力強化計画」認定につながりました。近年は地域の子ども向け体験学習の実施や中小企業白書・小規模企業白書(2025年版)への掲載など、社会からも存在を認められる会社へと成長。現在も、社員1人1人が「自分の命を守りながら、安全かつ迅速に災害復旧作業ができる」ことを目標に、全社員の防災士資格の取得に挑戦しています。

「絶対に諦めない」
事業承継は経営者なら誰もがいつか向き合う課題です。それは単なる引き継ぎではなく、「何を守り、何を変えるか」を決断する経営そのものでもあります。穂谷氏は最後に「事業承継は経営者の最大の責任。絶対に諦めない気持ちで、(1)事業承継の計画、(2)理念の承継、(3)経営指針の承継に取り組んでいきたい」と力強く語り、参加者に深い感銘を与えました。
(株)Cross Path Vision 山本 いづみ