自主性を支え、生きる力を育む実践に学ぶ

人間尊重は自主性の尊重から始まり、社員1人1人の自主性が育つことで、企業の「自主・民主・連帯」が深まり成長の源泉となっていきます。経営者は社員の自主性をどう支え、生きる力を育むかをテーマに2回シリーズで学習会を開催しました。その概要を紹介します。
【第1回】たまあし大学見学会(7月24日)
●講師/野口 恵美氏
NPO法人たまごのあしあと・理事長
高校卒業後の進学率は一般の高校生で70%強、特別支援学校高等部を卒業する知的障害の生徒たちは2%弱で、ほとんどが一般企業や福祉事業所で働きます。卒業後の選択肢は限られ、「もっと勉強したい」「自信をつけてから社会に出たい」という願いは充分に叶えられない現状があります。卒業後は、友人と気軽に連絡を取り合うことや、趣味を楽しむにも制約が多く、次第に職場と家とを往復するだけとなり、悩みを話せる同年代の相談相手もなく、孤独感を抱えていきます。
そこで野口恵美理事長は「学ぶ」「楽しむ」「仲間とつながる」ができる生涯学習の場を設けました。その名称を話し合った時、卒業生たちの大学への強いあこがれを知り、「たまあし大学」と名付けることになりました。
「たまあし大学祭」はすべてみんなの自治で行い、そこで見られる主体性や自主性には目を見張るものがあります。野口理事長は「わくわくした思いを持ち、自らを大切にして生きる、そのために学びがある」と考え、音楽、調理、ゴスペル、パソコン、ムーブメント、芸術、囲碁、国語・数学の学習など、多種多様な授業を設けています。その中には、「この人が幸せになるために必要な課題は何か」から始めたものもあります。
見学会当日は、音楽の授業で練習した「ウクレレ」を披露いただき、参加者は生きる力の源泉について考える機会となりました。
- たまあし大学ホームページ
http://www.tamaasi.com/html/college.html
【第2回】教育現場の実践から学ぶ(8月18日)
●講師/近藤 幸子氏
名古屋市立沢上中学校 通級指導教室・教員

特別支援学校で長年、就労支援に携わってきた近藤幸子先生から、中小企業へ就職した2人の事例を報告いただきました。
(1)「意欲が感じられないと映った」Aさん
Aさんは就職して2年目です。学校では場面緘黙の傾向があり、コミュニケーションが苦手でした。仕事は指示どおりできますが、あいさつの声が小さい、自分から話しかけない、反応が乏しいなどの理由から、企業側には意欲が感じられないと映りました。一方、学校側が実習中の本人を見ると、学校にいる時より明るく、生き生きと仕事をしていました。
本人の頑張りと企業側の受け止めのギャップを解消するため、学校では、声の大きさを数値で確認する、相手より先にあいさつする、1日1回自分から先生に話しかける練習をし、行動の「型」を身につけていきました。その結果、周囲の反応が変わり、本人の自信にもつながりました。内面の意欲に直接働きかけるだけでなく、多様なアプローチが内面を育てることを学びました。
(2)「一生懸命なのに周囲を戸惑わせた」Oさん
Oさんも就職して2年目です。非常に真面目でガッツがある一方、不器用さ、周囲の状況を読み取る難しさ、一度覚えたルールを変更しにくい特性がありました。
学校では「5分前行動」「休憩時間もコミュニケーションを取る」「分からないことは積極的に聞く」と教えており、Oさんはそれを忠実に実行し、休憩中に寝ている社員を起こして午後の作業内容を尋ねるなど一生懸命でした。しかし会社側からは「仮眠中に何度も話しかけられるのは困る」と不満が出てきました。一般的に正しいビジネスマナーでも、本人や職場にとって望ましいとは限りません。支援側が現場と対話し、本人が理解できることばに翻訳して調整することの重要性を学びました。
2回の学習会からの学びは、自我を確立する過程の大切さ、助ける側と助けられる側に分けるのではなく対等に関わること、個別に課題への仮説を立て、丁寧に伴走することでした。閉会のあいさつで障害者自立応援委員長の高瀬喜照氏は、自らの経験に照らし「社員の自主性を支えるには手探りの難しさもあるが、その関わりの中にこそ経営者の幸せや喜びがある」と結びました。









