顔と顔が見える関係
江端 貴氏 (株)愛農流通センター
1982年より30数年もの間、農業者を中心に農産物生産に特化した「生産者組合」と、一般消費者の視点で新しいニーズを提案する「消費者の会」の双方を流通業で繋ぎ、組織として発展させてきた愛農流通センター。同社の経営実践から、これからの農業経営で必要なことを学びました。江端貴氏の報告の概要を紹介します。
双方の関係を大切に
同社では「生産者と消費者の顔が見える関係を大切にする」を経営理念に掲げています。これは、生産者と消費者を直に結ぶことによって、地域の困りごとを組織で解決するためです。2013年から中長期ビジョンの作成を始めており、「組織の目指す像(価値観)を全社で具体的に共有することは、農業分野でも必要」と江端氏は言います。
当初は社員から「よく分からない」との意見が出ていました。それからは自社を取り巻く情勢を踏まえ、世の中の困りごと(ニーズ)のなかで自社が解決できること、解決していきたいことを、全社でひとつずつ具体化しています。
不確実性を逆手に
農産物は気象や土地の条件により、収穫量の変動が避けられません。消費者の要望に応えるには、農産物の生産量を安定させることが必須の課題です。
しかし同社では、その収穫量の不確実性を逆手に取ることで、少量でも収穫できた農産物に付加価値を付けられる、小ロットの自社ブランド商品開発に力を入れています。経費削減のために同様のことを行う会社が多いなか、同社は1次産業の農業をどう成長させるかに主眼を置き、事業を通じて地域での農業の担い手育成に寄与しています。
農業を成長させる6次産業とは、農産物生産の1次産業、その農産物を加工する2次産業、そして最終的に加工品を販売する3次産業を、1次産業が主体となって包括的に取り組むことですが、それぞれを別個に成功させようとすると失敗するといいます。
生産・加工・販売の相互関係に注目し、消費者ニーズを実現する加工技術の向上や開発、そのニーズを満たす農産物の育種と生産方法の改善等を考えることが大切なのです。常に改善を繰り返してより良いものを生み出す人間集団を、同友会の労使見解に基づきつくっていくことが重要だとまとめられました。