会長 杉浦 三代枝
愛知中小企業家同友会の皆さま、明けましておめでとうございます。ご家族の皆さまと共に、新年を迎えられたことと拝察いたします。
2015年もめまぐるしいスピードで情勢が変化し、原発の再稼働、安保関連法案の成立、労働者派遣法の改定など、経営だけでなく国の在り方について考えさせられる1年でした。また排ガス不正、杭打ちデータ改ざんなど、利益を追求するあまり倫理観や道徳観が軽んじられ、顧客に迷惑を掛けるだけでなく、社会的信用も失ってしまう事件がありました。そこには「なぜ経営しているのか」「なぜこの仕事をしているのか」などの理念が抜け落ちていたのかもしれません。そこで新年にあたり、改めて経営理念に必要な3つの要素(科学性・社会性・人間性)について考えてみたいと思います。
「科学性」(客観的な裏付けがあること)
同友会理念には3つの目的(良い会社・良い経営者・良い経営環境を目指す)があります。そのうちの1つである「良い会社をつくる」。この目的の実践は、経営理念と労使見解を基にした経営姿勢の確立を提唱し、同友会らしい黒字企業を目指すことを意味します。最近では、なぜ会社を経営しているのか、その目的が明確でない経営者が多いようです。まずは、経営の目的をしっかりと考えたうえで、自社の経営理念をつくり、経営方針を作成し、科学性でいちばん大事な経営計画を立てることが大切です。これらの理念・方針・計画が経営指針となり、それを基に実践し利益を出していくのです。そして地域で必要とされる企業を目指していただきたいです。
「社会性」(社会的責任を全うしていること)
「国民や地域社会と共に歩む中小企業」、これをひとつの理念として同友会は掲げています。私たち中小企業の使命は、優れた製品やサービスを提供することで人々の暮らしの向上を目指すことにあります。さらに重要なのは、地域の雇用を守り、地域経済の繁栄と発展に努力し、地域社会の担い手となることです。地域から「あてにされる企業」になり、地域経済の活性化に積極的に提言したり、行政・経済団体・金融機関・教育機関と連携し、地域おこしを共に進め、国民一人ひとりの幸せを大切にする経済社会をつくっていく必要があります。
「人間性」(社員の人格を尊重すること)
同友会の希求する理念は「人間尊重の経営を目指す」ことに収斂されます。これは経営の原点であり「社員の幸せの追求」につながります。社員と「共に育つ」考え方で学び、信頼できるパートナーとして出番をつくり、その能力を発揮できる企業づくりを目指す。このように、人間を人間として認め合い、誰でも無限の可能性を秘めた存在であると位置づけることは、とても大切なことだと思います。「人間尊重経営」を原点にし「労使見解」の精神に学び、「人を生かす経営」の実践を進めていくことが肝要です。
自社では、「人間尊重経営」の実践として、社内行事でも取り組んでいます。現代の若い人には、「感動」や「感謝の気持ち」が持てないという人が増えてきました。そこで弊社の経営理念として「感動・感謝・思いやりの心」を掲げ、この気持ちを大切にしてほしいという願いを込めています。他人のために何ができるか、「人の喜びを自分の喜びにする」。そんな実践を社員と共に学んでいきたいと思います。