活動報告

平和を考える連続学習会―第3講(6月27日)

平和でなければ中小企業の繁栄はない

三宅 昭二氏  三宅産業(株)取締役会長(中同協顧問・香川同友会相談役)

平和こそ、中小企業の存立基盤~戦中・戦後に思いを馳せる参加者

「平和を考える連続学習会第3講」が開催され、中同協顧問の三宅昭二氏に報告いただきました。その概要をお伝えします。

すべては「勝つ」ために

戦争は「勝つまで」の掛声と共に、総力戦となり、「前線」と「銃後」の区別なく、すべての国民が生命・財産の危機に曝され、さらにすべての自由を奪われました。個人の人格も「戦争に勝つため」という絶対的価値の前では当然のごとく無視され、非人間的な世界に追い込まれていったのです。

戦時中は建築物、車両、船舶、機械、馬などあらゆるものが徴用され、大切な家族までも、赤紙1枚で軍隊に連れ去られました。

私の家は先々代からの小さな石炭屋を営んでいましたが、戦争の始まりとともに戦時統制が強化され、仕入れも販売も自由にできなくなり、店主の母も「配炭公団・四国配炭局」へ勤務する身となりました。

最終的には、法律のもとで多くの平和産業を担う中小企業が合併・統合・廃業に追い込まれ、当時100万人を超える経営者が労働者化されたのです。

平和でなければ中小企業の繁栄はない

戦争で、日本の国土はもとより経済社会は徹底的に破壊されました。戦後、中小企業や個人商店は自主・自立の精神で立ち上がり、生産や流通を再開しましたが、1946年に「傾斜生産方式」による経済復興政策が開始されたことで、資材・資金・電力不足などに直面します。さらに戦時補償特別税と財産税による徴税強化で、中小企業経営は戦後統制に置かれました。

1949年のドッジ・ラインにより、経済はインフレから大きくデフレに振れました。資金の引き上げや貸し渋りによる企業の倒産、失業の増加で日本経済はガタガタになります。私は高校卒業後、運転資金30万円の融資を受けるため、毎日銀行へ通いましたが、中小企業には容易に貸してくれませんでした。

こうしたなか、各地で中小企業団体が結成されました。その多くを結集したのが、同友会の前身の「全日本中小企業協議会(全中協)」です。

従業員の人格尊重と自主的相互協力が掲げられるなど、先の大戦の反省に立ち、平和でなければ中小企業は繁栄できないことを基本認識に運動方針が出されています。まさに、自主・民主・連帯の中で企業は育っていったのです。

自らの体験を語る三宅昭二氏

自らの体験を語る三宅昭二氏

「平和の主体者」に

平和は、民族や宗教の対立、主義主張を超えて、全人類に絶対に必要なものです。戦争体験者は憲法9条を守ろうと言いますが、それは悲惨な戦争体験から武力行使を永久に放棄することの価値を導き出したからです。

しかし、戦争はなくなりません。紛争を粘り強い話し合いで治めることを妨げる力がどこかで働いています。それは、戦争によって利潤を得る軍需産業があるからではないでしょうか。戦争で金儲けができる経済そのものに問題があるのです。

自分の子や孫、社員やその家族、地域の人々の最も尊い命・財産・文化・芸術が破壊され、罪のない人と人が殺し合う戦争は絶対にしない、させない。また、テロのような行為をさせないために、私たちは傍観者でなく、自分の頭で考え、行動できる「平和の主体者」とならなければなりません。活発な議論を期待します。