活動報告

第49回中同協総会特集(2)第16分科会

【第49回中同協定時総会 第16分科会】
組織の自主運営こそ、経営者の学び

~同友会と企業経営とに不離一体で取り組んで

高瀬 喜照氏  (株)高瀬金型 (愛知同友会副代表理事)

同友会と経営を不離一体で取り組んだ報告

衝撃を受けた学生の成長

高瀬 喜照氏

弊社は主にプラスチックの金型製造や射出成型をしています。私が24歳の時に脱サラして創業し、3年目からは弟も入社しました。同友会入会後も職人として現場で仕事をしていて、同友会の目指す社員を増やし企業を永続的に発展させていくことはあまり理解できませんでした。

入会して6年目、地区会長を務めていた頃は、中途採用等で20名の社員を雇用していました。しかし、恥ずかしながら社員との信頼関係が築けておらず、対立することもよくありました。そんな時、同友会でインターンシップに参加し、大学生を受け入れました。

初日は経営者が経営理念を伝えることになっています。弊社に来てくれた女子学生が自分の話を真剣に聞く姿を見て、驚いたことを覚えています。学生は2週間を通して仕事に取り組み、研修後の顔つきはまったく違うものになっていたからです。この経験から新卒採用の必要性や、自分の思いを伝えて人を信頼する大切さを学びました。

現在、社員数は98名となり、仕事を任せることが多くなっても経営自体は楽ではありません。それでも同友会で学び、良い会社にしたいという思いで経営に取り組むことができ、充実しています。

人間尊重の経営こそ自主性の発揮

私たちはよく「同友会運動」と口にしますが、本当に同友会の目指す企業像に近づけているでしょうか。同友会では人間尊重の経営を推進し会社を良くすることが、同友会運動の推進に繋がります。社員の生活を保障しつつ、人を生かす経営を実践しなければなりません。その中でも「思いやり」は、人間の中にある自主性から生まれると私は考えています。

自社の指針書には、「何故この会社で働いているのか」「仕事はどういうものか」「会社は誰の物か」「何故会社を大きくしていかなくてはいけないのか」という4つのテーマがあり、ここでも社員の自主性を大切にしています。同じ会社で仕事をしていく仲間を増やしたい、仕事に対して誇りを持つ、社員一人ひとりの気持ち次第で自らやりたいと思ってくれるはずです。

また、仕事に対するやりがいは、自身で見つけてもらうしかないと思います。だからと言って社員任せにするのではなく、経営者はやりがいに触れられる場を用意しなければなりません。

社員に大切にしてもらいたいのは、「今後自分がどう生きていきたいのか」ということです。よく意見として出てくるものは「楽しく生きたい」など漠然としたものが多いのですが、具体的にどうしたらその生き方に近づけるのか考えてもらっています。

なぜ「自主運営」なのか

地区会長を務めて2年目、総会で社員との関係性など中小企業が抱える課題をテーマにした演劇をやろうと提案しました。難色を示す声も少なからずあったのですが、賛同してくれた方たちと練習を重ねました。私たちが一生懸命に練習している姿を見て、次第に賛同してくれる方が現れ始め、熱心に取り組めば人はついてきてくれるのだという体験をしました。

同友会に入り、一番感じているのは、伝えることの難しさです。同友会理念は自身の体験からしか気付くことはできませんし、それに気付くための自主運営だと思います。これは会社で社員がやりがいを見つけていくことと非常に似ています。同友会の良さを理解するためには、経営者自身が何よりも経験して、学ばなければなりません。その上で、会員自身が主体的にさまざまな体験をすることが、会社を良くするための絶対条件だと思います。

成長は難しいことの挑戦から

同友会では、地域に良い会社を増やすための増強活動が盛んになってきています。それに伴い「同友会とはどんな会なのか」を理解していない会歴の浅い会員が増えたように思います。また、同友会の学びの本質を知っている「語り部」が減り、その分、会員が語り部と接する機会も減っていると思います。

同友会には様々な学びの場がありますが、皆さんは参加していますか。地区だけでは解決できない課題は、専門的な委員会へ参加することで実りのある学びができます。良い会社をつくるために、自主的に学びの場に参加してください。

入会してから私が本当に問題だと感じていることは、「問題があっても気付かない。また問題と向き合わない」ことです。社員をどう育てていくのか、モノづくりという伝統の産業とどう関わり、支えていくのかなど、各社で抱える課題はさまざまです。しかし、同友会員は自ら難しいところへ挑戦していかなくてはなりません。残念ながら、会内を見ても、自ら難しいことに挑戦している方は少ないと思います。業界全体が縮小傾向、後継者不在、元請けからの要求が高度になるなど、経営環境に対応しながら継続して取り組むことが、企業の永続的発展を目指す上では必要です。

あてにし、あてにされる関係

愛知同友会の活動の1つでもある小グループ活動(以下グループ会)も、昔は定着していませんでした。地区会長を務めた時、毎月必ず1回は開催して会社の話をするようにし、例会運営のためのグループ会には絶対にしませんでした。お互いが切磋琢磨していく中で関係も構築され、「あてにし、あてにされる関係」ができてきます。

そしてグループ会の中で出た課題を取り上げた例会を会員自らつくり上げることにより、会員の悩みに沿った学びの場となっていくのです。同友会の例会の特徴である経営体験報告も、会員自らが報告者に立つという自主性、主体性の発揮の現れです。

また、グループ会は会員にとって一番身近な存在であってほしいと思います。当時、35名の地区を7名ずつのグループに分けました。例会よりも気軽に集まれる機会をつくり、お互いの悩みも話し合い、解決することが目的です。

そこで、しっかりと自分の意見や体験を話すことがスタートになります。また、お互いの会社を訪問しますので、普段とは違う発言も出ます。経営者の抱える課題を素直に出し合い、解決の場をつくっていった結果が、現在の愛知同友会の小グループ活動に繋がっていると思います。

自主運営は自社の課題に気付く機会

会の自主性とは

そういったことから自主運営とは、自分に必要なことに気付いてもらう重要な機会をつくるということなのです。「なぜ自主運営を目指し、現在しているのか」というと、自らの課題に気付き、自主的に解決を図ることを学ぶためです。普段、当たり前のように社員に向かって「自主的にやれ」などと言っていませんか。その経営者が、同友会では事務局員が全部設営したものに参加するというお客さん意識では、本当の学びができるでしょうか。

同友会は、大企業偏重にあった時代に中小企業の経営者が自ら立ち上がり、会員の自主性に基づいて成り立っている団体です。先人の積み重ねがあるからこそ現在まで存続し、会員数の増加で会内外からの期待も高まっています。その中でも自主運営は経営者としての学びの場であり、会の主体性の現れです。だからこそ、会員には語り部であるとともに、会の主体性を保持していただきたいのです。

今の時代、さまざまな学びの場があります。その中でも、同友会の学びは経営者の生の悩みに沿ったものであり、それをつくり上げていくのは会員です。「励ましあい、学びあい、高めあい」ができる仲間と共に、強靭な経営体質の企業づくりに励んで参りましょう。

【文責 事務局・橘】