活動報告

愛知同友会景況調査 2020年5月末「急降下する景気」

最大の下げ幅となった「業況判断DI」

業況判断DI

愛知同友会では四半期(3カ月)に一度景況調査を行い、経年変化を分析しています。今回の調査では、主要指標が大幅に下落し、雇用動向の「過剰」超過幅が拡大しています。米中対立・消費増税で落ち込んだ景気に新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、その影響が全産業に波及してきています。

6期連続の悪化

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、「今月の状況」が前回の△2から△40へ38ポイントもの大幅な悪化を記録しました。これは「良い」と回答した企業が13%減少したことに加え、「悪い」と回答した企業が25%もの著しい増加を示したことによります。これで6期連続の悪化です。「前年同月比」も△20から△57へ37ポイントもの急激な落ち込みとなり、「次期見通し」も△5から△40へ35ポイントの大幅な悪化を見込みます。「前年同月比」は6期連続、「次期見通し」は7期連続の下落です。

今回の「業況判断」全指標の大幅な悪化は、いずれも調査開始以来最大の下げ幅です。新型コロナウイルス感染症の国内外での拡大による世界経済の著しい冷え込み、政府や自治体による自粛や休業の要請に伴う需要の「蒸発」は、かつてない規模で景気を急落させました。さらに次期見通しの大幅な悪化は、中小企業経営者の多くが「この状況の早期改善はない」と考えていることを示しています。

経常利益DI

全業種で大幅な悪化に

業種別の「業況判断DI」は、「今月の状況」が、建設業8→△30、製造業△28→△54、流通業△10→△48、サービス業17→△28。「前年同月比」は、建設業△21→△53、製造業△46→△68、流通業△28→△63、サービス業3→△47。「次期見通し」も、建設業2→△33、製造業△32→△62、流通業△12→△50、サービス業15→△21と、全業種とも20ポイントから30ポイントの著しい悪化となりました。

分析会議での発言ならびに文章回答からも、業況悪化を訴える声が聞き取れます。全業種のなかでもっとも大きく落ち込んでいる製造業から聞かれたのは、「自動車関係、航空機関係が総崩れ」、「取引先工場の稼働停止により4月の売上げ40%減、5月は70%減」といった極めて厳しい声です。半導体製造装置関係についても、「3~4月は韓国向けの部品が動いていたが、現在は在庫調整に入っている」と、厳しい現状が報告されました。

休業協力要請の対象となった個人消費関連からは「4月60%減、5月70%減」など、その影響の大きさを物語る状況が報告されました。これまで愛知県の景気を牽引してきた建設業からは、「賃貸マンションなどは動いているが、工場などの設備投資関係、飲食業の内装や介護施設関係の工事は厳しい」、「受注残があるので当面は大丈夫だが、新規案件の契約ペースが前年比からすでに2~3割落ち込んでいる」など、先行きへの強い懸念が聞かれました。

雇用動向DI

雇用状況の悪化がもたらすもの

今回の調査では、「雇用動向DI」の「今月の状況」が△32→△1、「次期見通し」も△29→△2へ「不足」超過幅が大きく縮小しました。雇用状況の急激な変化が確認できます。「過剰」と「不足」の差がこれほどまでに接近したのは、東日本大震災直後の2011年5月調査で「過剰」超過に振れて以来、9年ぶりです。雇用情勢の悪化は消費の低迷に直結しますから、今後の動向に要注意です。

新型コロナの感染拡大は落ち着いてきましたが、それに伴って景気がV字回復するかといえば、それは難しいと思われます。「向こう半年分の必要資金は融資で確保した」と安堵する経営者が少なくありませんが、それでも予断を許さない状況が続きます。また、「ウィズ・コロナ」下の新たなビジネスへの対応も急がなければなりません。景気動向を注視しながら、賢明な経営の舵取りが求められます。

設備過不足DI

[調査要項]

調査日 2020年5月18日~5月27日
回答企業 1401社(建設業240社、製造業330社、流通・商353社、サービス業478社)
平均従業員 27.8名