活動報告

中部経済新聞 新春座談会「コロナ禍でも活動は止めない」(12月15日)

自由な発想と創意工夫で

12月15日の座談会風景(中部経済新聞社内)

ポストコロナの社会は

ポストコロナの世界は「新常態」といわれ、過去の延長ではなく非連続の環境になることが予測されます。ポストコロナの社会はどのようになり、経済活動はどう変わっていくか。時流を俯瞰し、中小企業の役割を再確認し、ポストコロナのあるべき働き方を展望するため、中部経済新聞の「新春座談会」が開催されました。

この企画は2003年より毎年行われているもので、今回は中部経済新聞の3面にわたるものです。

「仲間と共に乗り越える~ポストコロナの働き方」をテーマに、伊藤正史氏(愛知労働局長)、磯村太郎氏(サン樹脂)、坂野豊和氏(まるは)、山田博比古氏(山彦)をパネリストに迎え行われました。

左から坂野氏、磯村氏、伊藤氏、山田氏

あるべき働き方を展望

座談会では、まず伊藤労働局長に、昨年(2020年)を振り返って、コロナ禍の影響と雇用・働き方を中心とした社会情勢の変化について伺いました。

次に業界の状況と課題など、「なんとしても生き残る」中小企業の実践として、製造業(磯村氏)と流通業(山田氏)から事例を説明していただきました。コロナ禍を乗り越える試みとして、坂野氏からは「飲食業関連研究会」の活動が紹介されました。

「ポストコロナの働き方」は全員から、人材育成の重要性や、地元との協力の取り組み、地域を守り安心を提供するなど、中小企業の役割を再確認し、ポストコロナのあるべき働き方を展望しました。

最後に新年の抱負では、人材育成の研究と社員の定着率の向上、雇用と地域ブランドを守る、働き方を変えビジョンへ到達するなど、明るく豊かな社会に向け、地域・人・企業の未来が語られました。

人材育成を経営の真ん中に

報道部長 林 康雄

コロナ禍での働き方は従来とは違うものになると想像していたものの、現実はどうなのか。その働き方を続けることが、ポストコロナを見据えた経営につながるものとなっていくのか興味深いテーマでした。

特に伊藤正史愛知労働局長から県下の企業、とりわけ中小企業に向けての政策がどういった視点で進められているのか。そして、どう発信され、どのように成果を捉えているのかを知る良い機会となりました。

会員3氏それぞれの景況と経営実践では、コロナで働き方を変えて生産性が上がったことや、内食需要が高まりコロナが追い風となっていること、業界内で連携し合う形がつくられたことなどが話されました。業界は違えど、この危機を乗り越えよう、これをチャンスとして捉えようと様々な手が打たれています。また、ポストコロナの重要課題では社員の成長、人材育成が共通して挙げられました。

同友会でも働き方改革を推進してきましたが、コロナによって拍車がかかり、広がりを見せました。とりわけ影響を受けやすい「人」に関わる問題は、企業それぞれの対応でこれまで克服してきました。しかしそれも限界で、国や県からの支援は不可欠なものになっています。様々な政策支援があっても、利用する中小企業はまだ多くないように思います。

ポストコロナは人材育成から。私たちの人を生かす経営実践の事例は、まだ十分ではありません。数多く発信していくことが、現場の声を吸い上げた政策につながっていくと感じました。

ポストコロナの働き方

代表理事 佐藤 祐一

加速する変化

佐藤 祐一氏

昨年は新型コロナウイルスのため、私たちの生活は様々な面で制約を受けることになりました。社員の健康、お客様の健康を守るための感染予防が最優先となり、生活も働き方も変えなければならなくなりました。

大変なことでしたが、一方で、変えなければならない、変わらなければならないと思っていたことを一気に変える契機となったのも事実です。

弊社は社員100名ほどの機械工具を扱う商社ですが、2015年ごろから「人手不足」に直面し、社内の改革を迫られました。その1つが残業削減活動です。

基幹システムの入れ替え、リモート会議、社内チャットによるコミュニケーション、決済の電子化などを取り入れて進めてきました。ただ、「在宅勤務」には、会社側だけでなく社員の側にも心理的抵抗があり足踏み状態でしたが、このコロナ禍で一転、やらざるを得なくなりました。

ワークライフバランスの調和

そして、やってみると「意外にできる」という声が上がり、一気に進みました。心配していたコミュニケーションの問題も、皆がかえって気を遣うようになり、導入してきたITツールをフル活用し、朝晩のビデオ会議も始まり、一緒に事務所にいる時より意思疎通は良好になりました。

また、もう1つの利点は通勤に費やしていた時間の活用です。往復一時間から一時間半程度の時間が省けることで生活に余裕が生まれました。

家族や自分のために使える時間が増えたことで、生活の質が上がりました。コロナは確かに厄介ですが、仕事と生活のバランスという面では、決して悪いことばかりではなかったと思います。

自立と自律が必要

一方、リモート化での問題も見えてきました。それはマネジメントのあり方と、各個人の自立性と自律性です。これらが確立されていないと、仕事の効率と質が落ちてしまう事例が出てきたのです。

従来のやり方をリモートに当てはめても、特に若い社員にとっては難しい場面が多かったようです。個々の社会人としての自立と自律があってこそ、リモートでの仕事が成り立つことを痛感しました。これにより教育の内容の見直しも課題となりました。

ポストコロナにおいても、中小企業には厳しい環境が続くと思われます。しかし、小さい会社ならではの社員一人ひとりとの対話を通じ、自立と自律の確立を後押しできれば、彼らの生活の質の向上とともに、業務の生産性を向上させることも可能だと実感しています。

新しい年を迎え、ポストコロナを見据え、今よりも社員が幸せになれる会社づくりに邁進し、人を生かす経営を推進していきたいと思います。