活動報告

愛知同友会景況調査(2021年2月末)

景気は足踏みながら、製造業に改善の兆し

(グラフ1)業況判断DI

今月の状況は下落 次期見通しは改善

概況として「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、「今月の状況」が前回の8から5へ3ポイント下落しました。要因は前回調査から「良い」と回答した企業が3.7%、「悪い」と回答した企業が0.7%それぞれ減少したのに対し、「さほど」と回答した企業が4.4%増加したことによります。

一方「前年同月比」(△25→△16)、「次期見通し」(△7→11)は、双方とも2020年5月調査以後3期続けて改善しました。「次期見通し」は、2019年11月調査以来1年ぶりのプラス値回帰です。

製造業に改善の兆し

業種別でも概ね同様の傾向が確認できました。「業況判断DI」の「今月の状況」は、建設業(21→16)、流通業(5→△3)、サービス業(15→6)と総じて下落。ただし、製造業に限っては前回△10から6へ16ポイントの大幅な改善が見られました。(グラフ2参照)

(グラフ2)業況判断DI 今月の状況

「前年同月比」は、建設業(△21→△14)、製造業(△42→△24)、流通業(△29→△18)、サービス業(△15→△11)と全業種で「悪化」超過幅が縮小。(グラフ3参照)

(グラフ3)業況判断DI 前年同月比

「次期見通し」は、建設業(△5→8)、製造業(△21→5)、流通業(△7→1)、サービス業(1→22)と全業種がプラス値に回帰しました。(グラフ4参照)

(グラフ4)業況判断DI 3ヵ月見通し

2度目の緊急事態宣言の影響を受けて景気は足踏み状態にありますが、製造業に改善の兆しが見えるなど先行き好転を予感させる結果となりました。変異ウイルスの感染拡大が確認されており予断は許されませんが、今後ワクチン接種の広がりとともに景気回復の足取りが強まることが期待されます。

「二極化」と社会変化

文章回答ならびに分析会議からは、いずれの業種からも今回の結果を裏付ける内容が報告されました。他方で共通して出されたのは「二極化」の指摘と、コロナ危機による社会変化をうかがわせる声です。

「今月の状況」で前回調査から唯一改善した製造業では、自動車関連は「生産計画は底堅く推移しているが、特定カーメーカーの1強状態」など、取引先によって大きく状況が分岐しています。ただし、好調なカーメーカーであっても「新車需要もコロナの状況に左右されるため、今年中盤以降の生産計画が読めない」と、先行きへの懸念は拭えない状況です。

さらに「ガソリン車関連の回復は90%程度で、EV、FCVなどの次世代自動車向けの仕事が以前よりも増えている」、「年度末の予算消化で、自動運転や衝突回避システムなどの先進技術の研究開発向けの仕事が動いている」など、今後の社会変化への対応が加速している様子がうかがえました。

先行き懸念の声も

そのほか工作機械やロボット関連、半導体製造装置関連は、いずれも「中国向け需要が牽引している」とする外需依存による回復が指摘されました。航空機関連については依然極めて厳しい状況が続いています。

建設業からは「賃貸マンション系は積極的に動いているものの、店舗や設備系は厳しい」とする声や、「ゼネコンから20%程度の値引き要請」が見られるなど、「売上げは立っても利益が出ない1年になりそう」といった先行き懸念の声が聞かれました。さらに「名古屋駅周辺のオフィスビルに空室が目立ち始め、近隣の賃貸価格の安いオフィスビルの入室率が上昇している」と、変化の表れを指摘する報告が聞かれました。

「もうひと踏ん張り」

流通業、サービス業からは「デパート関係は昨年対比10%から20%のマイナス、食品スーパーは昨年対比10%から20%のプラス」と明暗が分かれていること、また「商談や見本市が緊急事態宣言のため開催されず、例年と違い先の売上げ見通しが立たない」など、コロナ禍による事業環境の変化を指摘する声が聞かれました。

総じていえば、ワクチン接種の広がりに期待しつつも、「もうひと踏ん張り」が求められる局面だといえそうです。

[調査要項]

調査期間 2021年2月18日~25日
回答企業 1117社
(建設業191社、製造業242社、流通業289社、サービス業395社)
平均従業員 32.7名(中央値8.0名)