活動報告

愛知同友会60年の歩み(第6回)

「道なきみち」を歩んで
~99ビジョンを展開して

2000年代の愛知同友会の運動は、1999年に発表された「99ビジョン」の2つの旗印「自立型企業づくり」「地域社会と共に」を軸に展開されます。

全国47同友会の力を結集して取り組んだ金融アセスメント法制定運動や中小企業憲章の制定運動では、愛知同友会はいずれも牽引的役割を果たしてきました。

客観的情勢と蓄えられた主体的力量により、会勢も90年代の停滞から脱皮し、2000年には会員数2271名に。2008年4月には3000名会員を突破し、以降安定した3000名体制を築きます。

旗印Ⅰ「自立型企業づくり」
旗印Ⅰ-自立型の企業をめざす

「99ビジョン」での具体的な展望

強い経営体質プラス独自戦略

先月号(第5回)で述べたように、愛知同友会は90年代「失われた10年」の時代に、新たなステージへ向けて活動改善に取り組みます。1999年4月24日に開催された第38回定時総会で採択された「99ビジョン」に結実し、以降、具体的な活動を通じて展開されます。

「99ビジョン」では、「自立型企業をめざす」「地域社会と共に歩む」という2つの旗印を掲げます。

自立型企業とは、

  1. 経営指針を確立し、成文化する
  2. 共同求人で将来の経営幹部を採用する
  3. 「共に育つ」企業づくりをする

以上の「三位一体」を実行する強い経営体質の企業であり、さらに独自戦略を持った企業だとしています。

「21世紀型企業」を一歩進めて

自立型企業の名称は「99ビジョン」で初めて使用されました。その特徴は、30周年(1992年)で提起された「21世紀型企業」から一歩進んで、「独自戦略」を強調したところにあります。

独自戦略とは、「三位一体の経営体質強化を前提にしながらも、営業力の強化、技術力、開発力、販売力やサービスなど顧客を満足させる戦略を持った」企業であり、価格決定力を持った企業としています。

99年11月に大改正された『中小企業基本法』の第三条「基本理念」において、中小企業政策は、「独立した中小企業者の自主的な努力が助長されること」を旨とする、と述べて、中小企業の「独立性」を重視しています。

「99ビジョン」で掲げた「自立型企業」像の考えも『中小企業基本法』の求める企業像と、奇しくも合致しているといえるでしょう。

地域社会と共に歩む

地域経済の主人公

「地域社会と共に歩む」に関して、「99ビジョン」冒頭で「時代がどんなに変化しても中小企業は国民の要望に応えた商品を生産し、流通とサービスを提供して地域社会の雇用を支えて活躍しており、地域経済の主人公としての位置」にあると述べています。

その上で、

  1. 中小企業のサバイバル戦を会として支援し続ける
  2. 一人ひとりの会員と同友会が地域のオピニオンリーダーとして、なくてはならない存在になる
  3. 政策提言の力を養い、発言力を身につける存在になる

という3つの目標を挙げています。

人口10万名の地域に1つの拠点づくり

組織的には、人口10万名以上の地域に1つの拠点をつくることを目標に、

  1. 行政地域に対応した支部を確立する
  2. 地区の会員は行政地域の地区で編成する

という目標を掲げ、将来7000名の愛知同友会、当面5年後の2004年3月末には3000名会勢をめざすとしています。

3000名会員は、目標から4年遅れて2008年4月に達成します。そしてこのビジョンに掲げられた支部・地区再編が行われ、尾張、名古屋、三河の3支部が2000年4月に誕生、また地区の再編が行われ、現在のような支部・地区のスタイルが創られます。

「99ビジョン」の到達点を確認する

地道な学習活動と研修大学スタート

「自立型企業づくり」に関して大きなインパクトがあり、支部・地区の例会で盛んに取り上げられ、会員企業での実践も進みます。

一方、「地域社会と共に歩む」に関して、それまで会活動として意識的に取り組まれておらず、なかなか会員に浸透しないという状況が続きます。

ただ、地道な学習活動と尾張、名古屋、三河の3支部体制と合わせた地域ごとでの地区再編等によって、尾張、三河では比較的早くから会員の意識に定着するようになりました。

また2000年度から、同友会の理念と目的を深く学ぶことを目的とした「同友会役員研修大学」が開講され、今年度22期を迎え、昨年度までに719名の修了生が誕生しています。

「学ぶ会」から「実践する会」へ

2001年から始まった「国民や地域と共に」の具体的な取り組みである「金融アセスメント法制定」の運動(次号紹介)や、中小企業憲章制定運動の嚆矢ともなった「欧州中小企業政策視察団」の派遣(創立40周年記念事業:2002年9月4日~11日)など、この間の成果として挙げられます。

また、ビジョン発表以降、改めて同友会理念に立ち返り、企業づくりの原点ともいえる「中小企業における労使関係の見解」(労使見解)に基づく企業づくりを進めようと機運も高まってきます。

ビジョン発表から5年後、2004年4月の定時総会では、「99ビジョン」の実践の成果が報告されます。

「自立型企業づくり」では三位一体の経営実践が進んでいること、「地域と共に歩む」では金融アセスメント法制定運動の成果、政策提言や愛知県との政策懇談会などにより行政との関係でも存在感を増してきたこと、またインターンシップ等が報告されました。

会員増強に全力で取り組んだ結果として、目標であった3000名会員は達成できなかったものの、2479名という過去最高会勢を更新したことが報告されています。

「99ビジョン」の学習と実践から、同友会活動と企業経営は不離一体であることを確認し、「学ぶ」から「実践する」同友会へと変革への一歩を踏み出しつつあることなどが強調されています。

専務理事  内輪 博之