活動報告

愛知同友会60年の歩み(第8回)

「道なきみち」を歩んで
~中小企業憲章制定に向けて

オランダのロッテルダム商工会議所にて(2002年9月5日)

愛知の欧州視察が憲章制定運動の嚆矢に

1999年に「中小企業基本法」が抜本的に改正され、独立した中小企業者の自主的な努力による多様で活力ある成長発展が基本理念として掲げられますが、そのような中小企業施策に関する基本理念の転換とその影響に関して、国民的な理解と合意は形成されていませんでした。

一方、EUでは2000年に「欧州小企業憲章」が採択され、EUにおける経済戦略の中核に中小企業が位置づけられます。これはEUにおける中小企業に対する意識の高さを反映しただけではなく、中小企業家団体の地道な運動の結果でもありました。

EUの動きをいち早く察知したのが愛知同友会で、2002年9月に「欧州小企業憲章」を中心とした欧州中小企業政策を学ぶ視察団(オランダ・ベルギー)を派遣します。これが、日本での中小企業憲章(以下・憲章)制定の嚆矢となります。

2003年中同協総会で憲章制定の問題提起

中同協は「金融アセスメント法」の制定運動の発展的継承として、また同友会運動の集大成の1つとして、中小企業憲章制定の取り組みを始めます。そのきっかけとなったのが、2003年7月に行われた中同協第35回総会の第13分科会です。

「欧州中小企業憲章にみる21世紀の中小企業政策」をテーマとしたこの分科会では、愛知同友会の欧州視察に随行した三井逸友氏(横浜国立大学大学院教授・当時)が報告者に、また同じく参加した加藤洪太郎氏(名古屋第1法律事務所)が座長を務めて問題提起を行います。

この分科会での提起から中小企業憲章と中小企業振興基本条例の制定運動が事実上スタートします。中同協では翌年から中小企業憲章学習運動推進本部が、2007年からは制定運動推進本部に名称を変更して、制定をめざした運動が本格的に始まります。

自社経営と憲章との関係を深く考える
~愛知方式を提起

愛知同友会では、政策委員会が作成した「憲章とは何なのか」の学習資料「中小企業は日本の宝」というプレゼンテーションファイルの活用、自社経営と憲章の関わりを考える「外部要因レポート」の作成をセットとした「愛知方式」の学習会を提唱します。

自社経営と憲章との関係を深く考えることを学習目的とした愛知方式は、(1)自社を取り巻く経営環境(業界の特徴・現状)、(2)自社の方向性(自社の経営指針)、(3)望ましい経営環境、(4)「中小企業憲章に望むこと」、以上を自社経営と照らしあわせて考えるといった、実践的な学習活動でした。

3000名会員を達成する(2008年4月22日愛知同友会総会にて)

中同協では憲章の独自草案を作成

以降、全国的にも学習運動が展開しますが、中同協でも独自に「中小企業憲章」の草案づくりが進み、「中小企業憲章草案」は、2010年7月の中同協第42回総会において採択されました。

一方、憲章制定への同友会の地道な働きかけ等もあり、国政においては、民主党の選挙公約の1つとして掲げられます。2009年の政権交代により、その制定の機運が高まります。

中同協は中小企業庁「中小企業憲章に関する研究会」における意見陳述や、建設的なパブリック・コメントの発表から、政府の中小企業憲章案に積極的に関与します。

結果、政府の「中小企業憲章」には中同協の意見が多数反映され、2010年6月18日に閣議決定されます。

愛知同友会では「中小企業憲章は制定がスタート」をスローガンとして、以降、憲章の精神を国民、自治体、金融・教育機関等に広める努力を継続するとともに、「愛知県中小企業地域活性化条例」の愛知県下の自治体での制定に向けた取り組みに注力していくことになります。

専務理事  内輪 博之