日銀の動向と金融行政
由里 宗之氏
大阪公立大学大学院 経営学研究科 客員教授
政策金利の見通しは
1月の金融委員会は新春金融学習会として開催し、大阪公立大学客員教授の由里宗之氏を講師に迎え、2024年の金融情勢と展望についてお話しいただきました。
まず欧米が物価高対策として金利を上げたことに対し、日本は政策金利を上げられないままにあることについて、金利水準を上げると日銀が保有する日本国債の評価損が発生し日銀の自己資本比率を大きく毀損すること、政府としても国債の利払いが増えることは好ましくないこと、円安問題に関してもドル円レートは金利差だけで決まっているわけではないことから、政策金利はさほど上げないだろうと話されました。
次に金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の一部改正案について解説。この中には「一歩先を見据えた早め早めの対応」という項目があり、それは「不振先に漫然と融資し続けるのは止め、立て直し伴走支援、もしくは事業整理に踏み込め」という意味だといいます。「不振先」とはリスケジュールや金利減免など貸し出し条件緩和を受けている企業や、元本返済や金利の支払いが3カ月以上滞っている企業などを指します。
金融機関の伴走支援を受けるには
一方で、伴走支援については金融機関はマンパワーを必要とするもので、多数の不振取引先にできることではありません。その企業のビジネスモデルの持続可能性や、経営者の資質などを基準に、ふるいにかけてきます。企業には、このふるいに残る努力が求められます。
そのためには、抜本的な対策を含めた経営指針を作成し、実行する姿勢を見せることです。渉外担当者で心許ないなら金融機関の支店に乗り込み、担当者の上席に訴えかけることも必要になります。
昨年から倒産件数が増えている背景には、金融庁の「ポストコロナ」の変化もあります。金融円滑化法などによって金融支援を受けることへの罪悪感が薄れている企業があるように見受けられましたが、大きく方針転換がされ、いわゆる「ゾンビ企業」を退出させていく方針が示されたと感じています。
健全な企業にとってはチャンスが回ってきているともいえるでしょう。一方で、自社の販売先がそのゾンビ企業であるかもしれません。金融庁の変化は、不振ではない企業にも影響を及ぼすものであると感じました。
安藤不動産 安藤 寿