活動報告

第63回定時総会(4月23日)

人間尊重経営で豊かな企業風土と地域づくり
~「地域未来創造企業」と人を生かす経営で企業変革

全体会と3つの分散会で企業づくりと同友会づくりを深める

約300名が参加

4月23日、第63回定時総会が名古屋国際会議場・白鳥ホールにて開催され、当日は291名が参加しました。

冒頭、会長の高瀬喜照氏は「デフレ経済からインフレ経済への切り替わりなど、大きな時代変化の渦中での定時総会。私たち地域の中小企業自らが発展し、人の可能性が12分に発揮できる社会を展望するためにも闊達な議論を」と呼びかけました。

来賓の大村秀章愛知県知事は、「多様な中小企業の皆さんが地域経済を支えている。愛知県中小企業振興基本条例の精神に基づき、県としても中小企業の声を聞きながら、総合的な支援を行っていきたい」と述べました。

総会議事では、2023年度の経過報告、決算報告が行われ、新年度の役員として高瀬喜照氏が会長に、加藤昌之氏が代表理事にそれぞれ再任されました。

開会あいさつを行う髙瀬喜照会長

3つのテーマで分散会

加藤代表理事は新年度の活動方針で、「経営者はこの激変の社会環境に適応して会社を維持・発展させ、全社一丸となってこれに立ち向かう覚悟を持たなければならない。それが『労使見解』でいう「経営者の覚悟」。変化を恐れず、今こそ企業変革に向き合うことで新たな飛躍を遂げる新年度に」と述べました。

総会議事終了後は、「人を生かす経営と企業変革」「3つの目的の『総合実践』と地域未来創造を考える」「厳しくも温かい地区風土づくりと“丁寧な増強、ご近所増強”」の新年度方針、ならびに2022ビジョンに基づいた3つの分散会を実施しました。

分散会では、激しい時代変化の中で、どのような企業づくりを進めていくのか、経営者が経営者として学び合える会をどうつくっていくのかを討議。再度集合した全体会では、各分散会より座長報告がされました。最後に加藤相談役理事より今定時総会全体のまとめが行われ、閉会となりました。

第63回定時総会 分散会課題提起

第1分散会「人を生かす経営と企業変革」

座長 明石 耕作氏  (株)トヨコン

明石 耕作氏

激変の経営環境

今年度の活動方針にも「激変の経営環境」と謳われていますが、我々経営者にとっては、ずっと激変が続いているといっても過言ではありません。私は社長になって20年が経ちますが、リーマンショック、自然災害や大規模な事故、新型コロナウイルスのパンデミックなど、どのような状況下でも、その時の最善を尽くしてきました。

いかに早く変化を察知し、どうやって経営指針に取り入れ、企業経営に取り組んでいくかが中小企業経営者には求められます。同友会が提唱する人間尊重経営は、世の中の中心になってきています。

どのような覚悟を持ち、何を行うか

「経営者の責任」が経営の原点

「企業変革支援プログラムVer.2」はご存じですか。この冊子を読み解いていく中で、社長就任後の最初の10年間は、6つのカテゴリーのうち「Ⅱ経営理念を実践する過程」を重点的に、そして次の課題である定着率の向上が明確になってからは「Ⅲ人を生かす経営の実践」をやってきたことが分かりました。

しかし、課題にぶつかるたびに「I経営者の責任」の重要性に気付き、ここが全くできていないことを認識しました。社員のためにと思い、働く環境を整備し衛生要因を満たそうとしても、社員にとっては見当違いなこともあります。経営者としてやるべきことは「社員エンゲージメント」を高めること、つまり社員のモチベーションや満足度を高め、より生産性の高い働き方を促すことだという結論に至りました。

「ホワイト企業で勝てますか」

4月3日付の日本経済新聞1面に「ホワイトで勝てますか」という記事がありました。働き方改革関連法案が施行されて5年経ち、働きやすい職場が増えました。これは、ただ働きやすいだけでよいのかという問題提起です。ここでは働きやすさは高いが働きがいは低い企業を「ホワイト」、逆に働きやすさは低いが働きがいは高い企業を「モーレツ」、両方とも低い企業を「ブラック」と分類しています。

ブラック企業は論外ですが、働きやすさばかりにとらわれていると、労働環境に大きな問題はないものの、働きがいを感じられない「ゆるブラック企業」につながってしまいます。この記事では最終的に、働きやすさも働きがいも兼ね備えた「プラチナ企業」こそが勝ち残っていけるとされていました。皆さんの会社はどうでしょうか。

終身雇用という言葉自体が死語になりつつある中、せっかく入社してくれた若者をいかに早く会社の戦力とし、気持ちよく働き続けてもらうかを考えて経営をしなければなりません。本日のグループ討論では、経営指針の重要性、社員とのコミュケーション力の向上、職場環境改善や社員のエンゲージメントを上げるために、経営者としてどのような覚悟を持ち、具体的に何を行うかに踏み込んだ議論を期待したいと思います。

第2分散会「3つの目的の「総合実践」と地域未来創造を考える」

座長 馬場 愼一郎氏  データライン(株)

馬場 愼一郎氏

業績が思わしくない中で同友会に入会

当社はかつては印刷業で、大きく括ると製造業でした。数年前に製造ラインをすべて手放し、現在は取引先の顧客情報をセグメントして販売促進に利用するなど、データ分析のお手伝いをしています。

私が同友会に入会する頃は、業績が思わしくない時でした。そんな中で初めて参加した例会のテーマが「EU小企業憲章」でした。正直なところ、当社には関係ない、余裕のある会社がやることだと思いました。

最近は同友会でも「地域」という言葉をよく聞くと思います。当時の地区では、地域を良くしようと考える人は少数でした。今でもそういった会員は多くないと思います。

今日ここに参加された皆さんは、地域に対してどのような視点で携わっていますか。中小企業団体として社会に働きかけるという視点でしょうか。それとも、自社のこととして主体的に取り組む視点でしょうか。今日の分散会は、後者の視点で考えていきたいと思います。

地域を自社のこととして主体的に

経営指針と同友会運動

これまで、私は経営指針の作成に力を入れてきました。役員として他の会員が作成するのを見てきて、その後に机にしまってしまう人も多くいます。その原因は、自社を取り巻く環境がどうなっているのかなどの立ち位置が分かっていないことや、将来に向けて数字に落とし込むことが弱いことではないかと個人的には思います。

同友会にいると、「経営指針」「採用」「共育」という言葉をよく耳にします。その中の経営指針は良い会社になるために作っていると思います。同友会運動と考えると、経営指針を作って良い会社や人間尊重の経営をしている会社が増えることで、中小企業の存在価値が高まるのではないでしょうか。その点で、各支部で行っている経営指針入門編も同友会運動といえます。

「地域」を視点に自社の未来を描く

皆さんは、自社のこととして地域は見えていますか。また、どんな見方ができますか。海外や日本の問題などはすぐに取り組むことは難しくても、会社のある地域なら「何かできることはないか」と考えることは可能かと思います。個別・具体的な課題を解決できるのは、地域に根差す中小企業ではないでしょうか。解決する中で壁にぶつかることもあるでしょう。それらは産業振興会議の話題にもつながるはずです。

今日の討論では、「地域」を視点に未来をどう描くかを考えてみてください。主語は「私」か「自社」です。「同友会」や「地区」などは外して議論を進めてください。よろしくお願いします。

第3分散会「厳しくも温かい地区風土づくりと“丁寧な増強、ご近所増強”」

座長 松村 祐輔氏  (株)BeBlock

松村 祐輔氏

コロナ危機を克服

当社は、飲食店向けのメニューブックやコースター製作などの販促支援事業に加え、印刷業から派生したアニメグッズやライセンスビジネスも手掛けるようになり、より広い事業内容を表すため、2年前に株式会社CRMから現社名へと変更しました。コロナ禍でメニューブックの需要が減少し、経済的な打撃を受けましたが、アクリルパーテーションの販売とエンタメグッズのオンライン販売が業績回復のカギとなりました。

丁寧な採用(増強)

私は以前、人手不足を理由に急いで採用した結果、3カ月で退職に至ってしまった経験をしました。このことから「採用の失敗は教育では取り戻せない」が、自分自身を戒める格言になりました。

同友会の会員増強においても、会の理念を十分に説明し、入会のプロセスを丁寧に行わなければ、入会しても早期に退会してしまうのではないかと思います。実際、4月の理事会で退会した55人のうち、18人が入会から2年未満であり、これは同友会理念を理解せず退会してしまっているのではないかと考えられます。

同友会の課題を自社経営と結び付けて

厳しくも温かい地区(会社)風土

私が読んだ『ゆるい職場』という本には、厳しく指導されず、キャリアアップの機会が少ない「ゆるい職場」ほど退職者が増えていると書かれています。

私が入会した頃は、先輩会員から厳しい指摘を受けましたが、その指摘が、今の企業経営につながっています。現在の地区での「厳しくも温かい地区風土」とは、どのようなものかを話し合っていただければと思います。

自律、自浄、自走する組織へ

今年度組織部門の重点に、「自律、自浄、自走する組織を目指そう」と掲げました。「自律」とは、各組織が同友会理念や方針に基づいて、各々が考え、企業経営や同友会活動、自分自身を律すること。「自浄」とは、各組織が自ら同友会理念や方針に基づいて、課題を解決していけること。「自走」とは、各組織が自ら同友会理念や方針に基づいて、同友会運動を展開していけること。以上のように定義づけました。

この実現には、地区会長、筆頭副会長の育成が要だと考えています。そのため、今年度は正副地区会長研修会を行いますので、ぜひご参加をお願いします。

地区会計の確立

昨年度の支部・地区運営費の執行率は67%でした。この背景には、「とりあえず多めに予算申請しておこう」という考えがあるのではないでしょうか。そして今年度の支部・地区運営費は5200万円と、昨年と同じぐらいの金額が申請されています。

この金額すべてを使い切ると、愛知同友会は赤字になります。これは企業経営にも当てはまり得るため、予算申請と執行の方法を見直す必要があると考え、会計研修会を通じて考え方を統一していければと考えています。

同友会と企業経営は密接に関連していると思います。同友会の課題を自社経営とも結び付けながら、議論を深めていきましょう。

第63回定時総会 全体まとめ

同友会で学び、世の中の変化に対応を

加藤 明彦氏
エイベックス(株)
愛知同友会相談役理事

同友会らしい企業づくりを語る加藤相談役

経営者として学び続ける

皆さん、お疲れさまでした。今日の総会に来て良かったと思いましたか。学びがあったと思われたのであれば、地区でも今日の学びを共有できるようにしてください。

そして、何よりも総会議案をしっかりと読んでください。次は、中同協総会の議案が6月に送られてきます。この柱も「企業づくり」「地域づくり」「同友会づくり」と、今日の分散会と同じ構造です。今日の学びをさらに深めることができます。

皆さんは同友会の会費をどこから支払っていますか。ほとんどの方が会社の経費からだと思います。議案や広報紙を読むも読まないも自由ですが、社員に経費削減を求めるのであれば、経営者として読まなければ示しがつきません。社員はよく見ています。

「自主・民主・連帯の精神」を誤解しないでください。自主・民主・連帯の精神の根幹は、会員自身の自覚的意志を求めています。

人間尊重の経営が世界でも求められる

総会議案には「情勢と展望」も掲載されています。その中にある、DE&Iという言葉をご存じですか。Dは「Diversity」の多様性、Eは「Equity」の公平性、Iは「Inclusion」の包括性です。

とりわけ公平性については、加藤代表理事も言及されていました。例えば、身長が違う3人に同じ高さの踏み台を平等に与えても、身長の低い人は壁の向こうが見えません。それぞれの身長に合った踏み台を与えることで、結果的に平等な条件になります。

これらは人間尊重の考え方がベースです。同友会が長年提唱してきたことが、世界でも求められているのです。

同友会運動を学ぶ総会 経営を学ぶフォーラム

「ゆるブラック」という言葉の登場など、世の中は常に変化します。私たち経営者は対応し続けなければなりませんが、その時、自主・民主・連帯の精神なしに受け止めることはできません。そこでカギになるのが、経営指針・採用・共育という同友会らしい企業づくりです。

今日の総会では同友会運動を学びました。半年後のフォーラムでは企業経営について学び合います。半年の運動の実践をフォーラムで検証すること、ここに「同友会運動と企業経営は不離一体」の意味があります。同友会理念をしっかり学んで実践し、半年後のフォーラムでまたお会いしましょう。今日はありがとうございました。

第63回定時総会ハイライト

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