障害者雇用の実践報告から人間尊重経営の本質を学ぼう
小島 正寛氏 (株)中央技研
苦い経験を糧にして
5月の広報部会は障害者自立応援委員会の活動から「同友会らしい人を生かす経営」を学ぶことを目的とし、開催しました。報告者に障害者自立応援委員会メンバーで中央技研代表取締役の小島正寛氏を迎え、人間尊重経営の本質について学びました。
同社でかつて採用した社員O君は、入社後に障害者とわかりました。突然に機械を分解するなどの行動があり、やがて退職となります。退職にあたって家族がお礼のあいさつにみえた際、小島氏は申し訳ない気持ちと悔しい思いが募ったといいます。
次に障害者を雇用する際には同じ事を繰り返さないと誓い、小島氏は「誰もが安心して働ける会社」づくりを目指し始めます。「思いやり、感謝、礼儀、信頼」などの言葉を含む経営理念の浸透を図り、受注の工夫とやりがいの可視化も進めました。
その後、障害のあるA君を雇用する機会が訪れます。全社員に相談したところ反対意見はありませんでした。これは小島氏が経営理念をもとに行動を積み重ね、形成された社風があったからでした。
人を思う心がもたらす「見えない生産性」
社長自らA君に丁寧に接し、理解しようと試みます。多角度から質問することで、意思の疎通や指示の理解がスムーズになることもわかりました。作業日誌を通じた繰り返しの交流がA君の安心感を生み出し、先輩社員にA君への関わり方を見てもらうことで、思いをつないできました。
小島氏は「人を思う心で会社も成長する」と話します。人を思う心が安心感のある会社をつくり、助け合いや自主性が芽生え、モノづくりの真心が商品の品質向上と利益につながる。これこそが障害者自立応援委員会で言われる「見えない生産性」です。
経済的価値とは人の役に立つことであり、働く喜びである。これは障害の有無に関係なく誰にも共通の感情です。A君には人の成長の可能性を教えてもらったと、小島氏は振り返りました。
自社での実践に向けて
グループ討論では「社員が安心して働ける会社とは」「人を生かす経営をどのように実践しますか」と問いかけ、「社内の信頼関係やコミュニケーションの質を高める」「社員間の協力や支援体制を築く」「社員に経営者の思いを伝える」「社員が目標を持てる仕組みを作る」などの意見が出されました。
広報部員間でも障害者雇用の捉え方がさまざまに異なりましたが、小島氏の報告から障害者との向き合い方だけでなく、障害の有無を問わず人との関わり方を振り返り、人間尊重経営の本質に近づく部会となりました。
(株)国分農園 橋本 昌博