共同求人活動で「社会からあてにされる会社」に自社を磨き上げる
一緒に共同求人に参加しませんか?
パネリスト
吉田 幸隆氏 エバー(株)
江崎 佳子氏 (株)江﨑商店
和田 康伯氏 (株)リンクコンサルティンググループ
コーディネーター
村田 直喜氏 (株)MRT

共同求人委員会は2025年度共同求人参加企業の募集にあたり、9月18日に学習会を開催しました。パネル討論形式で行われた学習会の概要を紹介します。
共同求人を始めた動機、続けている理由
一緒に学ぶ採用チームをつくる
【吉田】当社は常滑市にて、金属プレス加工業をしています。社員数102名で、その半数が外国籍の社員です。新卒採用の重要性を感じてはいたものの、リーマンショック、震災と目まぐるしい外部環境の変化の中、なかなか踏み出せずにいました。
共同求人には2014年から、合同企業説明会のブースには出展しない「研究コース」から参加を始めてみました。和田さんが講師を務める採用戦略セミナーに参加して、自社に足りない部分に気付き、まずは一緒に学ぶ採用チームをつくることで社員を巻き込むことができました。

指針を実践していく仲間を見つけたい
【江崎】当社は、三河エリアを中心にアイスクリーム等のフランチャイズの運営をしています。2013年に同友会へ入会後、すぐに共同求人を始めました。
以前から高校求人はしていましたが、経営指針からどのようにしてビジョンを描いていくのか、筋道が立たず悩んでいました。理念採用をし、一緒に指針を実践していく仲間を見つけたいとの思いから大卒採用に踏み切りました。この10年間で採用できた大卒社員5名が、現在中心メンバーとなり、会社を支えてくれています。
今後の課題は、彼女たちが産休・育休を経て、ライフステージに合わせ、安心して働き続けられる職場をつくっていくことです。

採用がうまくいっている企業の特徴とは
採用できる企業に自らがなっていく
【和田】当社は採用、育成、組織強化等、さまざまなサポートを通して、「強い会社を創る」支援をしています。長年愛知同友会の共同求人に携わり、採用戦略セミナーで講師を務めながら多くの会社を見てきました。会社の規模や業種はそれほど関係なく、社員発信で自社の魅力を伝えられている企業は採用ができていると感じます。
同友会の共同求人理念を知らずに「単なる人採り」だと思われている方は、一度参加しただけで続かないケースが多くあります。入り口を間違えてしまうと、私たちが目指している「採用できる企業に自らがなっていく」という目的が達成されません。
学生を選ぶのではなく、選ばれる会社になるために何をするかを一緒に考えていく場が同友会の採用活動であると考えます。まずはチャレンジしてみる、そして採用できるまで続けるということが採用の近道ではないかと思います。

採用を通しての社内の変化
他人事から自分事へ
【吉田】当社では、量産型の単調な仕事が多く、外国籍の社員も多いため、仕事のやりがいを見つけ出すことが課題であり、そのためには工夫が必要だと感じていました。
何年か勤めた社員から、「僕らはいつになったら後輩ができますか」と問われ、言葉に詰まってしまいました。彼の言葉は、「次のステージに挑戦したい」という気持ちの表れだと受け取りました。
それまで受け身でいた社員が、「採用も労働環境も経営者が用意するものではなく、自分たちで変えていくことができる」と気付き始めてから、会社の雰囲気が変わってきました。社内で起きることに対して他人事から自分事へと変化してきたように思います。
自発的に採用から育成、定着へ
【江崎】社員が採用チームとして関わり、「一緒に働きたい」と思って採用した社員が増えたことで、きめ細かいフォローや孤立を防ぐ声かけなど、自発的に動いてくれるようになりました。また、社員の声から始まった「ビジョン合宿(長期的に目指す企業のゴール・将来像を描く)」も8年間続いています。
各店舗でのOJTによるビジネスマナー向上や、現場で仕事を覚えスキルアップすることはもちろんですが、社内組織として「学びの場」も複数設けており、その中に採用チームも位置付けています。定着・育成についても社員が自ら考え、試行錯誤しながら進めています。
「役に立ちたい」という想いをどう引き出すか
採用も共育の場
【吉田】採用も共育の場になっています。新しい人たちが入ることで、会社の中にある問題を具体的に解決する場ができました。少しずつではありますが、会社の仕組みづくりが整ってきました。
会社のある身近な地域の人たちから応援してもらうためには、「仕事を通してどのように還元していくべきか」を社員と議論しています。地域の小・中学校からの講演依頼や職場体験は積極的に受けており、会社の評価が家族や地域から巡り巡って社員の耳に入ってくるようになりました。それが社員の誇りとなり、自己肯定感の向上につながっていると感じます。
仕事を通じ、地域に貢献していきたい
【江崎】社内でビジョンに関わる会議をしていると、社員から「自分たちの仕事を通して、地域に貢献していきたい」という意見が出てきました。当社では採用チームのほかにイベントチームがあり、食に携わる地域のイベントに参加することができました。
最近は食品ロスの問題を自分事として考える社員が増え、賞味期限内にもかかわらず破棄されていたアイスクリームのトッピングを「フードバンクに提供できないか」との意見が出されました。当社は経営理念に「幸せを分かち合う~私達は食を通して関わる全ての人を笑顔にします」と掲げており、理念に沿った動きが社員から出てきたことを嬉しく思います。
「私って、会社の役に立っていますか」
【和田】Z世代と呼ばれる若者たちの半数が社会的課題に関心があり、自分の仕事が社会貢献につながっているとわかるとやりがいを感じやすいという特性があります。
当社でも若手社員から「私って、会社の役に立っていますか」という質問を受けることがあります。その際は、技術的スキルと考え方の部分に分けて評価し、フィードバックするようにしています。
誰かの役に立ちたいというのは、「他人から認めてもらいたい」という気持ちの裏返しでもあり、そこを評価されることで自信につながり、「自分がここにいてよい」という安心材料になります。仲間のためにという気持ちは、家族や客先、地域のためにという考え方に広がっていくので、そこを伸ばしてあげることで、視野が広がっていくのではないかと感じます。

新卒の採用活動を経験したからこそ会員に伝えられることは
完璧でなくてよい
【吉田】当社は、よく人が来る会社になりました。最近、県外の大学から採用のエントリーがありました。「採用できっこない」、「そんな優秀な人は育てられない」というネガティブな声もありましたが、私はそれをかき消すように、「ここまで興味を持ってもらえるように会社をPRできたこと、くじけずにフォローしてきた採用チームを誇りに思う」と伝えました。数人から始めた採用活動ですが、理解者が徐々に増え、前向きな社風になってきました。
社員を取り巻く外部環境は日々変化しています。大手であっても完璧な企業はありません。就業規則や賃金規定がない、という状態の企業でも、「今できていないからこそ、足りていないことを知るために採用活動を始める必要がある」と伝えたいです。
皆さんにとって、経営指針書の実践とは何を指しますか。私は、利益を出した後、その先に社員同士が助け合える関係を目指していきたいと考えています。まずは経営指針を作成し、ビジョンを描いたら、採用という実践をしてみませんか。
継続は力なり
【江崎】長年の採用活動で気付いたのは、景気が良い時は大手に学生が流れる傾向にありますが、リーマンショックや感染症の流行時など景気が不安定な時には、学校や地域からよく声がかかるということです。すぐには採用できずとも継続していくと、頑張っている企業として外部からも認識されるようになります。
同友会の共同求人活動は、誰かが何かをしてくれるという「待ち」の姿勢ではなく、会員自らが汗を流して情報を集め、学校関係や地域とつながりをつくっています。今後、採用を継続している企業は地域からあてにされることが増えていくと思います。
また、当社の働く環境づくりについても、共同求人活動に参加しながら並行して整備してきました。皆さんも私たちと切磋琢磨しながら自社を磨き上げていきましょう。
まとめ

「人が全て」
【村田】私も同友会に入会後すぐに共同求人を始めましたが、最初は吉田さんと同じように「研究コース」からスタートしました。共同求人の場に身を置いていると、自社の足りないところに気付く機会が多くあります。
会社の変革に着手するのは早ければ早いほど良いと感じます。私は現在51歳となり、65歳で経営者人生を完結すると決めていますので、そのゴールまであと14年となりました。会歴は13年目ですからちょうど折り返し地点です。今後は学んできたものを実践していくステージだと感じています。
私が経営者人生で残せるものは「人」しかないと考えています。なぜなら、代表交代した後をつないでいくのも、新規事業をつくっていくのも社員だからです。ですから採用活動は、本業の手を止めてでも取り組むべき課題であり、本業を永続的に成り立たせる上でも必要であると考えています。
私は、経営者でいる間に採用にどれだけ関われるかが経営者としての成果であり、成功だと気付きました。皆さんは、経営者として何をしていきますか。
【文責:事務局 下脇】