活動報告

金融委員会 金融情勢学習会(1月9日)

「異次元緩和」で積み上がった国債残高と自縄自縛の低金利、そして静かに進む大企業の国内収奪

由里 宗之氏  大阪公立大学客員教授

経済・金融の基礎を学び自社の経営を考える

インフレ・円安の要因は

今年も1月の金融委員会は大阪公立大学客員教授の由里宗之先生を招き、昨今のコストプッシュインフレと円安の要因、金融行政、金融人材の不足などについてお話しいただきました。

現在のインフレの主な要因は円安で、円安は日米金利差と貿易とサービスの収支、投資家の行動による影響が大きいといいます。金利については、日本はリーマンショック以降も国債残高を増やし、それを日銀が買い支えてきました。日銀の国債保有比率は53%台を維持し続け、バランスシートは金利の動向により大きな影響を受けるようになりました。日本国の財政も金利が上がりすぎるのは望ましくないということで、「政策金利は0.75%程度が上限ではないか」と話されました。

金融行政では新型コロナ案件の貸し出し、当局による資産チェックの再開について言及し、「中小企業の多くが要管理先債権に含まれているのではないか」と指摘。金融人材については、中小企業融資に対する事業性評価や伴走支援ができる人材が明らかに不足しているといいます。黒田東彦日銀総裁の間、金融機関は低収益率となり、人材育成をおろそかにして融資業務がシステム化された結果がこの人材不足につながっているとのことでした。

今こそ「人への投資」を

このようにコストプッシュの要因は枚挙にいとまがなく、その状況では生産性の向上だけでなく、中小企業の取引条件の改善が不可欠です。さらに、経済停滞の真因である低く押さえられてきた実質賃金を上げていくことが、経済の活性化へ転換し、回り回って自分たちの経営環境も良くなっていくのだとお話しいただきました。

最後に「今こそ同友会が提唱する『人に投資する』経営ビジョンを皆さんがしっかり打ち立てることが最も重要だ」と力説されました。

Lavie(株)  安藤 寿