【特集 労使見解50年】
誰もが幸せになりたい
鳥越 豊氏 (株)鳥越樹脂工業

2000年に幹部社員と経営指針書を作成した際、私も社員も腹に落ちていない部分がありました。そんな時、ある経営者から「事業の目的は何ですか」と聞かれ、答えることができませんでした。
まずは自分の課題を明確にしようと思ったのですが、社員はどう思っているのかを知るため、約3カ月かけて当時40名の全社員と毎朝7時から個別に話し合いをすることにしました。社員には「何のために働いているのか」「3年後、5年後の給料は」の2つを事前にアンケートで答えてもらい、面談で詳しく聞くとともに、会社方針も伝える場にしました。
1つ目の質問に対しては、家庭がある社員は「家族を幸せにするため」、独身者は「自分の生活を豊かにするため」と、人それぞれでしたが共通しているのは「人を幸せにする」ということでした。
2つ目の質問では本当に思う通りに書いてもらい、本音を聞きました。すると、年収300万円ほどの社員が「3年後に500万円、5年後に1000万円」と書いてきたのです。これを一切否定せず、実現するためにはどうすればいいのかを考えてもらうようにヒアリングの中で話を深め、それを3年間続けました。すると現実味のある金額を目標に掲げるようになりました。目標の立て方や、どう取り組めばいいのかを考えることができ、大きな気づきになったと思います。
この面談を通して、社長が社員に対して真剣に向き合っていることが伝わったのが、よかったと思います。また私自身も、社員との向き合い方をこの面談から学ばせてもらいました。そこからの気づきで「すべての社員の豊かさと可能性と人間性を引き出すこと」と事業の目的を定義付けることができ、1本筋が通ったものになりました。
とはいえ、現状も多くの課題が山積しています。常に経営指針書のPDCAの取り組みと、労使見解の精神を基にした人間尊重経営で、地域未来創造企業を目指して取り組んでまいります。