活動報告

【連載 第7回】我が社と労使関係~「労使見解」50年に寄せて

【特集 労使見解50年】

「いい仕事がしたい」と社員が思える会社をめざして

城所 真男氏  重機商工(株)

城所 真男氏

大学を卒業し丸3年働いた上場企業の商社から、重機商工に入社した。中小企業の経営者の価値観で育ってしまった自分にはどうにも大企業の体質が合わず、より自分らしく生き、働くための転職だった。

赤石義博さん(中同協元会長、故人)と同年の昭和8年生まれの父は、「戦前、戦中、戦後と価値観がどんどん変わり、教科書も学校の先生も信じられなかった」と度々言っていた。「信じられるのは古典などの書物の中にある」と読書量は相当なものであった。父のサラリーマン時代は総資本対総労働の対決の真っただ中で、資本家の搾取構造と社会のヒエラルキーの現実、闘争心丸出しの労働組合の双方に嫌気が差していたのではないか。その中で、赤石さんと同じように人が生きる意味、働く意味などを深く考察したに違いない。

弊社の1960年の創業以来の社是は「人格陶冶」、その後、父が「成長無限」を加えて、会社のために働くのではなく自分自身の人間的成長のために働くという価値観が社内に醸成されてきた。それ故というか若気の至りと言うべきか自分の二十代、三十代は脇目も振らず、力の限り新しい事業構築のために働いた。そのために下につく若い社員はことごとく辞めていった。

ある時、3年目くらいの有望な若者が辞める時に初めて、「何故今まで自分の下につく若者たちは辞めていったのか、自分のどこがいけないのか」と考えてみた。結局、独りよがりで社員をきちんと見ていなかった。それぞれのいい所、伸びしろ、こんなに成長してきたなど、1人1人を認めることなく、売り上げ、利益という結果に盲従し邁進していた。今まで関わった人たちに本当に申し訳ないことをしてきたと猛省した。

そんな折、サーバントリーダーという概念に出合った。強いリーダーシップをとるのではなく、みんなが楽しく安心して働くことのできる雰囲気や環境を誰も知らないうちに段取りして、自主的に目標を達成していくチームをつくるリーダーの在り方というのが、自身のこれまでを反省した心に響いた。

最近は社員から、「もっと厳しくリードしてください」と言われることがある。しかし厳しく言われて「やらされ感」満載でやるのでは、いい仕事ができるはずがない。自ら「いい仕事がしたい」「客先から信頼されたい」などと思ってやるから、仕事はつらいだけでなく、やりがいのあるもの、達成感を得られるものになると信じている。

社員が自分の成長のために毎日張り切って仕事に向かうことのできる目標を設定し、環境を整え、その努力を応援し、その成果を一緒に喜ぶことが経営者の役割であると思う。社員1人1人にとっての応援者であり、よき理解者であり、気軽に相談できる経営者を目指していきたい。